「最近、1on1が大事らしいから始めてみた」
「月に一度、部下と面談している」
「でも、何を話せばいいのか分からない」
「困っていることある?と聞いても、『特にありません』で終わる」
こんな話を聞くことがあります。
せっかく時間を取っているのに、
- 雑談をして終わる
- 上司がずっと話して終わる
- 業務の進捗確認だけで終わる
- 社員から本音は出てこない
すると、
「1on1って本当に意味があるの?」
と思ってしまう。
私は、1on1そのものが大事なのではなく、
普段の仕事では見えにくい“ズレ”を、問題が大きくなる前に見つける時間
だと考えると、分かりやすいと思っています。
社員の本音を聞き出すことが、目的ではありません。
- 仕事で困っていること
- 役割の認識
- 上司との認識
- 本人の成長
- 目標
- 会社への期待
こうしたものが、少しずつズレていないかを確認する。
だから、良い1on1は、特別な会話をする時間というより、
日常の仕事を少し立ち止まって、一緒に整理する時間
なのだと思います。
「本音を言って」と言われても、本音はなかなか出てこない
上司が、
「今日は何でも話していいから」
と言う。
でも、部下からすると、本当に何でも話していいのか分かりません。
- 「仕事が多すぎます」と言ったら、能力が低いと思われないか
- 「この仕事があまり得意ではありません」と言ったら、評価が下がらないか
- 「上司の指示が分かりにくいです」と言ったら、嫌われないか
そう考えることもあります。
だから、
「何か困っている?」
と聞かれても、
「特にありません」
になりやすい。
これは、社員に本音がないわけではありません。
質問が大きすぎることもあります。
私は、本音を聞き出そうとするより、
仕事の事実から会話を始める
方がいいと思っています。
1on1がうまくいかないとき、社長・管理職に確認してほしい5つのこと
まず、次の5つを確認してみてください。
1on1を機能させる5つのチェック
- 上司が話す時間になっていないか
- 質問が「何かある?」だけになっていないか
- 評価面談と1on1が混ざっていないか
- 話した内容が、日常の仕事につながっているか
- 1on1以前に、普段の関係で話しにくくなっていないか
① 上司が話す時間になっていないか
1on1を始める。
部下が来る。
すると、上司が、
「最近どう?」
と聞く。
部下が、
「まあ、普通です」
と答える。
沈黙する。
気まずい。
そこで、上司が話し始める。
- 「この前の件なんだけどさ」
- 「最近もっとこうしてほしいんだよね」
- 「会社としては今こう考えていて」
気づくと、30分のうち25分、上司が話している。
これでは、通常の指示や面談と、あまり変わりません。
もちろん、上司が話してはいけないわけではありません。
必要なフィードバックもあります。
でも、1on1を、部下の状況を知る時間にするなら、上司は少し、
「答える人」から「整理を手伝う人」
に役割を変える必要があります。
② 質問が「何かある?」だけになっていないか
- 「最近どう?」
- 「何か困っていることある?」
- 「会社に言いたいことある?」
大きな質問ほど、意外と答えにくいものです。
そこで、少し具体的にする。
- 「今の仕事で、一番時間がかかっているのは何?」
- 「最近、判断に迷った仕事はあった?」
- 「今、一人でできるようになった仕事は何?」
- 「逆に、まだ誰かの助けが必要な仕事は?」
- 「今の目標で、進んでいないものはある?」
- 「上司からもう少し説明してほしいことはある?」
こうすると、会話の入口ができます。
第15回の、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
を使ってもいい。
- 「今、どの仕事が“できた”まで来ている?」
- 「まだ“解った”で止まっているものは?」
と聞けば、育成状況も見えてきます。
大切なのは、
抽象的な気持ちを直接聞くより、具体的な仕事から入ること。
です。
③ 評価面談と1on1が混ざっていないか
これは、かなり重要だと思います。
半年に一度の評価面談。
そこで、
- 給与
- 昇格
- 評価
を伝える。
一方で、月に一度、仕事の悩みや成長について話す。
私は、この二つは、できれば少し分けて考えた方がいいと思っています。
なぜなら、評価される場で、社員は話しにくくなることがあるからです。
- 「最近この仕事に自信がありません」と言ったら、評価が下がるかもしれない
- 「仕事量が多くて困っています」と言ったら、能力不足と思われるかもしれない
そう考えると、本当の課題を隠します。
第8回では、評価面談を、
「次の半年を考える日」
と書きました。
評価面談にも対話は必要です。
でも、日常的な1on1まで、毎回採点されているような空気にはしない。
評価する時間と、育てる・整理する時間を少し分ける。
それだけでも、話しやすさは変わります。
④ 話した内容が、日常の仕事につながっているか
1on1で、
「最近どう?」
「まあまあです」
「休日は何してるの?」
「映画見ました」
「そうなんだ」
これで終わる。
雑談が悪いわけではありません。
関係づくりには、雑談も必要です。
でも、毎回雑談だけなら、仕事は変わりません。
たとえば、
「仕事量が多い」
という話が出た。
次回も、
「まだ多いです」
と言う。
何も変わらない。
その次も、同じ話をする。
これでは、社員も、
「話しても意味がない」
と思います。
だから、1on1で課題が出たら、最後に、
「じゃあ、次までに何を変える?」
まで決める。
- 本人がやること
- 上司がやること
- 会社として確認すること
それを分ける。
そして、次回、
「前回話したあれ、どうなった?」
と確認する。
話を聞くことだけでなく、話したことが仕事に反映されること。
ここまであって、1on1への信頼が少しずつ生まれます。
⑤ 1on1以前に、普段の関係で話しにくくなっていないか
月に一度だけ、会議室に入る。
上司が、
「今日は何でも話して」
と言う。
でも普段は、
- 失敗したらすぐ怒る
- 意見を言ったら否定する
- 忙しそうで話しかけられない
- 部下が相談すると、「それくらい自分で考えて」と言う
この状態で、月1回だけ本音を求めても、難しいと思います。
1on1は、日常の関係を補うことはできます。
でも、日常の関係そのものを、全部ひっくり返すことはできません。
だから、1on1が機能しないときは、面談の質問集を増やす前に、
「普段、この上司には話しても大丈夫と思われているだろうか」
を見る必要があります。
1on1で何を話せばいい?5つのテーマがあれば十分
では、実際に何を話せばいいのか。
毎回、特別なテーマを用意する必要はありません。
私は、大きく5つあれば十分だと思います。
- 仕事:仕事量・詰まり・判断に迷っていること
- 成長:できるようになったこと・次に経験したいこと
- 目標:進捗・止まっていること・目標修正の必要性
- 周囲との関係:上司・同僚・他部署・お客様との仕事上の関係
- 本人の考え:やってみたい仕事・役割・会社や上司への要望
1.仕事
今、何をしているのか。
どこで困っているのか。
仕事量はどうか。
判断に迷うことはあるか。
2.成長
できるようになったこと。
まだできないこと。
次に経験した方がいい仕事。
本人が学びたいこと。
3.目標
第19回で立てた目標が、今どうなっているか。
どこまで進んだか。
何が止まっているか。
目標自体を変える必要はないか。
4.周囲との関係
- 上司
- 同僚
- 他部署
- お客様
仕事を進めるうえで、関係上の問題がないか。
5.本人の考え
今後やってみたい仕事。
今の役割について感じていること。
会社や上司に変えてほしいこと。
この5つを、毎回全部聞く必要はありません。
その時々で、必要なものを選ぶ。
1on1を、
仕事・成長・目標・関係・本人の考えを定期的に点検する場
くらいにすると、運用しやすいと思います。
「最近どう?」から始めてもいい。でも、そこで終わらない
私は、雑談から入ること自体は、まったく問題ないと思っています。
- 「最近どう?」
- 「暑いね」
- 「家はどう?」
そういう話から、自然に仕事へ入れるなら、それでいい。
1on1を、固い面接のようにする必要もありません。
ただ、雑談が目的ではない。
大切なのは、会話の中から、
- 今、仕事をしにくくしているもの
- 成長を止めているもの
- 認識がズレているもの
を見つけることです。
雑談は入口にはなる。でも、目的にはしない。
くらいが、ちょうどいいと思います。
「本音を引き出す」が目的になると、少し危ない
1on1について、
「部下の本音を引き出す」
という言葉をよく見ます。
私は、この表現には、少し注意した方がいいと思っています。
本音というと、社員の心の奥に、会社が聞くべき答えが隠れていて、上司がそれを引き出す、という感じになります。
でも、社員にも、話したくないことはあります。
仕事と関係のないプライベートまで、全部話す必要はありません。
だから、無理に、
「本当はどう思っているの?」
と掘る必要はない。
むしろ、仕事をするうえで必要なことを、安心して話せる。
それで十分です。
1on1の目的は、社員の心を全部知ることではなく、仕事を一緒に良くすること。
私は、そのくらいの距離感の方が健全だと思っています。
アドバイスをする前に、「どこまで考えているか」を聞く
部下が、
「この仕事、うまくいかなくて」
と言う。
上司は、答えが分かる。
だから、すぐアドバイスする。
「それなら、こうすればいいよ」
もちろん、それが必要な場面もあります。
でも、毎回これをやると、第17回の主体性と同じ問題が起きます。
部下が、上司の答えを待つようになります。
だから、ときには、
- 「あなたは、何が原因だと思ってる?」
- 「今まで何を試した?」
- 「他にどんな方法がありそう?」
と聞く。
そこで、本人がどこまで考えているかを見る。
必要なら、そのあとでアドバイスする。
考えさせることと、教えることを使い分ける。
ここは、育成と同じです。
上司が「正解」を持っていなくてもいい
管理職になると、部下から相談されたら、答えなければならない。
と思う人がいます。
でも、すべてに答えを持つ必要はありません。
- 「それ、難しいね」
- 「私も今すぐ答えは分からない」
- 「一緒に整理してみようか」
でもいい。
第16回で書いた、
自分が答えを持っていなくても、チームとして答えを出せる
という考え方です。
むしろ、上司が全部知っているふりをするより、一緒に考えた方がいいこともあります。
1on1は、上司が部下へ正解を教える時間ではありません。
一緒に仕事を前へ進めるための時間
です。
毎週やらなければ意味がない、とは限らない
1on1というと、
「毎週30分」
のような運用を聞くことがあります。
もちろん、それが合う会社もあります。
でも、私は、全社一律で毎週やらなければならない、とは思いません。
- 新人なら、頻度を高くした方がいいかもしれない
- 管理職なら、月1回で十分な場合もある
- 仕事によっても違う
- 社員によっても違う
20人の部下を持つ管理職が、全員と毎週1時間やる。
それで通常業務が回らなくなったら、本末転倒です。
大事なのは、頻度を守ることではなく、
必要な人と、必要なタイミングで、必要な対話ができていること。
です。
「1on1を導入すること」が目的にならないようにしたいと思います。
1on1は、問題社員を見つけるための時間ではない
1on1を、
- 社員の不満をチェックする場
- 退職しそうな社員を探す場
- 問題を早く発見する場
として使うこともあります。
確かに、結果として、そうした問題が見つかることはあります。
でも、それだけだと、社員からすると、監視されているように感じることもあります。
私は、もっと普通に、
「仕事をしやすくするための定期点検」
くらいでいいと思っています。
車も、壊れてから直すより、定期的に点検する。
仕事も同じです。
- 少しやりにくい
- 少し迷っている
- 少し役割がズレている
それを、早めに整える。
その積み重ねが、結果として、離職防止や育成にもつながります。
退職面談で初めて聞く話を減らす
社員が辞める。
そこで、退職面談をする。
すると、
「実は半年くらい前から、この仕事に悩んでいました」
「上司との関係で困っていました」
「何を期待されているのか分からなかった」
と言われる。
社長としては、
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
と思う。
でも、社員からすると、
- 言う機会がなかった
- 言っても変わらないと思っていた
ということがあります。
第5回で、
辞めなくてもよかった人まで辞める会社にはしない
と書きました。
1on1は、退職を止める魔法ではありません。
それでも、半年後に初めて聞くはずだった話を、2カ月目に聞ける可能性はあります。
それだけでも、意味はあると思います。
1on1を「制度」にしすぎない
ここも、JAPANVISIONとしては大切にしたいところです。
1on1を始める。
- シートをつくる
- 質問項目を20個つくる
- 実施率を管理する
- 報告書を書かせる
すると、今度は、1on1をやること自体が仕事になります。
「1on1実施率100%です」
でも、社員の仕事は何も変わっていない。
これでは、もったいない。
制度は、必要ならつくればいい。
でも、必要以上に複雑にしない。
仕組みは、人を管理するためではなく、仕事をしやすくするために使う。
1on1も同じだと思っています。
「社長を、楽にする。」1on1にする
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
社員が困る。
直接社長に相談する。
管理職も、社員の状況をよく分かっていない。
問題が大きくなって、最後に社長へ上がってくる。
これでは、社長が、人の問題を全部拾うことになります。
一方で、管理職が、
- 部下と定期的に話す
- 仕事の詰まりを知る
- 目標を確認する
- 成長を確認する
- 必要な支援をする
- 自分で解決できないものだけ、整理して上へ相談する
こうなると、問題が小さいうちに、現場で解決できるものが増えます。
つまり、1on1とは、社員のご機嫌を取るための制度ではありません。
社長まで上がってこなくても、現場で仕事と人の問題を整えられる状態をつくること。
それが、社長を楽にする組織につながります。
まとめ|良い1on1は、「本音を聞く時間」ではなく「仕事を一緒に整理する時間」
1on1をしている。
でも、社員が何も話してくれない。
そんなとき、質問のテクニックを増やす前に、一度考えてみてください。
- 上司ばかり話していないか
- 質問が大きすぎないか
- 評価する場になっていないか
- 話した内容が仕事に反映されているか
- 普段から話しにくい関係になっていないか
そして、1on1では、
- 仕事
- 成長
- 目標
- 周囲との関係
- 本人の考え
このあたりを、具体的な事実から話していく。
無理に本音を引き出さなくていい。
すべての悩みを解決しなくてもいい。
大切なのは、
仕事の中にある小さなズレを、問題が大きくなる前に一緒に整えること。
だと思っています。
良い1on1とは、部下が何でも話してくれる面談ではありません。
- 面談のあと、仕事が少し進めやすくなる
- 本人が、次に何をすればいいか分かる
- 上司も、何を支援すればいいか分かる
そんな時間です。
だから、1on1がうまくいかないと感じたとき、
「どうすれば本音を話してもらえるだろう?」
だけではなく、
「この面談のあと、本人の仕事は少しでも進めやすくなっているだろうか?」
と考えてみる。
私は、その問いの方が、1on1の本質に近いと思っています。
1on1・管理職育成・部下との面談でお悩みですか?
JAPANVISIONでは、中小企業の1on1・管理職育成・目標設定・役割整理まで、制度を導入するだけで終わらず、日常の仕事が少しずつ進めやすくなる形へ一緒に整理しています。
「1on1で何を話せばいいか分からない」「社員が何も話してくれない」「面談をしても仕事が変わらない」という段階からでもご相談いただけます。
コメントを残す