社長の100の悩み

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1on1をしても社員の本音が出てこない。面談では何を話せばいい? 社長の100の悩み|第20回

「最近、1on1が大事らしいから始めてみた」

「月に一度、部下と面談している」

「でも、何を話せばいいのか分からない」

「困っていることある?と聞いても、『特にありません』で終わる」

こんな話を聞くことがあります。

せっかく時間を取っているのに、

  • 雑談をして終わる
  • 上司がずっと話して終わる
  • 業務の進捗確認だけで終わる
  • 社員から本音は出てこない

すると、

「1on1って本当に意味があるの?」

と思ってしまう。

私は、1on1そのものが大事なのではなく、

普段の仕事では見えにくい“ズレ”を、問題が大きくなる前に見つける時間

だと考えると、分かりやすいと思っています。

社員の本音を聞き出すことが、目的ではありません。

  • 仕事で困っていること
  • 役割の認識
  • 上司との認識
  • 本人の成長
  • 目標
  • 会社への期待

こうしたものが、少しずつズレていないかを確認する。

だから、良い1on1は、特別な会話をする時間というより、

日常の仕事を少し立ち止まって、一緒に整理する時間

なのだと思います。

「本音を言って」と言われても、本音はなかなか出てこない

上司が、

「今日は何でも話していいから」

と言う。

でも、部下からすると、本当に何でも話していいのか分かりません。

  • 「仕事が多すぎます」と言ったら、能力が低いと思われないか
  • 「この仕事があまり得意ではありません」と言ったら、評価が下がらないか
  • 「上司の指示が分かりにくいです」と言ったら、嫌われないか

そう考えることもあります。

だから、

「何か困っている?」

と聞かれても、

「特にありません」

になりやすい。

これは、社員に本音がないわけではありません。

質問が大きすぎることもあります。

私は、本音を聞き出そうとするより、

仕事の事実から会話を始める

方がいいと思っています。

1on1がうまくいかないとき、社長・管理職に確認してほしい5つのこと

まず、次の5つを確認してみてください。

1on1を機能させる5つのチェック

  1. 上司が話す時間になっていないか
  2. 質問が「何かある?」だけになっていないか
  3. 評価面談と1on1が混ざっていないか
  4. 話した内容が、日常の仕事につながっているか
  5. 1on1以前に、普段の関係で話しにくくなっていないか

① 上司が話す時間になっていないか

1on1を始める。

部下が来る。

すると、上司が、

「最近どう?」

と聞く。

部下が、

「まあ、普通です」

と答える。

沈黙する。

気まずい。

そこで、上司が話し始める。

  • 「この前の件なんだけどさ」
  • 「最近もっとこうしてほしいんだよね」
  • 「会社としては今こう考えていて」

気づくと、30分のうち25分、上司が話している。

これでは、通常の指示や面談と、あまり変わりません。

もちろん、上司が話してはいけないわけではありません。

必要なフィードバックもあります。

でも、1on1を、部下の状況を知る時間にするなら、上司は少し、

「答える人」から「整理を手伝う人」

に役割を変える必要があります。

② 質問が「何かある?」だけになっていないか

  • 「最近どう?」
  • 「何か困っていることある?」
  • 「会社に言いたいことある?」

大きな質問ほど、意外と答えにくいものです。

そこで、少し具体的にする。

  • 「今の仕事で、一番時間がかかっているのは何?」
  • 「最近、判断に迷った仕事はあった?」
  • 「今、一人でできるようになった仕事は何?」
  • 「逆に、まだ誰かの助けが必要な仕事は?」
  • 「今の目標で、進んでいないものはある?」
  • 「上司からもう少し説明してほしいことはある?」

こうすると、会話の入口ができます。

第15回の、

聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる

を使ってもいい。

  • 「今、どの仕事が“できた”まで来ている?」
  • 「まだ“解った”で止まっているものは?」

と聞けば、育成状況も見えてきます。

大切なのは、

抽象的な気持ちを直接聞くより、具体的な仕事から入ること。

です。

③ 評価面談と1on1が混ざっていないか

これは、かなり重要だと思います。

半年に一度の評価面談。

そこで、

  • 給与
  • 昇格
  • 評価

を伝える。

一方で、月に一度、仕事の悩みや成長について話す。

私は、この二つは、できれば少し分けて考えた方がいいと思っています。

なぜなら、評価される場で、社員は話しにくくなることがあるからです。

  • 「最近この仕事に自信がありません」と言ったら、評価が下がるかもしれない
  • 「仕事量が多くて困っています」と言ったら、能力不足と思われるかもしれない

そう考えると、本当の課題を隠します。

第8回では、評価面談を、

「次の半年を考える日」

と書きました。

評価面談にも対話は必要です。

でも、日常的な1on1まで、毎回採点されているような空気にはしない。

評価する時間と、育てる・整理する時間を少し分ける。

それだけでも、話しやすさは変わります。

④ 話した内容が、日常の仕事につながっているか

1on1で、

「最近どう?」

「まあまあです」

「休日は何してるの?」

「映画見ました」

「そうなんだ」

これで終わる。

雑談が悪いわけではありません。

関係づくりには、雑談も必要です。

でも、毎回雑談だけなら、仕事は変わりません。

たとえば、

「仕事量が多い」

という話が出た。

次回も、

「まだ多いです」

と言う。

何も変わらない。

その次も、同じ話をする。

これでは、社員も、

「話しても意味がない」

と思います。

だから、1on1で課題が出たら、最後に、

「じゃあ、次までに何を変える?」

まで決める。

  • 本人がやること
  • 上司がやること
  • 会社として確認すること

それを分ける。

そして、次回、

「前回話したあれ、どうなった?」

と確認する。

話を聞くことだけでなく、話したことが仕事に反映されること。

ここまであって、1on1への信頼が少しずつ生まれます。

⑤ 1on1以前に、普段の関係で話しにくくなっていないか

月に一度だけ、会議室に入る。

上司が、

「今日は何でも話して」

と言う。

でも普段は、

  • 失敗したらすぐ怒る
  • 意見を言ったら否定する
  • 忙しそうで話しかけられない
  • 部下が相談すると、「それくらい自分で考えて」と言う

この状態で、月1回だけ本音を求めても、難しいと思います。

1on1は、日常の関係を補うことはできます。

でも、日常の関係そのものを、全部ひっくり返すことはできません。

だから、1on1が機能しないときは、面談の質問集を増やす前に、

「普段、この上司には話しても大丈夫と思われているだろうか」

を見る必要があります。

1on1で何を話せばいい?5つのテーマがあれば十分

では、実際に何を話せばいいのか。

毎回、特別なテーマを用意する必要はありません。

私は、大きく5つあれば十分だと思います。

  1. 仕事:仕事量・詰まり・判断に迷っていること
  2. 成長:できるようになったこと・次に経験したいこと
  3. 目標:進捗・止まっていること・目標修正の必要性
  4. 周囲との関係:上司・同僚・他部署・お客様との仕事上の関係
  5. 本人の考え:やってみたい仕事・役割・会社や上司への要望

1.仕事

今、何をしているのか。

どこで困っているのか。

仕事量はどうか。

判断に迷うことはあるか。

2.成長

できるようになったこと。

まだできないこと。

次に経験した方がいい仕事。

本人が学びたいこと。

3.目標

第19回で立てた目標が、今どうなっているか。

どこまで進んだか。

何が止まっているか。

目標自体を変える必要はないか。

4.周囲との関係

  • 上司
  • 同僚
  • 他部署
  • お客様

仕事を進めるうえで、関係上の問題がないか。

5.本人の考え

今後やってみたい仕事。

今の役割について感じていること。

会社や上司に変えてほしいこと。

この5つを、毎回全部聞く必要はありません。

その時々で、必要なものを選ぶ。

1on1を、

仕事・成長・目標・関係・本人の考えを定期的に点検する場

くらいにすると、運用しやすいと思います。

「最近どう?」から始めてもいい。でも、そこで終わらない

私は、雑談から入ること自体は、まったく問題ないと思っています。

  • 「最近どう?」
  • 「暑いね」
  • 「家はどう?」

そういう話から、自然に仕事へ入れるなら、それでいい。

1on1を、固い面接のようにする必要もありません。

ただ、雑談が目的ではない。

大切なのは、会話の中から、

  • 今、仕事をしにくくしているもの
  • 成長を止めているもの
  • 認識がズレているもの

を見つけることです。

雑談は入口にはなる。でも、目的にはしない。

くらいが、ちょうどいいと思います。

「本音を引き出す」が目的になると、少し危ない

1on1について、

「部下の本音を引き出す」

という言葉をよく見ます。

私は、この表現には、少し注意した方がいいと思っています。

本音というと、社員の心の奥に、会社が聞くべき答えが隠れていて、上司がそれを引き出す、という感じになります。

でも、社員にも、話したくないことはあります。

仕事と関係のないプライベートまで、全部話す必要はありません。

だから、無理に、

「本当はどう思っているの?」

と掘る必要はない。

むしろ、仕事をするうえで必要なことを、安心して話せる。

それで十分です。

1on1の目的は、社員の心を全部知ることではなく、仕事を一緒に良くすること。

私は、そのくらいの距離感の方が健全だと思っています。

アドバイスをする前に、「どこまで考えているか」を聞く

部下が、

「この仕事、うまくいかなくて」

と言う。

上司は、答えが分かる。

だから、すぐアドバイスする。

「それなら、こうすればいいよ」

もちろん、それが必要な場面もあります。

でも、毎回これをやると、第17回の主体性と同じ問題が起きます。

部下が、上司の答えを待つようになります。

だから、ときには、

  • 「あなたは、何が原因だと思ってる?」
  • 「今まで何を試した?」
  • 「他にどんな方法がありそう?」

と聞く。

そこで、本人がどこまで考えているかを見る。

必要なら、そのあとでアドバイスする。

考えさせることと、教えることを使い分ける。

ここは、育成と同じです。

上司が「正解」を持っていなくてもいい

管理職になると、部下から相談されたら、答えなければならない。

と思う人がいます。

でも、すべてに答えを持つ必要はありません。

  • 「それ、難しいね」
  • 「私も今すぐ答えは分からない」
  • 「一緒に整理してみようか」

でもいい。

第16回で書いた、

自分が答えを持っていなくても、チームとして答えを出せる

という考え方です。

むしろ、上司が全部知っているふりをするより、一緒に考えた方がいいこともあります。

1on1は、上司が部下へ正解を教える時間ではありません。

一緒に仕事を前へ進めるための時間

です。

毎週やらなければ意味がない、とは限らない

1on1というと、

「毎週30分」

のような運用を聞くことがあります。

もちろん、それが合う会社もあります。

でも、私は、全社一律で毎週やらなければならない、とは思いません。

  • 新人なら、頻度を高くした方がいいかもしれない
  • 管理職なら、月1回で十分な場合もある
  • 仕事によっても違う
  • 社員によっても違う

20人の部下を持つ管理職が、全員と毎週1時間やる。

それで通常業務が回らなくなったら、本末転倒です。

大事なのは、頻度を守ることではなく、

必要な人と、必要なタイミングで、必要な対話ができていること。

です。

「1on1を導入すること」が目的にならないようにしたいと思います。

1on1は、問題社員を見つけるための時間ではない

1on1を、

  • 社員の不満をチェックする場
  • 退職しそうな社員を探す場
  • 問題を早く発見する場

として使うこともあります。

確かに、結果として、そうした問題が見つかることはあります。

でも、それだけだと、社員からすると、監視されているように感じることもあります。

私は、もっと普通に、

「仕事をしやすくするための定期点検」

くらいでいいと思っています。

車も、壊れてから直すより、定期的に点検する。

仕事も同じです。

  • 少しやりにくい
  • 少し迷っている
  • 少し役割がズレている

それを、早めに整える。

その積み重ねが、結果として、離職防止や育成にもつながります。

退職面談で初めて聞く話を減らす

社員が辞める。

そこで、退職面談をする。

すると、

「実は半年くらい前から、この仕事に悩んでいました」

「上司との関係で困っていました」

「何を期待されているのか分からなかった」

と言われる。

社長としては、

「もっと早く言ってくれればよかったのに」

と思う。

でも、社員からすると、

  • 言う機会がなかった
  • 言っても変わらないと思っていた

ということがあります。

第5回で、

辞めなくてもよかった人まで辞める会社にはしない

と書きました。

1on1は、退職を止める魔法ではありません。

それでも、半年後に初めて聞くはずだった話を、2カ月目に聞ける可能性はあります。

それだけでも、意味はあると思います。

1on1を「制度」にしすぎない

ここも、JAPANVISIONとしては大切にしたいところです。

1on1を始める。

  • シートをつくる
  • 質問項目を20個つくる
  • 実施率を管理する
  • 報告書を書かせる

すると、今度は、1on1をやること自体が仕事になります。

「1on1実施率100%です」

でも、社員の仕事は何も変わっていない。

これでは、もったいない。

制度は、必要ならつくればいい。

でも、必要以上に複雑にしない。

仕組みは、人を管理するためではなく、仕事をしやすくするために使う。

1on1も同じだと思っています。

「社長を、楽にする。」1on1にする

JAPANVISIONのMissionは、

「社長を、楽にする。」

です。

社員が困る。

直接社長に相談する。

管理職も、社員の状況をよく分かっていない。

問題が大きくなって、最後に社長へ上がってくる。

これでは、社長が、人の問題を全部拾うことになります。

一方で、管理職が、

  • 部下と定期的に話す
  • 仕事の詰まりを知る
  • 目標を確認する
  • 成長を確認する
  • 必要な支援をする
  • 自分で解決できないものだけ、整理して上へ相談する

こうなると、問題が小さいうちに、現場で解決できるものが増えます。

つまり、1on1とは、社員のご機嫌を取るための制度ではありません。

社長まで上がってこなくても、現場で仕事と人の問題を整えられる状態をつくること。

それが、社長を楽にする組織につながります。

まとめ|良い1on1は、「本音を聞く時間」ではなく「仕事を一緒に整理する時間」

1on1をしている。

でも、社員が何も話してくれない。

そんなとき、質問のテクニックを増やす前に、一度考えてみてください。

  • 上司ばかり話していないか
  • 質問が大きすぎないか
  • 評価する場になっていないか
  • 話した内容が仕事に反映されているか
  • 普段から話しにくい関係になっていないか

そして、1on1では、

  • 仕事
  • 成長
  • 目標
  • 周囲との関係
  • 本人の考え

このあたりを、具体的な事実から話していく。

無理に本音を引き出さなくていい。

すべての悩みを解決しなくてもいい。

大切なのは、

仕事の中にある小さなズレを、問題が大きくなる前に一緒に整えること。

だと思っています。

良い1on1とは、部下が何でも話してくれる面談ではありません。

  • 面談のあと、仕事が少し進めやすくなる
  • 本人が、次に何をすればいいか分かる
  • 上司も、何を支援すればいいか分かる

そんな時間です。

だから、1on1がうまくいかないと感じたとき、

「どうすれば本音を話してもらえるだろう?」

だけではなく、

「この面談のあと、本人の仕事は少しでも進めやすくなっているだろうか?」

と考えてみる。

私は、その問いの方が、1on1の本質に近いと思っています。


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