社長の100の悩み

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社員に仕事を任せても、結局社長に戻ってくる。「任せる」とはどういうこと? 社長の100の悩み|第23回

「社員に任せたいとは思っている」

「でも、任せると失敗するから、結局自分でやってしまう」

「一度任せたのに、途中を見ていると口を出したくなる」

「管理職に任せたはずなのに、最後は全部社長に相談が戻ってくる」

中小企業の社長から、よく聞く話です。

社長自身も、ずっと自分で全部やりたいわけではない。

社員に任せたい。

管理職に判断してほしい。

自分がいなくても、仕事が進む会社にしたい。

でも、実際に任せてみると、思った通りに進まない。

  • 遅い
  • 抜けがある
  • 判断が甘い
  • お客様への対応も気になる

そこで、社長が手を出す。

「やっぱり俺がやった方が早い」

となる。

これは、第3回でも扱った問題です。

確かに、社長がやった方が早い仕事はたくさんあります。

でも、

今日早く終わることと、3年後に会社が強くなっていることは、同じではありません。

そして私は、社員に仕事を任せられない会社では、社員の能力だけでなく、

「何を、どこまで任せたのか」が曖昧なことが多い

と思っています。

「これ任せるね」

だけでは、意外と任せたことにはなっていません。

「任せる」と「丸投げ」は違う

仕事を任せる。

というと、

「自由にやらせる」

ことだと思われることがあります。

逆に、細かく指示をすると、任せていないようにも感じる。

でも私は、任せることと、何も伝えないことは、まったく違うと思っています。

たとえば、上司が部下に、

「この採用活動、任せるからよろしく」

と言ったとします。

部下からすると、

  • 何人採用すればいいのか
  • いつまでなのか
  • どのくらい予算を使えるのか
  • どこまで自分で決めていいのか
  • 求人媒体を変えてもいいのか
  • 社長への確認はどの段階で必要なのか

分からない。

それでも、

「任されたんだから自分で考えよう」

と進める。

途中で、上司が見て、

「なんでそんなやり方したの?」

となる。

これは、本人に主体性がなかったというより、

任せる側が、仕事の枠を渡していなかった

可能性があります。

丸投げは、

「よろしく」と渡して、あとは本人任せ。

任せるとは、

目的と責任範囲を明確にしたうえで、その中の判断を渡すこと。

私は、そう考えています。

仕事を任せても戻ってくるとき、確認してほしい5つのこと

まず、この5つを確認してみてください。

仕事を任せるときの5つのチェック

  1. 何を実現してほしいのか、ゴールを伝えているか
  2. どこまで本人が決めてよいか、判断範囲を渡しているか
  3. 途中で報告・相談するポイントを決めているか
  4. 本人の現在の能力に対して、任せる仕事が大きすぎないか
  5. 任せたあと、上司が途中で仕事を取り返していないか

① 何を実現してほしいのか、ゴールを伝えているか

仕事を任せるとき、最初に必要なのは、やり方ではなく、

「何を実現してほしいか」

です。

たとえば、

「来月の会社説明会を任せる」

だけでは、かなり曖昧です。

  • 参加者を30人集めたいのか
  • 会社のことを理解してもらうのが目的なのか
  • 応募につなげたいのか
  • 既存のやり方をそのまま運営してほしいのか
  • 新しいやり方を考えてほしいのか

ゴールによって、本人の行動は変わります。

上司の頭の中には、完成形がある。

でも、部下には見えていない。

そして最後に、

「思っていたのと違う」

となる。

これは、社員の能力以前の問題です。

任せるなら、まず、

「この仕事が終わったとき、どうなっていたら成功なのか」

を共有する。

ここがスタートだと思っています。

② どこまで本人が決めてよいか、判断範囲を渡しているか

第22回の報連相でも書きましたが、仕事を任せるなら、同時に、判断できる範囲を渡す必要があります。

たとえば、

「この案件は任せる」

と言われた。

でも、

  • 価格は上司
  • 提案内容も上司
  • 納期も上司
  • お客様への回答も上司

全部確認が必要。

これでは、仕事を担当しているだけで、判断は任されていません。

当然、何かあるたび、上司へ相談が戻ります。

そして上司は、

「何でも聞いてくる」

と思う。

でも、聞かないと決められない仕組みになっている、ということがあります。

だから、たとえば、

  • 「この金額までは自分で決めていい」
  • 「この条件までは変更していい」
  • 「通常の顧客対応は任せる」
  • 「この3つだけは事前に相談する」

とする。

つまり、仕事だけではなく、

その仕事に必要な権限も一緒に渡す。

ここまでやって、初めて任せたと言える場合があります。

責任を渡すなら、権限も渡す

これは、管理職でもよく起きます。

管理職に、

「部下をしっかり管理して」

と言う。

でも、

  • シフトを変える権限はない
  • 仕事の割り振りを変える権限もない
  • 評価にもほとんど関われない
  • 問題社員へ正式に指導する権限もない

それなのに、

「チームの結果はあなたの責任です」

と言われる。

これは、管理職としてかなり難しい。

責任だけあって、権限がないからです。

もちろん、会社のすべてを自由に決めてもらうわけではありません。

でも、責任を求めるなら、その責任を果たすために必要な範囲で、判断できるものを渡す。

責任と権限は、できるだけセットで考える。

これは、組織をつくるうえで、かなり大事だと思っています。

③ 途中で報告・相談するポイントを決めているか

「任せたんだから、最後まで自分でやって」

これも、少し危ないことがあります。

本人が、途中で間違った方向へ進む。

でも、任されたから、自分で何とかしようとする。

最後まで進める。

完成したものを見て、上司が、

「全然違う」

となる。

最初からやり直す。

お互い、かなりしんどい。

だから、任せるときほど、途中の確認ポイントを決める。

  • 「最初の企画案ができたら一度見せて」
  • 「50%まで進んだところで確認しよう」
  • 「この条件が変わったらすぐ相談して」

というように。

これは、社員を信用していないからではありません。

むしろ、

大きくズレる前に、小さく修正するため

です。

そして、本人の経験が増えれば、確認回数を減らしていけばいい。

新人とベテランで、同じ任せ方をする必要はありません。

「任せる」とは、最初から一人で全部できることを求めることではない

第15回で、育成を、

聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる

と整理しました。

仕事を任せるときも、同じです。

まだ、

「できた」

までしか来ていない人に、いきなり、完全に一人で任せる。

できない。

そして、

「やっぱり任せられない」

となる。

これは、少し早いのかもしれません。

  • 最初は、上司と一緒にやる
  • 次は、本人にやらせて途中で確認する
  • 次は、重要なところだけ相談してもらう
  • そして最後は、一人でできる

任せる範囲も、育成に合わせて広げていく。

私は、その方が自然だと思っています。

④ 本人の現在の能力に対して、任せる仕事が大きすぎないか

「任せれば人は育つ」

これは、ある面ではその通りです。

仕事を任せないと、経験は増えません。

でも、何でも大きく任せればいいわけではありません。

まだ、小さな案件を一人で完結した経験がない人に、会社最大の顧客を全部任せる。

そして、失敗する。

「任せたのにできなかった」

となる。

これは、本人だけの責任とは言えません。

  • 少し背伸びすれば届く仕事
  • 必要なら上司が支援できる仕事
  • 失敗しても、会社として修正できる範囲

そういうものから、徐々に経験を積ませる。

第19回の目標設定でも書きましたが、

少し背伸びすれば届く目標と、そのために必要な経験をセットで渡す。

仕事を任せることも、同じだと思っています。

「失敗させる」と「放置する」は違う

社員を育てるために、

「失敗も経験させた方がいい」

という話があります。

私も、ある程度はそう思います。

自分で判断して、思った通りにいかなかった。

そこで、何が違ったかを考える。

これは、大事な経験です。

でも、

  • 会社に大きな損害が出ること
  • 安全に関わること
  • お客様の信用を大きく失うこと

まで、

「勉強だから失敗させよう」

では困ります。

どこまでなら経験として任せられるか。

どこからは上司が入るか。

そこを考えるのも、管理職の仕事です。

育成のために失敗を許容することと、管理を放棄することは違います。

⑤ 任せたあと、上司が途中で仕事を取り返していないか

これは、社長や仕事のできる管理職ほど、やってしまいやすいと思います。

任せる。

本人が考える。

少し遅い。

見ていると、やり方も効率が悪い。

社長なら、10分でできる。

本人は、1時間かかっている。

我慢できない。

「もういい、俺がやる」

となる。

その瞬間は、確かに仕事が早く進みます。

でも、本人は、その仕事を最後までやった経験を積めません。

次も、同じところで止まる。

そして社長は、また、

「結局俺がやらないと」

となります。

これが繰り返されると、社員側も学習します。

「最後は社長がやってくれる」

と。

これは、第21回のルールと同じです。

人は、言われたことだけではなく、実際に起きたことから、会社のルールを学びます。

「任せる」と言われても、毎回途中で取り返される。

なら、本当のルールは、

「最終的には上司がやる」

になってしまいます。

任せたら、「自分と同じやり方」を求めすぎない

社長には、自分なりのやり方があります。

20年かけて、一番効率のいい方法をつくってきた。

だから、社員が違うやり方をすると、気になります。

「そうじゃない」

と言いたくなる。

でも、結果が同じなら、やり方まで全部同じである必要はない仕事もあります。

もちろん、

  • 安全
  • 品質
  • 法律
  • 会社として統一すべき手順

ここは、守る必要があります。

第21回で書いた、誰でも守る基本ルールです。

でも、そこから先の、

  • 順番
  • 工夫
  • 資料の作り方
  • 時間の使い方

まで、全部社長と同じでなくてもいい。

守らなければならない「型」と、本人に任せられる「やり方」を分ける。

ことが大切だと思っています。

任せるときは、「やり方」ではなく「判断基準」を渡す

部下へ仕事を任せる。

でも、細かい手順を全部指示する。

すると、その仕事はできます。

でも、状況が少し変わると、また上司に聞くことになります。

なぜなら、手順は知っていても、

「なぜそうするのか」

が分かっていないからです。

そこで、やり方だけではなく、判断基準も伝える。

たとえば、お客様対応なら、

「迷ったときは、会社にとって一番安い方法を選べ」

ではなく、

「まず安全。次にお客様への影響。その上でコストを見る」

というように。

採用なら、

「この人を採れ」

だけではなく、

「経験より、この仕事で必要なこの行動を見ている」

と伝える。

判断基準が分かると、社員は、状況が変わっても、自分で考えやすくなります。

仕事を渡すだけでなく、考えるための材料を渡す。

第17回の主体性にも、第22回の報連相にも、つながる話です。

任せた仕事の結果は、必ず振り返る

任せる。

終わる。

次の仕事を渡す。

これだけでは、経験が、ただの経験で終わることがあります。

  • うまくいった。なぜうまくいったのか
  • うまくいかなかった。どこで判断が違ったのか
  • 次は何を変えるのか

ここまで振り返る。

第16回で、

経験は、そのままでは自分の財産。言葉にすると、組織の財産になる。

と書きました。

これは、社員本人の育成でも同じです。

経験を、言葉にする。

すると、次の仕事で再現しやすくなります。

上司も、次はどこまで任せられるかが分かります。

任せるとき、最終責任まで部下に押しつけない

「君に任せたんだから、全部君の責任だよ」

という言い方があります。

私は、少し注意した方がいいと思っています。

担当者としての責任はあります。

管理職なら、管理職としての責任もあります。

でも、会社として仕事を任せた以上、最終的な責任まで、全部社員個人に押しつけることはできません。

任せた上司にも、責任があります。

  • 任せる相手を決めた
  • 任せる範囲を決めた
  • 必要な支援をしたか
  • 途中で確認すべきだったか

そこは、上司側も見る必要があります。

任せるとは、上司が責任を手放すことではありません。

部下に責任範囲を渡しながら、上司は上司としての責任を持つ。

この二つは、同時に存在します。

何でも任せれば、社長が楽になるわけではない

「社長を楽にする」

というと、社長の仕事を、どんどん社員へ渡せばいい。

と思うかもしれません。

でも、それも違います。

社長にしかできない仕事があります。

  • 会社の方向を決める
  • 大きな投資判断をする
  • 重要な人事を決める
  • 会社としての最終責任を負う

逆に、社長でなくてもできる仕事もあります。

そこを整理する。

そして、社員へ任せられるものは、管理職へ。

管理職から社員へ。

少しずつ、判断を移していく。

大切なのは、社長が仕事をしなくなることではありません。

社長しかできない仕事に、社長が時間を使えるようになること。

それが、JAPANVISIONでいう、

「社長を、楽にする。」

に近いと思っています。

「任せられる社員がいない」なら、任せる経験をつくっているかを見る

社長から、

「うちには任せられる人がいない」

と聞くことがあります。

本当に、今は難しい場合もあります。

でも、一つ確認したいことがあります。

これまで、任せる経験を積ませてきたか。

です。

ずっと社長が判断する。

管理職も、社長へ確認する。

社員も、管理職へ確認する。

そういう会社で、ある日突然、

「これからは自分で考えて」

と言っても、すぐにはできません。

判断も、経験です。

  • 小さい仕事から任せる
  • 考えさせる
  • 判断させる
  • 相談させる
  • 振り返る
  • また、少し大きな仕事を任せる

その積み重ねで、任せられる人になっていく。

任せられる人を探すだけでなく、任せられる人をつくる。

ここも、会社側の仕事だと思っています。

「社長を、楽にする。」任せ方にする

JAPANVISIONのMissionは、

「社長を、楽にする。」

です。

社員に仕事を任せる。

でも、

  • ゴールは曖昧
  • 権限も曖昧
  • 途中の相談基準もない

最後に、思ったものと違う。

社長がやり直す。

これでは、任せれば任せるほど、社長が疲れます。

一方で、

  • 何を実現してほしいかを伝える
  • 守るべきルールを伝える
  • どこまで判断していいかを渡す
  • どこで相談するかを決める
  • 途中で必要な支援をする
  • 終わったら振り返る
  • そして、次は少し広く任せる

こうすると、少しずつ、社長が判断しなくても進む仕事が増えます。

つまり、任せるというのは、単に、

「自分の仕事を部下へ渡すこと」

ではありません。

会社の中に、判断できる人を増やしていくこと。

私は、そこまで含めて「任せる」なのだと思っています。

まとめ|「任せる」は、仕事を渡すことではなく、判断できる範囲を渡すこと

社員に任せた。

でも、うまくいかない。

結局、社長に戻ってくる。

そんなとき、

「この社員には任せられない」

と決める前に、一度確認してみてください。

  • 何を実現する仕事なのか、伝わっているか
  • どこまで自分で判断していいか、分かっているか
  • 守るべきルールは、明確か
  • 途中で相談するポイントは、決まっているか
  • 本人の経験に対して、任せる仕事が大きすぎないか
  • そして、任せた仕事を、途中で上司が取り返していないか

任せるとは、何も言わずに自由にやらせることではありません。

逆に、全部指示したうえで作業だけ渡すことでもありません。

目的を伝える。

守るべき枠を伝える。

判断できる範囲を渡す。

必要なときには相談してもらう。

そして、その範囲を、経験とともに少しずつ広げていく。

第21回では、

「守るところ」

を整理しました。

第22回では、

「判断するところと、相談するところ」

を整理しました。

今回の第23回では、その前提として、

「そもそも、上司はどこまで仕事と判断を渡しているのか」

を考えました。

守るところは、きちんと守る。

任せるところは、きちんと任せる。

相談するところは、きちんと相談する。

この境界が明確になるほど、社員は動きやすくなります。

管理職も管理しやすくなります。

そして、社長に戻ってくる判断は、少しずつ減っていきます。

任せるとは、社長が仕事を手放すことではない。
会社の中に、判断できる人を増やすこと。

私は、その積み重ねが、社長がいなくても仕事が前へ進む会社をつくっていくのだと思っています。


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