「何度言っても、決めたことを守らない社員がいる」
「日報は17時までと言っているのに、出したり出さなかったりする」
「注意すると、そのときは直る。でも、また元に戻る」
「こんな基本的なことまで、いちいち言わないといけないのか」
社長や管理職から、こんな話を聞くことがあります。
社員には、自分で考えてほしい。
主体的に働いてほしい。
細かいことまで管理したくない。
その気持ちは、よく分かります。
でも私は、その前に一つ、確認した方がいいことがあると思っています。
それは、
会社で決めた最低限のルールが、普通に守られているか。
です。
主体性。
目標設定。
1on1。
報連相。
こうしたことを考える前に、組織として、
「決めたことは守る」
という土台が必要です。
ただし、ここで大切なのは、
すべてのルールを同じように考えないこと。
です。
ルールには、「やればできるもの」と「能力が必要なもの」がある
たとえば、営業社員に、
「今月、新規契約を5件取る」
という目標を設定したとします。
本人が一生懸命努力しても、達成できないことはあります。
- 経験
- 営業力
- 商品
- 市場
- お客様
さまざまな要因があるからです。
一方、
「毎日17時までに日報を提出する」
というルールなら、基本的には、やるか、やらないかです。
もちろん、急病や事故など、どうしても守れない事情はあります。
その場合も、
「難しいと分かった時点で上司へ連絡する」
と決めておけばいい。
つまり、会社の中には、大きく分けると、
- 能力や経験によって、できる・できないがあるもの
- 能力に関係なく、決められた通りにやればできるもの
があります。
この二つを、同じように管理しない方がいいと思っています。
管理職が最初につくるのは、「決めたことが守られる状態」
管理職になると、
- 部下を育てなければ
- モチベーションを上げなければ
- 成果を出させなければ
と考えます。
もちろん、どれも大切です。
でも私はその前に、管理職が最初につくるべき状態があると思っています。
それが、
「チームで決めた最低限のルールが、普通に守られている状態」
です。
たとえば、
- 始業時刻を守る
- 決めた期限までに提出する
- 出退勤を正しく打刻する
- 問題が起きたら決められた時間内に第一報を入れる
- 使ったものを決められた状態に戻す
こうした、誰でもできる基本的なことです。
いきなり、たくさん決める必要はありません。
むしろ、最初は一つでもいい。
会社として本当に大事で、誰でもできて、守ったかどうかが明確に分かるもの。
まず、それを徹底する。
私は、ここが組織づくりのかなり基本的な部分だと思っています。
ルールが守られない会社で、確認してほしい5つのこと
私はまず、次の5つを確認します。
基本ルールを機能させる5つのチェック
- そのルールは、本当に誰でもできるものか
- 守った・守っていないが明確に分かるか
- 会社が本当に大切だと思っているルールか
- 守らなかったとき、管理職が毎回きちんと指摘しているか
- 何度伝えても守らない場合、「できない」と「やらない」を分けて考えているか
① そのルールは、本当に誰でもできるものか
まず、ここを分けます。
- 「売上を上げる」
- 「お客様から信頼される」
- 「良い提案をする」
- 「部下を成長させる」
これは、誰でもすぐにできることではありません。
能力や経験が必要です。
だから、できなかったからといって、すぐに、
「本人にやる気がない」
とは言えません。
教える。
経験させる。
振り返る。
必要なら支援する。
第15回で書いた、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
という育成が必要です。
一方で、
「17時までに日報を出す」
と決まっていて、本人もそのルールを理解している。
提出方法も分かっている。
時間も与えられている。
それなら、話は少し違います。
能力の問題ではありません。
まず、
「できないのか」
「やっていないのか」
を分けて考える。
ここを混ぜないことが大切です。
② 守った・守っていないが明確に分かるか
ルールをつくっても、言葉が曖昧だと、人によって解釈が変わります。
たとえば、
「机をきれいにして帰る」
というルール。
「きれい」の基準は、人によって違います。
本人は、きれいだと思っている。
上司は、できていないと思っている。
これでは、注意される側も納得しにくい。
それより、
「退社時には、机の上に書類や私物を残さない」
とした方が分かりやすい。
同じように、
- 「早めに報告する」ではなく、「問題が発生したら30分以内に第一報を入れる」
- 「遅刻しない」だけではなく、「始業時刻までに所定の状態で仕事を始められるようにする。難しい場合は判明時点で上司へ連絡する」
というようにする。
大切なのは、
上司の感覚で合否が変わらないこと。
守った本人にも、守れていない本人にも、結果が分かる。
ルールは、そのくらい明確な方がいいと思っています。
③ 会社が本当に大切だと思っているルールか
ここも、かなり大事です。
ルールは、多ければいいわけではありません。
- 何となく昔からある
- 誰も意味を説明できない
- 管理職自身も守っていない
- でも、社員には守れと言う
これでは、徹底するのは難しい。
だから、基本的なルールほど、私は、
「なぜ会社として、これを守るのか」
を一度考えた方がいいと思っています。
- お客様との約束を守るため
- 安全を守るため
- 一緒に働く人に迷惑をかけないため
- 仕事の情報を止めないため
- 会社として信用を守るため
理由がある。
そのうえで、会社として、
「これは全員に守ってもらう」
と決める。
もし、守らなくても大して困らないのであれば、そもそもルールから外してもいい。
大事ではないルールまで増やして、全部守れと言う必要はありません。
必要ならつくる。
不要ならつくらない。
ただ、本当に必要だから決めたものは、曖昧にしない。
その方が、社員にとっても分かりやすいと思います。
④ 守らなかったとき、管理職が毎回きちんと指摘しているか
ここは、管理職にとって、少ししんどいところです。
いつもは、日報を出している。
今日は、出していない。
でも、今日は忙しそうだった。
いつも頑張っているし、まあいいか。
次の日、別の社員が出していない。
この人には以前も注意したから、今日は言う。
こうなると、社員からすると、ルールそのものではなく、
「今日は注意されるかどうか」
を見るようになります。
そして、少しずつ、
「守らなくても大丈夫な日がある」
という認識が生まれます。
だから、本当に守らせると決めた基本ルールなら、違反を見つけたときは、毎回扱う。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、
毎回怒る必要はない
ということです。
「今日、17時までの日報が出ていません」
「ルールは17時までなので、次回から守ってください」
それでいい。
- 人格を否定しない
- 感情的に怒鳴らない
- 長い説教もしない
ただ、
守れていない事実を、見逃さない。
私は、それが一番大事だと思っています。
「今回はいいよ」が、優しさとは限らない
管理職になると、部下との関係もあります。
- 嫌われたくない
- 忙しいのも分かる
- 一生懸命なのも分かる
だから、一回くらいは、と思うことがあります。
その気持ちは、自然です。
でも、基本的なルールについて、管理職がその日の気分や相手によって、守らなくてもよい状態をつくると、困るのは最終的には社員です。
守った人からすると、
「自分は守っているのに、守らない人も同じなんだ」
となる。
守らなかった本人も、
「どこまでなら大丈夫なのか」
が分からなくなる。
だから、私は、
優しさと曖昧さは、分けた方がいい
と思っています。
- 事情は聞く
- 困っていれば支援する
- でも、ルールを守ったかどうかは別にする
この方が、結果的には公平です。
高い成果を出している社員なら、ルールを守らなくてもいいのか
これは、会社で起こりやすい問題です。
- 営業成績がトップ
- 技術力も高い
- お客様からも評価されている
でも、基本的なルールを守らない。
社長としては、
「まあ、あいつは結果を出しているから」
と思いたくなることがあります。
でも、会社として、本当にそのルールを大事にすると決めたのであれば、成果によって守らなくてよくなるものではありません。
むしろ、成果を出している人だけ例外になると、他の社員は、
「会社のルールより、力がある人の方が上なんだ」
と感じます。
それでは、管理職も指導しにくくなります。
もし、トップ社員には守らせなくても問題ないルールなら、そのルール自体を見直した方がいい。
でも、全員に必要なルールなら、誰であっても同じ。
能力の高さを、基本ルールを守らない理由にしない。
ここは、組織としてかなり大事だと思っています。
何度言っても守らない社員を、どこまで指導するのか
ここは、少し難しい話です。
一度、ルールを守らなかった。
だから、
「この人は会社に合わない」
という話ではありません。
- 忘れることもある
- 認識が違っていたこともある
- ルールそのものが曖昧だったかもしれない
だから、まず会社側が確認します。
- ルールは明確か
- 本人は理解しているか
- 本人にとって実行可能か
- 守れなかった事情はないか
- 上司が一貫して伝えているか
そのうえで、何度も説明する。
指摘する。
改善する機会も渡す。
それでも、会社が大切にしている、誰でもできる基本ルールを、繰り返し守らない。
となれば、少し意味が変わってきます。
それは、
「能力が足りなくてできない」
という問題ではなく、
「会社が守ってほしいと決めたことを、本人が守らない選択をしている」
という問題になってきます。
私は、ここまで来たら、会社が無期限に受け入れ続ける必要はないと思っています。
なぜなら、守っている社員がいるからです。
一人だけを何度も例外にすれば、ルールを守っている人の方が、ばからしくなってしまいます。
「チームから外す」という判断も、場合によっては必要になる
これは、できるだけ丁寧に書いておきたいところです。
一回ルールを破ったから、すぐに辞めてもらう。
という話ではありません。
また、上司と気が合わないから、
「ルールを守らない人」
にしてしまうのも違います。
会社側が、
- 明確で
- 合理的で
- 誰でも実行できるルールを設定している
- 本人にも十分説明している
- 繰り返し指摘している
- 改善する機会も渡している
それでも、本人が意図的に守ろうとしない。
その状態が続くなら、
「このチームの一員として働く条件が合っているのか」
を考えることは、私は必要だと思っています。
- 配置や役割を見直す
- 正式な指導をする
- 必要であれば、就業規則や法令に沿って、今後の所属そのものを検討する
そういう判断もあり得ます。
少し厳しく聞こえるかもしれません。
でも、これは、一人を排除したいからではありません。
決めたことをきちんと守って働いている人たちを、会社が守るためでもあります。
私は、そこを忘れてはいけないと思っています。
ルールを徹底することは、「社員を縛ること」ではない
ここまで読むと、
「そんなにルールを徹底したら、社員が窮屈にならないか」
と思うかもしれません。
私は、逆の面もあると思っています。
何を守らなければならないか。
どこまでは自分で決めていいか。
その境界が分かっている方が、社員は動きやすい。
たとえば、道路には、
- 信号があります
- 車線があります
- 速度制限があります
ルールがあるから、道路の中では、自分で目的地を決めて走れます。
会社も、少し似ています。
何も決まっていないことが、自由とは限りません。
むしろ、何をしていいのか分からなくなることがあります。
守るところは、きちんと守る。
そのうえで、考えるところは任せる。
私は、この二つをセットで考えた方がいいと思っています。
「ルールを守る」と「主体性」は、反対ではない
第17回では、社員の主体性について書きました。
そこで、主体性とは、何でも自分勝手に決めることではない、と書きました。
自分の役割と責任範囲を理解したうえで、自ら考え、必要な人を使いながら仕事を前へ進めること。
です。
ここに、今回の話を重ねると、順番が見えてきます。
- 守るべき基本ルールを守る
- 自分の役割を理解する
- 自分で考える
- 自分で判断できるところは判断する
- 必要なところで相談する
つまり、ルールを守れる人をつくることと、主体的な人をつくることは、矛盾しません。
むしろ、
守るべきものが明確だから、その外側で安心して考えられる。
のだと思います。
報連相にも、「誰でもできる部分」と「能力が必要な部分」がある
これは、次のテーマにもつながります。
たとえば、会社で、
「重大な問題が起きたら30分以内に上司へ第一報を入れる」
と決める。
これは、基本的には誰でもできます。
まず、このルールを守る。
でも、その先の、
- 「何を報告するべきか」
- 「どこまで自分で考えてから相談するか」
- 「上司が判断しやすいように、どう情報を整理するか」
は、経験や能力も関係します。
つまり、報連相にも、二つの段階があります。
まず、決めたタイミングで報告する。
そのうえで、
良い報告・良い相談ができるようになる。
前者を飛ばして、
- 「もっと分かりやすく報告しろ」
- 「もっと主体的に相談しろ」
と言っても、なかなかうまくいきません。
第22回では、この続きを、「報連相」の話として整理したいと思います。
基本ルールを守ることを、高く評価しすぎない
もう一つ、注意したいことがあります。
誰でもできる基本ルールを守った。
だから、高く評価する。
というのも、少し違うと思っています。
- 17時までの日報を、毎日17時までに出す
- 始業時間を守る
- 決められた手続きを守る
これは、もちろん大切です。
でも、会社として、
「全員が守る」
と決めたのであれば、基本的には、
プラス評価を得るための特別な行動というより、仕事をするうえでの前提
です。
一方、
- 売上
- 技術力
- 提案力
- 部下育成
- 業務改善
こちらは、人によって成果に差が出ます。
だから、評価し、育成し、能力を高める。
この二つを分けると、管理もしやすくなります。
管理職は、「注意する人」ではなく「基準を守る人」
管理職の仕事を、部下を注意すること、だとは思いません。
むしろ、逆です。
基準が明確で、みんなが普通に守るようになれば、注意する回数は減ります。
最初は、何度か言う必要がある。
でも、管理職が、
- 相手によって変えず
- その日の気分でも変えず
- 毎回同じ基準で扱う
すると、少しずつ、
「これは守るものなんだ」
が共有されます。
だから、管理職に必要なのは、怖さではなく、
一貫性
だと思っています。
怒鳴る必要はない。
威圧する必要もない。
ただ、決めたものを、曖昧にしない。
私は、それが管理職の基本的な役割の一つだと思います。
「社長を、楽にする。」基本ルールをつくる
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
会社の基本ルールを、社員が守らない。
管理職も見逃す。
最後は、社長が、
「あれやった?」
「日報出した?」
「この前言ったよね?」
と一人ひとりに注意する。
これでは、社長が、会社の風紀委員のようになってしまいます。
本来、そうではありません。
- 会社として、最低限守るものを決める
- 管理職が、チームの中で徹底する
- 社員は、それを普通に守る
- そのうえで、自分の仕事について考える
- 管理職は、成果や成長を見る
- 社長は、もっと会社全体を見る
こういう順番です。
だから、基本ルールを整えることは、細かい管理の話に見えて、実は、
社長が細かいことを言わなくても回る会社をつくるための土台
なのだと思っています。
まとめ|最初から「考えて動け」ではなく、まず「決めたことを守る」
社員に、もっと主体性を持ってほしい。
考えて動いてほしい。
成果を上げてほしい。
そう思ったときほど、一度、その手前を見てみてください。
- 会社として、絶対に守ってほしい基本ルールは何か
- それは、本当に誰でもできるものか
- 守ったかどうかが、明確に分かるか
- 管理職自身も、同じ基準で扱っているか
- 守らなかったとき、見逃さずに伝えているか
- そして、一度にたくさん求めすぎていないか
最初は、一つでもいいと思います。
会社が本当に大切にしていて、誰でもできて、守ったかどうかが明確なもの。
それを、全員が普通に守る。
そこから始める。
そして、その土台の上で、
- 役割を渡す
- 考えさせる
- 判断を任せる
- 相談させる
私は、その順番が大切だと思っています。
自分で考える前に、まず決めたことを守る。
でも、決めたことだけをやる人をつくるわけではない。
守るところは、きちんと守る。
任せるところは、きちんと任せる。
この両方ができる会社の方が、社員も迷いにくく、管理職も管理しやすく、社長も細かな指示から離れていけます。
そして、その次に必要になるのが、
「何を自分で判断し、何を上司へ報告・相談するのか」
という話です。
第22回では、その「報連相」を、今回の土台の上に乗せて考えていきます。
社員がルールを守らない・管理職が徹底できないとお悩みですか?
JAPANVISIONでは、中小企業の役割整理・管理職育成・ルール設計・評価制度まで、制度をつくるだけで終わらず、日常の仕事の中で実際に守られ、使われる形へ一緒に整理しています。
「何度言ってもルールを守らない」「管理職によって注意する基準が違う」「細かいことまで社長が言わないと回らない」という段階からでもご相談いただけます。
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