「やっと採用できたと思ったら、3カ月で辞めてしまった」
「面接では、本人もやる気がありそうだった」
「こちらも期待して採ったのに、なぜこんなに早く辞めるんだろう」
採用に苦労している中小企業ほど、一人の早期退職は、かなり痛いと思います。
求人を出す。
応募を集める。
面接する。
内定を出す。
入社してもらう。
時間も、お金も、かなり使っています。
それなのに、数カ月で退職。
すると、
「採用で見抜けなかったのかな」
と思う。
もちろん、採用時点でのミスマッチもあります。
でも私は、早期離職を見るとき、採用だけの問題にしない方がいいと思っています。
なぜなら、
採用時には合っていた人でも、入社後の受け入れ方によって辞めることがある
からです。
採用は、入社して終わりではありません。
むしろ、入社してから、会社と本人の本当のすり合わせが始まります。
入社後3カ月は、「会社が社員を見る期間」だけではない
試用期間という言葉があります。
会社側からすると、
「この人が本当に仕事をできるかを見る期間」
という感覚があるかもしれません。
でも、社員側も、同じように会社を見ています。
- 面接で聞いていた仕事と同じか
- 上司はどんな人か
- 会社は何を大切にしているか
- 困ったときに助けてもらえるか
- 自分はここで成長できそうか
- 求人票に書いてあったことは、本当だったか
つまり、入社後の数カ月は、
会社が社員を見極める期間であると同時に、社員が会社を見極める期間
でもあります。
ここで、採用時に伝えた会社と、実際の会社が大きく違う。
となると、早期離職につながりやすくなります。
入社した社員がすぐ辞めるとき、確認してほしい5つのこと
私はまず、次の5つを見ます。
早期離職を防ぐ5つのチェック
- 入社前に伝えた仕事と、実際の仕事がズレていないか
- 最初に「何を期待しているか」を伝えているか
- いきなり一人でできることを求めていないか
- 誰に、何を聞けばいいか分かる状態になっているか
- 入社直後だけではなく、1〜3カ月後も話す機会をつくっているか
① 入社前に伝えた仕事と、実際の仕事がズレていないか
第14回で、求人票について書きました。
そこで、求人票は、会社を良く見せるためのものではなく、
求職者が自分の働く姿を想像できるようにするもの
と書きました。
これは、入社後にもつながります。
求人では、
「営業として、お客様への提案を中心に担当」
と書いてあった。
でも、入社してみたら、ほとんど事務作業。
あるいは逆に、
「先輩がしっかり教えます」
と聞いていたのに、初日から、
「じゃあ、一人で行ってきて」
となる。
本人からすると、仕事内容そのものより、
「聞いていた話と違う」
ことが大きな不信になります。
もちろん、仕事なので、やりたくないこともあります。
入社前に、すべてを伝えることもできません。
でも、良いところだけを伝えて採用すると、入社後に、その差が一気に出ます。
だから私は、採用広報でも、良いところだけでなく、大変なところも伝えた方がいいと思っています。
採用時にした約束を、入社後に会社が守る。
早期離職を考えるとき、ここはかなり大事です。
② 最初に「何を期待しているか」を伝えているか
社員が入社する。
会社説明をする。
就業規則を渡す。
パソコンを渡す。
仕事を教える。
でも、意外と伝えられていないのが、
「あなたに、まず何を期待しているか」
です。
たとえば、新人営業に、
- いきなり売上を求めるのか
- まず商品を覚えてほしいのか
- 先輩同行を通じて、お客様対応を覚えてほしいのか
- 3カ月後には、どこまで一人でできるようになればいいのか
これが分からないと、本人は、自分が順調なのかどうかも分かりません。
周りの社員を見て、
「あの人はあんなにできるのに、自分はできない」
と思うこともあります。
でも、入社10年の社員と、入社1カ月の社員を比べても仕方ありません。
だから、たとえば、
1カ月目はここまで。
3カ月目はここまで。
半年後はここまで。
と、期待を分けて伝える。
第19回の目標設定にもつながります。
目標とは、やる気を出させるためだけのものではなく、
今、何を大切にすればいいかを分かりやすくするもの
です。
③ いきなり一人でできることを求めていないか
採用した。
人手が足りない。
できるだけ早く戦力になってほしい。
これは、会社として当然の気持ちです。
でも、
早く戦力化することと、早く一人でやらせることは違います。
第15回で、育成を、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
と整理しました。
入社直後の社員に、説明した。
だから、次から一人でできるよね。
これは、少し飛ばしすぎていることがあります。
- まず見せる
- 一緒にやる
- 本人にやらせる
- 確認する
- またやらせる
- そして、一人でできるようになる
ここには、時間が必要です。
ただし、いつまでも手取り足取り、という話でもありません。
本人の状態を見ながら、少しずつ任せる。
第23回の話と同じです。
任せる範囲は、育成に合わせて広げていく。
その方が、結果として、早く一人でできるようになる場合もあります。
「分からなかったら聞いて」は、意外と難しい
新人に、よく言います。
「分からないことがあったら、何でも聞いてね」
言っている側は、かなり優しいつもりです。
でも、新人からすると、難しい。
- 何が分かっていないのかも、まだ分からない
- こんな基本的なことを聞いていいのか
- 先輩は忙しそう
- 昨日も聞いた
- また聞いたら、「まだ分からないの?」と思われないか
だから、聞かない。
自分で考える。
間違える。
上司から、
「分からなかったら聞けばよかったのに」
と言われる。
これは、よくあります。
だから、入社直後ほど、
「聞いていいよ」だけではなく、「何を、誰に、いつ聞くか」まで渡す
方がいいと思っています。
④ 誰に、何を聞けばいいか分かる状態になっているか
たとえば、
- 仕事のやり方はAさん
- システムはBさん
- 休暇や勤怠はCさん
- 判断に迷うことは直属上司
- 重大な問題はすぐ管理職
というように、簡単でいいので、入口を分かりやすくする。
そして、第22回の報連相で書いたように、
自分で決めることと、相談することの境界
も伝えていく。
新人ほど、ここは細かめでいいと思います。
経験が増えれば、相談する範囲を減らしていく。
そうやって、少しずつ自分で判断できるようにする。
「新人だから全部聞け」から始まり、ずっと何でも確認させる会社にしてはいけません。
でも、入社した瞬間から、
「主体的に考えて」
だけでも難しい。
最初は、考えるための枠を会社が渡す。
そこからです。
最初の1週間だけ丁寧で、その後放置になっていないか
入社初日。
- 会社説明
- 歓迎ランチ
- 研修
- 先輩がついてくれる
最初の一週間は、かなり丁寧。
でも、2週間目から、みんな通常業務に戻る。
1カ月後、本人がどう感じているのか、誰も聞いていない。
これも、よくあります。
むしろ、入社した直後は、本人も緊張しています。
「大丈夫です」
と言います。
問題が見えてくるのは、少し仕事を覚えてからです。
- 思っていたより難しい
- 人間関係が見えてきた
- 自分の得意・不得意が分かってきた
- 会社のやり方も見えてきた
だから、
1週間目より、1カ月後の方が聞きたいことが増えている
こともあります。
⑤ 入社直後だけではなく、1〜3カ月後も話す機会をつくっているか
ここで、第20回の1on1が使えます。
何でも本音を聞き出す必要はありません。
たとえば、1カ月後に、
- 「今、一人でできる仕事は何?」
- 「まだ分かりにくい仕事は?」
- 「思っていた仕事と違ったところはある?」
- 「誰に相談すればいいか迷うことはある?」
- 「今、困っていることは?」
と聞く。
2カ月目。
3カ月目。
少しずつ見る。
そして、何かズレがあれば、早めに直す。
退職面談で初めて聞くはずだった話を、入社2カ月目に聞ける。
それだけでも、防げる退職はあると思っています。
「辞めない会社」をつくればいいわけではない
ここは、第5回でも書きました。
私は、退職者をゼロにする必要はないと思っています。
- 会社と本人が、どうしても合わないこともある
- 本人が、別の仕事をしたいこともある
- 会社側が、雇用を続けない方がいい場合もある
だから、
定着率100%を目標にする必要はありません。
大切なのは、
- 本当は続けられた人
- 会社にも合っていた人
- 少し支援すれば、活躍できた人
そういう、
「辞めなくてもよかった人」まで辞める会社にしないこと。
です。
「定着させる」と「居心地を良くする」は同じではない
早期離職を防ぎたい。
だから、社員へ優しくする。
怒らない。
厳しい仕事をさせない。
嫌なことはやらせない。
これも、少し違います。
会社は、仕事をする場所です。
- 守るべきルールは、守る
- 求める成果は、求める
- 改善すべきことは、伝える
第21回で書いた基本ルールも、新入社員だから例外、ではありません。
ただし、
できないことと、やらないことは分ける。
まだ能力が足りないなら、教える。
経験させる。
一方で、誰でも守れる基本ルールを、理解しているのに守らない。
これは、別の問題です。
つまり、定着とは、何でも受け入れることではありません。
会社と本人が、お互いの期待を理解したうえで、一緒に働ける状態をつくること。
だと思っています。
「すぐ辞めるのは最近の若者だから」で終わらせない
早期離職が起きると、
「最近の若い人はすぐ辞める」
という話になることがあります。
でも、それだけで終わると、会社側は何も変わりません。
もちろん、本人側の問題もあります。
- 仕事への期待が現実的でない
- 少し嫌なことがあると、すぐ辞める
- 本人の責任でしかないケースもある
だから、何でも会社の責任にする必要はありません。
ただ、会社側で変えられることがあるなら、そこは変える。
- 採用時に、仕事を正しく伝える
- 入社後、役割を伝える
- 育成する
- 相談できる状態をつくる
- 少しずつ任せる
これをやったうえで、それでも合わないなら、それは仕方がない。
社員が悪いか、会社が悪いか、の二択で考えない。
私は、その方がいいと思っています。
採用時の「活躍する人」と、入社後の育成はつながっている
第13回では、採用基準について書きました。
「いい人」ではなく、「自社で活躍する人」を言葉にする。
という話です。
でも、採用基準をつくっただけでは、人は活躍しません。
たとえば、
「自分で考えて行動できる人」
を採用した。
でも、入社後は、何でも上司へ確認させる。
これでは、その人の良さを消してしまうかもしれません。
逆に、経験の浅い人を採用したのに、
「即戦力だから」
と放置する。
これも違う。
つまり、
採用で選んだ理由と、入社後の育て方をつなげる。
ことが必要です。
- どんな人を採ったのか
- 何を期待しているのか
- どこを育てるのか
ここが一本につながると、採用はかなり強くなります。
入社後3カ月で見たいのは、「活躍したか」より「前に進んでいるか」
新入社員に、3カ月で大きな成果を求める会社もあります。
もちろん、職種によっては、早く結果が出る場合もあります。
でも、私は、3カ月くらいなら、成果だけでなく、
成長の方向が合っているか
を見る方が大事だと思います。
- 仕事の基本ルールを守れるようになった
- 聞いた仕事を理解できるようになった
- 一人でできる仕事が増えた
- 相談するタイミングが分かってきた
- 少しずつ判断できるようになった
- お客様や周囲との関係もできてきた
これは、十分な前進です。
第15回の、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
のどこまで来たのかを見る。
結果だけでなく、前に進んでいるかを見る。
それなら、本人も自分の成長を感じやすくなります。
早期離職を防ぐ一番の方法は、「早く違和感を見つける」こと
早期離職を防ぐ、というと、
- 福利厚生
- 給与
- 歓迎会
- 社内イベント
いろいろな施策があります。
もちろん、必要な会社もあります。
でも、私はまず、
本人と会社の間に生まれた小さな違和感を、早く見つけること
だと思っています。
- 仕事内容が違う
- 期待されていることが分からない
- 教えてもらえない
- 相談しづらい
- 仕事を任せてもらえない
- 逆に、いきなり任されすぎる
こういうものは、最初は小さい。
でも、誰にも言えず、何カ月も積み重なると、
「この会社は自分には合わない」
になっていきます。
だから、問題が大きくなってから、退職を引き止めるより、小さいうちに整える。
第20回の1on1も、第22回の報連相も、全部ここにつながります。
「社長を、楽にする。」採用後の受け入れにする
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
採用する。
すぐ辞める。
また求人を出す。
面接する。
採用する。
また辞める。
これを繰り返すと、社長も、管理職も、現場も、ずっと採用に追われます。
一方で、
- 採用時に、会社と仕事を正しく伝える
- 入社したら、期待する役割を明確にする
- 仕事を段階的に教える
- 相談先をつくる
- 定期的にズレを確認する
- 少しずつ任せる
そうすると、採用した人が、会社の中で戦力になっていきます。
つまり、採用活動とは、人を会社へ入れるところまでではありません。
その人が会社の中で仕事をできるようになるところまで。
そこまで考えて、初めて、採用が経営を楽にするのだと思っています。
まとめ|採用は、入社した日で終わらない
せっかく採用した社員が、すぐ辞める。
そんなとき、
「採用で見抜けなかった」
だけで終わらせない。
一度、入社後を見てみてください。
- 採用時に伝えた仕事と、実際の仕事は合っているか
- 何を期待しているか、本人に伝わっているか
- 育成の段階を飛ばしていないか
- 誰に何を相談すればいいか、分かっているか
- 1カ月後、2カ月後、3カ月後に、ズレを確認しているか
採用した人に、ただ、
「頑張って」
と言うのではなく、
この会社でどうすれば仕事ができるようになるのかを、会社側も一緒につくる。
採用は、内定で終わりません。
入社でも終わりません。
採用した人が、自社で仕事をできるようになって、初めて採用が成功に近づく。
私は、そう考えています。
そして、退職をゼロにすることを目指すのではなく、
辞めなくてもよかった人まで、辞める会社にしない。
そのために、入社後の最初の3カ月を、
「様子を見る期間」
ではなく、
会社と本人が、お互いの期待を合わせていく期間
として使う。
それが、採用した人が残り、育ち、少しずつ任せられる会社につながっていくのだと思います。
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「採用してもすぐ辞める」「何を教えればいいか決まっていない」「新人がいつも3カ月以内に辞めてしまう」という段階からでもご相談いただけます。
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