「経験者だから、すぐ活躍してくれると思っていた」
「前職ではかなり売っていたらしい。でも、うちでは全然結果が出ない」
「未経験者より高い給与で採ったのに、結局かなり教えている」
「即戦力を採用したはずなのに、なぜこんなに時間がかかるんだろう」
中途採用では、よくある悩みだと思います。
特に、人手が足りない会社ほど、
「すぐに働ける人がほしい」
となります。
未経験者を一から育てる余裕がない。
だから、
- 同業経験者
- 営業経験者
- 管理職経験者
- 資格保有者
- 前職で実績がある人
を採る。
もちろん、経験は大きな強みです。
でも私は、
「経験者」と「自社ですぐ活躍できる人」は、同じではない
と思っています。
なぜなら、仕事の成果は、その人の能力だけで決まるものではないからです。
前の会社で活躍した人が、自社でも活躍するとは限らない
たとえば、前職で年間1億円を売っていた営業社員がいたとします。
「これはすごい」
となる。
でも、もう少し聞いてみると、
- 前職は、会社の知名度が高かった
- 問い合わせが毎月たくさん来ていた
- 商品力も強かった
- 専任の営業事務がいた
- 提案資料も整っていた
- 上司が重要な商談には同行していた
- 本人は、その中で最後のクロージングを担当していた
一方、転職先では、
- 会社の知名度は高くない
- 新規顧客を自分で探す
- 提案資料も自分でつくる
- 見積も自分で作成する
- 既存顧客のフォローもする
これでは、同じ「営業」でも、かなり仕事が違います。
前職での実績が嘘だったわけではありません。
本人に能力がないとも限りません。
ただ、
成果を出していた条件が違う。
のです。
「即戦力」という言葉を、少し疑ってみる
私は、「即戦力」という言葉は便利ですが、少し危ない言葉でもあると思っています。
即戦力と聞くと、
- 入社初日から会社のことを理解している
- お客様のことも分かっている
- 社内のルールも分かっている
- 周囲との関係もできている
- 一人で判断できる
- すぐ結果を出す
そんな人を想像してしまう。
でも、そんな人は、ほとんどいません。
どれだけ経験があっても、会社が変われば、覚えなければならないことがあります。
- 商品
- 顧客
- 価格
- 社内ルール
- 意思決定の仕方
- 上司の考え方
- 部署間の関係
- 会社が大切にしていること
だから私は、即戦力を、
「何も教えなくても、すぐ結果を出せる人」
とは考えない方がいいと思っています。
むしろ、
「過去の経験を使いながら、自社の仕事を比較的早く習得できる人」
くらいに考えた方が、現実に近いのではないでしょうか。
経験者採用がうまくいかないとき、確認してほしい5つのこと
私はまず、次の5つを確認します。
経験者採用で見る5つのチェック
- 前職の「実績」だけでなく、どうやって成果を出したかを見ているか
- 前職と自社の仕事の違いを整理しているか
- 経験者だからといって、入社後の説明を省いていないか
- 前職のやり方を変えられる人かを見ているか
- 入社後、何をどの期間で期待するかを明確にしているか
① 前職の「実績」だけでなく、どうやって成果を出したかを見ているか
面接で、
「前職ではトップ営業でした」
と言われる。
かなり魅力的です。
でも、私はその次を聞きます。
どうやって、その成果を出したのか。
です。
- 新規開拓なのか
- 既存顧客中心なのか
- 問い合わせ対応なのか
- 紹介営業なのか
- 価格競争なのか
- 提案力なのか
- 人脈なのか
- 会社のブランドなのか
- チームで動いていたのか
- 一人で完結していたのか
同じ売上でも、中身はかなり違います。
第12回の面接でも書きましたが、採用で見たいのは、
「すごい人かどうか」ではなく、その人の行動が自社でも再現できそうか
です。
数字を見る。
でも、数字だけで終わらない。
その結果が、
どんな行動から生まれたのか
まで見る。
ここが大事です。
実績ではなく、「再現性」を見る
たとえば、営業成績が良かった人に、こんなことを聞きます。
- 「一番成果が出たとき、何を変えたんですか?」
- 「最初からうまくいっていましたか?」
- 「うまくいかなかった時期は、何をしましたか?」
- 「上司や周囲には、どんな助けをもらっていましたか?」
- 「その会社だからできたことは何ですか?」
- 「逆に、別の会社でも使えると思う自分の強みは何ですか?」
こう聞くと、その人が、自分の成果をどう理解しているかが見えてきます。
すべて、
「自分が優秀だったから」
で終わる人もいる。
一方で、
「会社の商品力がかなり強かった」
「上司から商談の組み立てを教わった」
「最初は失敗したので、提案の順番を変えた」
と言える人もいる。
私は後者の方が、新しい環境でも成長しやすいと思います。
なぜなら、
自分の成功条件を、自分なりに理解しているから
です。
② 前職と自社の仕事の違いを整理しているか
「同業界だから大丈夫」
「営業経験があるから大丈夫」
これも、少し注意が必要です。
同じ営業でも、仕事はかなり違います。
- 大企業の法人営業と、中小企業の法人営業
- 新規営業と、ルート営業
- 単価10万円の商品と、単価1,000万円の商品
- 1回の商談で決まる仕事と、半年かけて決まる仕事
- 営業だけやればいい会社と、納品後のフォローまで担当する会社
全部、必要な能力が変わります。
だから、経験者を採るときほど、
「経験がありますか?」
ではなく、
「その経験のどの部分が、自社の仕事で使えるのか」
まで整理する。
経験者採用は、経験年数を見る仕事ではありません。
過去の経験と、自社の仕事をつなぐ作業
だと思っています。
「経験10年」より、「10年間で何を経験したか」
これも、よくあります。
「営業経験10年」
と書いてある。
でも、
- 10年間、ほぼ同じ仕事をしていたのか
- 毎年違う課題に向き合ってきたのか
- 後輩を育てたのか
- 新しい顧客を開拓したのか
- 失敗して、やり方を変えたことがあるのか
同じ10年でも、中身は違います。
第16回の管理職の記事でも書きました。
大切なのは、単に経験年数ではなく、「その経験を、どう積んできたか」。
経験が長いことは、もちろん価値があります。
でも、年数だけで、再現性までは分かりません。
③ 経験者だからといって、入社後の説明を省いていないか
経験者を採用すると、会社側も安心します。
「この人なら分かるでしょう」
「前も同じ仕事をしていたから」
「細かく教えなくても大丈夫だよね」
そして、入社初日から、かなり放置される。
でも、本人からすると、同じ業界だからこそ、余計に迷うことがあります。
- 前の会社では、こうだった
- でも、この会社では違うらしい
- どちらに合わせればいい?
- 聞くほどのことなのか?
- 経験者だから、こんなことを聞いたら恥ずかしいかな
そう思って、自己流で進める。
すると、会社から、
「うちではそうやらない」
と言われる。
これは、本人だけの問題ではありません。
第24回でも書いた通り、採用後には、会社側の受け入れが必要です。
経験者であっても、
「自社ではどう仕事をするのか」
は、きちんと伝える。
経験者だからこそ、前職との違いを整理して渡す。
ここが大切です。
中途社員にも、「聞いた→分かった→解った→できた→一人でできる」はある
第15回から何度も使っている、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
という流れ。
これは、新人だけの話ではありません。
中途社員にもあります。
仕事そのものはできる。
でも、
- 自社のルールは知らない
- 自社のお客様は知らない
- 自社の商品も知らない
- 自社の判断基準も知らない
だから、全部ゼロからではないけれど、全部100からでもない。
たとえば、
- 営業スキルは80
- 商品知識は20
- 社内ルールは10
- 顧客理解は30
ということもある。
だから、
「経験者なんだから全部できるはず」
ではなく、
何を既に持っていて、何を新しく覚える必要があるのか
を分ける。
その方が、早く戦力化できます。
④ 前職のやり方を変えられる人かを見ているか
経験には、良い面があります。
でも、経験があるからこそ、難しいこともあります。
「前の会社ではこうでした」
もちろん、新しい会社にとって、有益な意見であることもあります。
むしろ、中途社員だから見える改善点もあります。
だから、前職の経験を否定する必要はありません。
ただ、何でも、
「前の会社ではこうだった」
で終わる。
自社のやり方を理解しようとしない。
自分のやり方を変えない。
となると、少し話が変わります。
私は、良い経験者とは、
過去の経験を持っている人ではなく、過去の経験を新しい環境に合わせて使える人
だと思っています。
「前の会社では」を禁止する必要はない
ここは、会社側も気をつけたいところです。
中途社員が、
「前職ではこうしていました」
と言う。
すると、古くからいる社員が、
「ここは前の会社じゃないから」
と返す。
これも、もったいない。
せっかく、外から知識が入ってきたのです。
まず、聞けばいい。
- なぜ、そのやり方をしていたのか
- 自社でも使えそうか
- 使えないなら、なぜ使えないのか
つまり、
前職の経験を持ち込ませないのではなく、使えるものを会社の中に取り込む。
それが、経験者採用の価値の一つだと思います。
ただし、自社の基本ルールを無視して、何でも前職流でやるのは違う。
第21回の話です。
守るところは守る。
そのうえで、良い経験は活かす。
⑤ 入社後、何をどの期間で期待するかを明確にしているか
経験者に対して、会社は期待します。
だから、つい、最初から高い成果を求める。
でも、本人は、どのくらいのスピードで結果を求められているか分からない。
- 1カ月目から売上なのか
- まず商品理解なのか
- 3カ月で一人立ちなのか
- 半年で既存社員と同じ水準なのか
ここを明確にした方がいい。
1カ月目
会社・商品・顧客・基本ルールを理解する。
3カ月目
主要な仕事を一人で進められる。
6カ月目
自分で判断できる範囲を広げ、一定の成果を出す。
もちろん、職種や経験によって違います。
でも、
「即戦力なんだから早く結果を出して」
だけでは、本人も何をすれば合格なのか分かりません。
第19回で書いたように、目標とは、
「今、何を大切にすればいいか」を分かりやすくするもの
です。
経験者に高い給与を払ったからといって、育成が不要になるわけではない
これも、経営者としては、少し悩ましいところだと思います。
経験者だから、未経験者より高い給与で採用した。
それなのに、
- 教える
- 相談に乗る
- 同行する
「これなら未経験者を採って育てた方がよかったのでは?」
と思うこともある。
実際、そういうケースもあると思います。
だからこそ、採用時に、何に対して高い給与を払うのかを明確にした方がいい。
- 資格なのか
- 専門知識なのか
- 顧客基盤なのか
- 営業力なのか
- マネジメント経験なのか
- 業界知識なのか
単に、
「経験者だから」
では曖昧です。
何を買っているのか分からないまま、高い給与を払わない。
少し強い言い方ですが、経営としては必要だと思います。
未経験者の方が活躍することもある
経験者採用の記事ですが、私は、経験者が常に有利だとは思っていません。
仕事によっては、未経験者の方が、
- 素直に覚える
- 会社のやり方に合わせる
- 質問する
- 新しいことを吸収する
結果として、1年後には経験者より活躍している、ということもあります。
逆に、高い専門性が必要な仕事なら、経験者が圧倒的に有利です。
だから、
経験者か、未経験者か、どちらが正しいという話ではありません。
自社の仕事で、どこまで経験が必要なのか。
どこからは入社後に育てられるのか。
ここを考える。
第13回の採用基準にもつながります。
MustとWantを分ける。
- 絶対に必要な経験なのか
- あれば嬉しい経験なのか
- 育てられる能力なのか
ここが整理できると、採用できる人の幅も広がります。
「経験者がほしい」は、人が足りない会社ほど一度考えた方がいい
人手不足になると、
「育てる時間がないから、経験者を採ろう」
となります。
気持ちはよく分かります。
でも、経験者は、採用市場でも人気です。
- 条件競争になりやすい
- 給与も高くなる
- そして、採れない
半年間、「経験者募集」を続ける。
その間、現場はずっと人手不足。
なら、30代くらいまでなら未経験も含め、採用対象を広げて、半年かけて育てる方が、結果として早い会社もあります。
もちろん、仕事によります。
ただ、
「育てる時間がないから経験者だけ」という判断が、逆に採用を長期化させていることもある。
これは、一度考えてみてもいいと思っています。
即戦力採用でも、会社側には「戦力にする責任」がある
少し矛盾するようですが、ここが今回、一番伝えたいところです。
即戦力を採った。
だから、本人が勝手に戦力になってくれる。
ではありません。
会社には、自社で力を発揮できるようにする仕事があります。
- 会社の目的を伝える
- 役割を伝える
- 守るべきルールを伝える
- 判断基準を伝える
- 相談先を伝える
- 必要な情報を渡す
- 最初の仕事を任せる
- 振り返る
第21回から23回までで書いてきたことです。
経験者であれば、そのスピードは速いかもしれない。
でも、ゼロにはなりません。
即戦力を採用することと、育成をしなくていいことは別です。
採用失敗と決める前に、「活かせているか」を見る
経験者を採った。
半年たっても、期待ほど成果が出ない。
ここで、
「採用失敗だった」
と判断する前に、一度確認してみてください。
- 本人の経験と、今の仕事は本当に合っているか
- 必要な情報は渡したか
- 役割は明確か
- 判断できる範囲は分かっているか
- 上司は、前職との違いを伝えたか
- 本人の強みを、会社は使えているか
たとえば、
- 新規営業が得意な人を採ったのに、既存顧客の管理ばかりやらせている
- マネジメント経験者を採ったのに、部下を一人も持たせていない
- 専門性の高い人を採ったのに、決裁権がなく、毎回社長確認
これでは、採用時に評価した強みを、会社側が使えていません。
だから、採用した人を見るだけではなく、
会社が、その人を活かせる仕事を渡しているか
も見る必要があります。
「社長を、楽にする。」経験者採用にする
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
経験者を採る。
高い給与を払う。
でも、仕事を任せられない。
社長が確認する。
社長が修正する。
本人も、前職との違いに戸惑う。
最後は辞める。
また採用する。
これでは、社長はまったく楽になりません。
一方で、
- 採用時に、過去の実績だけでなく、成果の出し方を見る
- 自社で再現できそうな経験を見る
- 入社したら、前職との違いを伝える
- 役割と判断範囲を渡す
- 使える経験は、会社にも取り込む
- 少しずつ、本人が自社で結果を出せるようにする
そうすれば、経験者採用は、単なる人手補充ではなく、
会社に新しい経験と判断力を増やす採用
になります。
それなら、社長が持っていた仕事や判断を、任せられる範囲も広がっていきます。
まとめ|「即戦力」は、完成品の社員を採うことではない
経験者を採ったのに、思ったほど活躍しない。
そんなとき、
「本人の能力がなかった」
だけで終わらせない。
一度、見てみてください。
- 前職では、どんな環境で結果を出していたのか
- その結果を、どうやってつくったのか
- その経験は、自社でも再現できるものなのか
- 自社との違いを、本人に伝えたか
- 経験者だからといって、育成を省いていないか
- 本人は、過去の経験を新しい環境に合わせられているか
- 会社は、本人の強みを使える仕事を渡しているか
経験は、確かに大きな財産です。
でも、
経験があることと、その経験を自社で使えることは違います。
私は、即戦力とは、最初から何でもできる人ではなく、
持っている経験を、自社の仕事へ早く変換できる人
だと思っています。
そして会社側にも、その変換を手伝う責任があります。
採用で見るのは、過去の肩書や数字だけではない。
「この人は、どんな環境で、どう考え、どう行動して結果を出してきたのか」
を見る。
入社後は、その経験を、自社の仕事へつなげていく。
それができれば、経験者採用は、
「すぐ使える人を探すこと」
から、
「会社の中に、新しい強みを増やすこと」
へ変わっていくのだと思います。
経験者採用・中途採用でお悩みですか?
JAPANVISIONでは、中小企業の中途採用・採用基準・面接設計だけでなく、入社後の受け入れ・育成・役割整理・権限設計まで、採用した人が自社で実際に力を発揮できる状態を一緒につくっています。
「経験者を採っても活躍しない」「即戦力を採りたいが採れない」「経験者と未経験者のどちらを採るべきか迷っている」という段階からでもご相談いただけます。
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