社長の100の悩み

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社員に目標を立てさせても動かない。目標設定を機能させるにはどうすればいい? 社長の100の悩み|第19回

「社員に目標を書かせているけど、結局ほとんど見ていない」

「期初には立派な目標を書くのに、半年後には本人も忘れている」

「目標管理を始めたけど、仕事のやり方は何も変わらない」

こんな会社は、意外と多いと思います。

社員に目標を持ってほしい。

自分で考えて仕事をしてほしい。

成長してほしい。

そのために、

  • 目標設定シートをつくる
  • 半年ごとに目標を書く
  • 上司と面談する

これは、悪いことではありません。

でも、

目標を書いたことと、目標に向かって仕事が動き始めることは、別です。

私は、目標設定について考えるとき、まずここを分けた方がいいと思っています。

目標は、社員にやる気を出させるためのものではありません。
何を大切に仕事をすればいいか、優先順位をそろえるためのものです。

ここが曖昧なまま、

「今年の目標を書いてください」

とだけ言っても、なかなか機能しません。

なぜ、社員が立てた目標は忘れられてしまうのか

たとえば、こんな目標があります。

  • 「主体性を高める」
  • 「お客様満足度を上げる」
  • 「営業力を身につける」
  • 「チームに貢献する」
  • 「コミュニケーションを増やす」

どれも、悪い言葉ではありません。

でも、明日から何をするのか。

これだけでは、よく分かりません。

だから、普段の仕事に戻ると、目の前の仕事をする。

忙しくなる。

目標シートを見る時間もなくなる。

半年後、評価面談の前に、久しぶりに目標を見る。

「ああ、こんなこと書いたな」

となる。

これでは、目標が、

仕事を動かすものではなく、評価のために書く書類

になっています。

目標設定が機能しない会社では、社員の意識より先に、目標のつくり方や使い方を見た方がいいと思います。

社員の目標設定がうまくいかないとき、社長に確認してほしい5つのこと

私はまず、次の5つを見ます。

目標設定を機能させる5つのチェック

  1. その目標は、本人の役割とつながっているか
  2. 本人が努力によって動かせる目標になっているか
  3. 「結果」と「行動」を分けて考えているか
  4. 目標を立てたあと、途中で振り返っているか
  5. 未達成だったとき、「なぜできなかったか」まで見ているか

① その目標は、本人の役割とつながっているか

社員に、

「今年の目標を自由に書いてください」

と言う会社があります。

もちろん、本人に考えてもらうことは大切です。

でも、完全に自由にすると、会社が期待している仕事と、本人の目標がズレることがあります。

たとえば、会社としては、後輩育成を任せたい。

でも本人は、

「資格取得」

を目標にする。

資格取得が悪いわけではありません。

ただ、会社がその人に期待している役割とは、少し違う。

目標は、本人の希望だけでも、会社からの押しつけだけでもない。

私は、まず、

「今、この人にどんな役割を期待しているのか」

から考えた方がいいと思っています。

  • 営業担当なら、何を期待しているのか
  • 管理職なら、何を期待しているのか
  • 新人なら、半年後に何ができるようになってほしいのか

ここがあって、そのための目標を考える。

第17回の主体性でも書きましたが、人が自分で考えるためには、まず役割が必要です。

目標設定も同じです。

② 本人が努力によって動かせる目標になっているか

たとえば、営業担当者の目標が、

「売上1億円」

だったとします。

数字としては、とても分かりやすい。

でも、売上は、本人の努力だけでは決まりません。

  • 市場
  • 商品
  • 価格
  • 顧客
  • 景気
  • 会社から渡される案件

いろいろな要素があります。

もちろん、結果目標は必要です。

でも、結果だけだと、本人は、

「では、何をすればいいのか」

まで落とし込めないことがあります。

だから、結果と一緒に、本人が動かせるものを見る。

  • 訪問件数
  • 提案件数
  • 既存顧客への連絡
  • 見積後のフォロー
  • 商談前の準備

などです。

ここで大切なのは、数字を増やせばいい、ということではありません。

自分の行動と結果のつながりが本人に見えること。

です。

自分が変えられるものが分かると、仕事は動かしやすくなります。

③ 「結果」と「行動」を分けて考えているか

目標には、大きく分けると、

「何を実現したいか」

と、

「そのために何をするか」

があります。

たとえば、

結果目標

「新規顧客を年間20社増やす」

だけでは、途中で何をすればいいか分かりにくい。

そこで、

行動

  • 「毎月○件の商談機会をつくる」
  • 「失注案件を月1回振り返る」
  • 「既存顧客から紹介をもらうための接点を増やす」

まで考える。

すると、日常の仕事につながります。

育成でも同じです。

「営業力を上げる」

ではなく、

  • 「一人で初回商談を進められるようになる」
  • 「商談後、自分で次の提案を整理できるようになる」

とする。

第15回で整理した、

聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる

にもつながります。

目標は、抽象的な成長意欲ではなく、

何ができるようになれば成長したと言えるのか

まで下げた方が、本人も上司も見やすくなります。

④ 目標を立てたあと、途中で振り返っているか

目標設定で、意外と多いのが、

期初に立てて、期末に振り返る。

という形です。

半年間、ほとんど話さない。

そして、評価面談で、

「達成できましたか?」

と聞く。

これでは、目標は仕事の道具ではなく、採点表になってしまいます。

仕事は、途中で変わります。

  • 会社の状況も変わる
  • お客様も変わる
  • 本人の仕事も変わる

最初に立てた目標が、半年後もそのまま正しいとは限りません。

だから、月に一度でも、

  • 「今どこまで進んでいる?」
  • 「何がうまくいっている?」
  • 「どこで止まっている?」
  • 「目標自体を変えた方がいいものはある?」

と確認する。

目標管理で大切なのは、目標を書く時間より、目標について途中で話す時間。

だと思っています。

⑤ 未達成だったとき、「なぜできなかったか」まで見ているか

目標100。

結果70。

だから、評価70。

それだけで終わると、次につながりません。

大切なのは、なぜ70だったのか。

  • 本人が努力しなかったのか
  • やり方が悪かったのか
  • 必要なスキルがなかったのか
  • 上司の支援が不足していたのか
  • そもそも目標設定が高すぎたのか
  • 途中で仕事の前提が変わったのか

ここを見る。

未達成だったこと自体より、

どこで止まったのかを解く。

これは、第15回の育成にも、第17回の主体性にもつながります。

目標管理も、人を責めるためではなく、次にどうすればいいかを考えるために使った方がいいと思います。

高い目標を立てれば、人は成長するのか

「少し高い目標を与えた方が、人は伸びる」

という考え方があります。

これは、そういう面もあります。

今できることだけを、ずっと繰り返していても、成長しにくい。

だから、少し難しい仕事を任せる。

これは大切です。

でも、高ければ高いほどいい、わけではありません。

  • 本人から見て、どう考えても無理
  • 何をすれば届くのかも分からない
  • 上司からの支援もない

その状態で、

「成長のためだから」

と言われても、目標ではなく、ただのプレッシャーになることがあります。

だから、私は、

少し背伸びすれば届く目標と、そのために必要な経験をセットで渡す

方がいいと思っています。

目標だけ与えるのではなく、仕事も渡す。

経験も渡す。

必要なら、上司が支援する。

そうやって、目標が成長につながります。

「自分で目標を考えさせる」ことが、必ずしも主体性ではない

社員に主体性を持ってほしい。

だから、

「自分で目標を考えて」

と言う。

これも、よくあります。

でも、新人が、

  • 会社の方向性も
  • 仕事の全体像も
  • 自分に期待されていることも

まだ分からない。

その状態で、良い目標を自分だけでつくるのは難しい。

ここでも、

「自分で考える」

と、

「全部本人に任せる」

は違います。

  • 上司が、会社の方向を伝える
  • 役割を伝える
  • 今の課題を一緒に考える
  • そのうえで、本人にも考えてもらう

私は、

良い目標設定は、上司と部下の共同作業

くらいに考えています。

会社の目標が多すぎると、社員は何を優先すればいいか分からない

会社側にも、気をつけたいことがあります。

  • 今年は、売上を伸ばす
  • 利益も上げる
  • 顧客満足も上げる
  • 残業も減らす
  • 新規事業も始める
  • 人材育成もする
  • DXも進める

全部大事です。

でも、全部を最優先にはできません。

社員からすると、社長から言われることが、毎回違う。

「とにかく売上」

と言われる。

翌日は、

「利益率を考えろ」

と言われる。

その次は、

「お客様第一だ」

と言われる。

これでは、何を基準に動けばいいか分からなくなります。

目標設定は、社員だけの問題ではありません。

経営側が、

「今年、会社として何を特に大切にするのか」

を絞ることも必要です。

優先順位とは、全部大切だと言うことではなく、

迷ったときに、どちらを先にするかを決めること

だと思っています。

目標と評価を、完全に同じものにしなくてもいい

目標設定というと、すぐ評価制度につながる会社があります。

もちろん、目標達成度を評価に使うことはあります。

でも、何でも目標達成率だけで評価すると、少し危ないことがあります。

  • 達成しやすい目標を立てる
  • 挑戦しない
  • 数字になりやすい仕事ばかり選ぶ
  • チームを助けても評価されない

こういうことが起きる場合があります。

だから、評価するなら、目標の達成結果だけでなく、

  • 役割
  • 行動
  • 能力
  • チームへの貢献

なども見る。

第7回、第8回で書いたように、評価制度は、単に社員へ点数をつけるためのものではありません。

会社が何を大切にするのかを共有するもの

でもあります。

目標も、その中の一つとして考えた方がいいと思います。

管理職の仕事は、「目標を書かせること」ではない

管理職になると、部下の目標設定をする会社があります。

そこで、

  • シートを提出させる
  • 内容を確認する
  • 承認する

終わり。

これでは、管理職が、目標管理の事務担当になっています。

本来必要なのは、

  • 「なぜこの目標なのか」
  • 「達成するには何が必要か」
  • 「どんな経験をさせるか」
  • 「どこで上司が支援するか」

を考えることです。

つまり、目標設定は、部下育成そのものでもあります。

第16回で書いたように、管理職は、

チームが仕事をできる状態をつくる人

です。

  • 目標を使って、仕事の方向を合わせる
  • 経験を渡す
  • 途中で振り返る
  • 必要なら修正する

ここまでやって、初めて目標が管理の道具になります。

モチベーションを上げるためだけに、目標を使わない

第18回では、モチベーションについて書きました。

そこで書いたのは、

モチベーションは、無理に上げるものというより、下がる理由を一つずつ減らしていくもの

という考え方です。

目標設定も、

「高い目標を掲げれば、やる気が出る」

だけで考えない方がいいと思います。

  • 良い目標があることで、自分が何をすればいいか分かる
  • できるようになったことが見える
  • 上司とも話しやすくなる
  • 自分の成長が見える

その結果として、仕事への前向きさが生まれることはあります。

つまり、

目標は、やる気を出させる道具というより、仕事を分かりやすくする道具。

そのくらいで考える方が、実際の仕事では使いやすいと思います。

目標は、全員同じつくり方でなくてもいい

新人。

中堅。

専門職。

管理職。

同じ会社でも、目標の持ち方は違っていいと思います。

  • 新人なら、まず一人でできる仕事を増やす
  • 中堅なら、成果の質を上げる、後輩を支援する
  • 専門職なら、技術や品質を高める
  • 管理職なら、自分の成果だけでなく、チームの成果や部下育成を見る

つまり、目標も、その人の役割によって変わります。

全社員へ、同じシート、同じ項目、同じ書き方。

にこだわりすぎると、制度を運用することが目的になります。

原理原則はある。
でも、答えは一人ひとり、役割ごとに違う。

目標設定も、同じだと思っています。

「社長を、楽にする。」目標設定にする

JAPANVISIONのMissionは、

「社長を、楽にする。」

です。

社員が、何を優先すればいいか分からない。

そのたび、社長に聞く。

「これはどうしますか?」

「どっちを先にしますか?」

「ここまでやっていいですか?」

全部、社長が答える。

これでは、社員が増えても、社長の判断は減りません。

一方で、

  • 会社の方向が分かる
  • 自分の役割が分かる
  • 目標が分かる
  • 何をすれば近づくか分かる
  • 途中で管理職と振り返る

そうなると、社員自身が、日々の仕事の優先順位を考えやすくなります。

つまり、目標設定とは、社員を管理するためだけのものではありません。

社長や上司の頭の中にある「何を大切にするか」を、社員が仕事で使える形にすること。

でもあります。

これができると、社長が一つひとつ指示しなくても、仕事が前へ進みやすくなります。

まとめ|良い目標は、「書いた目標」ではなく「仕事で使われる目標」

社員に目標を立てさせている。

でも、何も変わらない。

そんなとき、社員の意識が低い、と考える前に、目標そのものを見てみてください。

  • その人の役割とつながっているか
  • 本人が動かせるものになっているか
  • 結果と行動が整理されているか
  • 途中で振り返っているか
  • 未達成の理由まで見ているか

目標設定の目的は、立派な文章を書くことではありません。

評価シートを埋めることでもありません。

今日の仕事で、「自分は何を大切にすればいいか」が分かること。

です。

そして、目標に向かって仕事をする中で、

  • できることが増える
  • 考えられることが増える
  • 任されることが増える

その積み重ねが、社員の成長になります。

だから、社員の目標設定がうまくいかないと感じたとき、

「もっと良い目標を書かせるには?」

ではなく、

「この目標は、明日の仕事を変えるものになっているだろうか?」

と考えてみる。

良い目標とは、きれいに書かれた目標ではありません。

日常の仕事の中で、実際に使われている目標。

私は、そこを目指した方がいいと思っています。


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