「社員に目標を書かせているけど、結局ほとんど見ていない」
「期初には立派な目標を書くのに、半年後には本人も忘れている」
「目標管理を始めたけど、仕事のやり方は何も変わらない」
こんな会社は、意外と多いと思います。
社員に目標を持ってほしい。
自分で考えて仕事をしてほしい。
成長してほしい。
そのために、
- 目標設定シートをつくる
- 半年ごとに目標を書く
- 上司と面談する
これは、悪いことではありません。
でも、
目標を書いたことと、目標に向かって仕事が動き始めることは、別です。
私は、目標設定について考えるとき、まずここを分けた方がいいと思っています。
目標は、社員にやる気を出させるためのものではありません。
何を大切に仕事をすればいいか、優先順位をそろえるためのものです。
ここが曖昧なまま、
「今年の目標を書いてください」
とだけ言っても、なかなか機能しません。
なぜ、社員が立てた目標は忘れられてしまうのか
たとえば、こんな目標があります。
- 「主体性を高める」
- 「お客様満足度を上げる」
- 「営業力を身につける」
- 「チームに貢献する」
- 「コミュニケーションを増やす」
どれも、悪い言葉ではありません。
でも、明日から何をするのか。
これだけでは、よく分かりません。
だから、普段の仕事に戻ると、目の前の仕事をする。
忙しくなる。
目標シートを見る時間もなくなる。
半年後、評価面談の前に、久しぶりに目標を見る。
「ああ、こんなこと書いたな」
となる。
これでは、目標が、
仕事を動かすものではなく、評価のために書く書類
になっています。
目標設定が機能しない会社では、社員の意識より先に、目標のつくり方や使い方を見た方がいいと思います。
社員の目標設定がうまくいかないとき、社長に確認してほしい5つのこと
私はまず、次の5つを見ます。
目標設定を機能させる5つのチェック
- その目標は、本人の役割とつながっているか
- 本人が努力によって動かせる目標になっているか
- 「結果」と「行動」を分けて考えているか
- 目標を立てたあと、途中で振り返っているか
- 未達成だったとき、「なぜできなかったか」まで見ているか
① その目標は、本人の役割とつながっているか
社員に、
「今年の目標を自由に書いてください」
と言う会社があります。
もちろん、本人に考えてもらうことは大切です。
でも、完全に自由にすると、会社が期待している仕事と、本人の目標がズレることがあります。
たとえば、会社としては、後輩育成を任せたい。
でも本人は、
「資格取得」
を目標にする。
資格取得が悪いわけではありません。
ただ、会社がその人に期待している役割とは、少し違う。
目標は、本人の希望だけでも、会社からの押しつけだけでもない。
私は、まず、
「今、この人にどんな役割を期待しているのか」
から考えた方がいいと思っています。
- 営業担当なら、何を期待しているのか
- 管理職なら、何を期待しているのか
- 新人なら、半年後に何ができるようになってほしいのか
ここがあって、そのための目標を考える。
第17回の主体性でも書きましたが、人が自分で考えるためには、まず役割が必要です。
目標設定も同じです。
② 本人が努力によって動かせる目標になっているか
たとえば、営業担当者の目標が、
「売上1億円」
だったとします。
数字としては、とても分かりやすい。
でも、売上は、本人の努力だけでは決まりません。
- 市場
- 商品
- 価格
- 顧客
- 景気
- 会社から渡される案件
いろいろな要素があります。
もちろん、結果目標は必要です。
でも、結果だけだと、本人は、
「では、何をすればいいのか」
まで落とし込めないことがあります。
だから、結果と一緒に、本人が動かせるものを見る。
- 訪問件数
- 提案件数
- 既存顧客への連絡
- 見積後のフォロー
- 商談前の準備
などです。
ここで大切なのは、数字を増やせばいい、ということではありません。
自分の行動と結果のつながりが本人に見えること。
です。
自分が変えられるものが分かると、仕事は動かしやすくなります。
③ 「結果」と「行動」を分けて考えているか
目標には、大きく分けると、
「何を実現したいか」
と、
「そのために何をするか」
があります。
たとえば、
結果目標
「新規顧客を年間20社増やす」
だけでは、途中で何をすればいいか分かりにくい。
そこで、
行動
- 「毎月○件の商談機会をつくる」
- 「失注案件を月1回振り返る」
- 「既存顧客から紹介をもらうための接点を増やす」
まで考える。
すると、日常の仕事につながります。
育成でも同じです。
「営業力を上げる」
ではなく、
- 「一人で初回商談を進められるようになる」
- 「商談後、自分で次の提案を整理できるようになる」
とする。
第15回で整理した、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
にもつながります。
目標は、抽象的な成長意欲ではなく、
何ができるようになれば成長したと言えるのか
まで下げた方が、本人も上司も見やすくなります。
④ 目標を立てたあと、途中で振り返っているか
目標設定で、意外と多いのが、
期初に立てて、期末に振り返る。
という形です。
半年間、ほとんど話さない。
そして、評価面談で、
「達成できましたか?」
と聞く。
これでは、目標は仕事の道具ではなく、採点表になってしまいます。
仕事は、途中で変わります。
- 会社の状況も変わる
- お客様も変わる
- 本人の仕事も変わる
最初に立てた目標が、半年後もそのまま正しいとは限りません。
だから、月に一度でも、
- 「今どこまで進んでいる?」
- 「何がうまくいっている?」
- 「どこで止まっている?」
- 「目標自体を変えた方がいいものはある?」
と確認する。
目標管理で大切なのは、目標を書く時間より、目標について途中で話す時間。
だと思っています。
⑤ 未達成だったとき、「なぜできなかったか」まで見ているか
目標100。
結果70。
だから、評価70。
それだけで終わると、次につながりません。
大切なのは、なぜ70だったのか。
- 本人が努力しなかったのか
- やり方が悪かったのか
- 必要なスキルがなかったのか
- 上司の支援が不足していたのか
- そもそも目標設定が高すぎたのか
- 途中で仕事の前提が変わったのか
ここを見る。
未達成だったこと自体より、
どこで止まったのかを解く。
これは、第15回の育成にも、第17回の主体性にもつながります。
目標管理も、人を責めるためではなく、次にどうすればいいかを考えるために使った方がいいと思います。
高い目標を立てれば、人は成長するのか
「少し高い目標を与えた方が、人は伸びる」
という考え方があります。
これは、そういう面もあります。
今できることだけを、ずっと繰り返していても、成長しにくい。
だから、少し難しい仕事を任せる。
これは大切です。
でも、高ければ高いほどいい、わけではありません。
- 本人から見て、どう考えても無理
- 何をすれば届くのかも分からない
- 上司からの支援もない
その状態で、
「成長のためだから」
と言われても、目標ではなく、ただのプレッシャーになることがあります。
だから、私は、
少し背伸びすれば届く目標と、そのために必要な経験をセットで渡す
方がいいと思っています。
目標だけ与えるのではなく、仕事も渡す。
経験も渡す。
必要なら、上司が支援する。
そうやって、目標が成長につながります。
「自分で目標を考えさせる」ことが、必ずしも主体性ではない
社員に主体性を持ってほしい。
だから、
「自分で目標を考えて」
と言う。
これも、よくあります。
でも、新人が、
- 会社の方向性も
- 仕事の全体像も
- 自分に期待されていることも
まだ分からない。
その状態で、良い目標を自分だけでつくるのは難しい。
ここでも、
「自分で考える」
と、
「全部本人に任せる」
は違います。
- 上司が、会社の方向を伝える
- 役割を伝える
- 今の課題を一緒に考える
- そのうえで、本人にも考えてもらう
私は、
良い目標設定は、上司と部下の共同作業
くらいに考えています。
会社の目標が多すぎると、社員は何を優先すればいいか分からない
会社側にも、気をつけたいことがあります。
- 今年は、売上を伸ばす
- 利益も上げる
- 顧客満足も上げる
- 残業も減らす
- 新規事業も始める
- 人材育成もする
- DXも進める
全部大事です。
でも、全部を最優先にはできません。
社員からすると、社長から言われることが、毎回違う。
「とにかく売上」
と言われる。
翌日は、
「利益率を考えろ」
と言われる。
その次は、
「お客様第一だ」
と言われる。
これでは、何を基準に動けばいいか分からなくなります。
目標設定は、社員だけの問題ではありません。
経営側が、
「今年、会社として何を特に大切にするのか」
を絞ることも必要です。
優先順位とは、全部大切だと言うことではなく、
迷ったときに、どちらを先にするかを決めること
だと思っています。
目標と評価を、完全に同じものにしなくてもいい
目標設定というと、すぐ評価制度につながる会社があります。
もちろん、目標達成度を評価に使うことはあります。
でも、何でも目標達成率だけで評価すると、少し危ないことがあります。
- 達成しやすい目標を立てる
- 挑戦しない
- 数字になりやすい仕事ばかり選ぶ
- チームを助けても評価されない
こういうことが起きる場合があります。
だから、評価するなら、目標の達成結果だけでなく、
- 役割
- 行動
- 能力
- チームへの貢献
なども見る。
第7回、第8回で書いたように、評価制度は、単に社員へ点数をつけるためのものではありません。
会社が何を大切にするのかを共有するもの
でもあります。
目標も、その中の一つとして考えた方がいいと思います。
管理職の仕事は、「目標を書かせること」ではない
管理職になると、部下の目標設定をする会社があります。
そこで、
- シートを提出させる
- 内容を確認する
- 承認する
終わり。
これでは、管理職が、目標管理の事務担当になっています。
本来必要なのは、
- 「なぜこの目標なのか」
- 「達成するには何が必要か」
- 「どんな経験をさせるか」
- 「どこで上司が支援するか」
を考えることです。
つまり、目標設定は、部下育成そのものでもあります。
第16回で書いたように、管理職は、
チームが仕事をできる状態をつくる人
です。
- 目標を使って、仕事の方向を合わせる
- 経験を渡す
- 途中で振り返る
- 必要なら修正する
ここまでやって、初めて目標が管理の道具になります。
モチベーションを上げるためだけに、目標を使わない
第18回では、モチベーションについて書きました。
そこで書いたのは、
モチベーションは、無理に上げるものというより、下がる理由を一つずつ減らしていくもの
という考え方です。
目標設定も、
「高い目標を掲げれば、やる気が出る」
だけで考えない方がいいと思います。
- 良い目標があることで、自分が何をすればいいか分かる
- できるようになったことが見える
- 上司とも話しやすくなる
- 自分の成長が見える
その結果として、仕事への前向きさが生まれることはあります。
つまり、
目標は、やる気を出させる道具というより、仕事を分かりやすくする道具。
そのくらいで考える方が、実際の仕事では使いやすいと思います。
目標は、全員同じつくり方でなくてもいい
新人。
中堅。
専門職。
管理職。
同じ会社でも、目標の持ち方は違っていいと思います。
- 新人なら、まず一人でできる仕事を増やす
- 中堅なら、成果の質を上げる、後輩を支援する
- 専門職なら、技術や品質を高める
- 管理職なら、自分の成果だけでなく、チームの成果や部下育成を見る
つまり、目標も、その人の役割によって変わります。
全社員へ、同じシート、同じ項目、同じ書き方。
にこだわりすぎると、制度を運用することが目的になります。
原理原則はある。
でも、答えは一人ひとり、役割ごとに違う。
目標設定も、同じだと思っています。
「社長を、楽にする。」目標設定にする
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
社員が、何を優先すればいいか分からない。
そのたび、社長に聞く。
「これはどうしますか?」
「どっちを先にしますか?」
「ここまでやっていいですか?」
全部、社長が答える。
これでは、社員が増えても、社長の判断は減りません。
一方で、
- 会社の方向が分かる
- 自分の役割が分かる
- 目標が分かる
- 何をすれば近づくか分かる
- 途中で管理職と振り返る
そうなると、社員自身が、日々の仕事の優先順位を考えやすくなります。
つまり、目標設定とは、社員を管理するためだけのものではありません。
社長や上司の頭の中にある「何を大切にするか」を、社員が仕事で使える形にすること。
でもあります。
これができると、社長が一つひとつ指示しなくても、仕事が前へ進みやすくなります。
まとめ|良い目標は、「書いた目標」ではなく「仕事で使われる目標」
社員に目標を立てさせている。
でも、何も変わらない。
そんなとき、社員の意識が低い、と考える前に、目標そのものを見てみてください。
- その人の役割とつながっているか
- 本人が動かせるものになっているか
- 結果と行動が整理されているか
- 途中で振り返っているか
- 未達成の理由まで見ているか
目標設定の目的は、立派な文章を書くことではありません。
評価シートを埋めることでもありません。
今日の仕事で、「自分は何を大切にすればいいか」が分かること。
です。
そして、目標に向かって仕事をする中で、
- できることが増える
- 考えられることが増える
- 任されることが増える
その積み重ねが、社員の成長になります。
だから、社員の目標設定がうまくいかないと感じたとき、
「もっと良い目標を書かせるには?」
ではなく、
「この目標は、明日の仕事を変えるものになっているだろうか?」
と考えてみる。
良い目標とは、きれいに書かれた目標ではありません。
日常の仕事の中で、実際に使われている目標。
私は、そこを目指した方がいいと思っています。
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