「最近、社員にやる気がない気がする」
「言われたことはやるけど、それ以上はやらない」
「昔はもっとガツガツ働く社員がいたんだけどな」
社長から、こんな相談を受けることがあります。
そこで、
- 懇親会を増やす
- 表彰制度をつくる
- 研修をする
- 目標を立てる
- 給与を上げる
いろいろ考える。
もちろん、どれも意味がある場合があります。
でも私は、社員のモチベーションについて考えるとき、少し違うところから見た方がいいと思っています。
それは、
「どうすればモチベーションを上げられるか?」ではなく、
「なぜ今、この人のモチベーションが下がっているのか?」
を見ることです。
なぜなら、人のやる気を、会社が直接操作することはできないからです。
会社ができるのは、
やる気が生まれやすい環境をつくることと、やる気を失う原因を減らすこと。
だと思っています。
「モチベーションが低い」でまとめてしまうと、原因が見えなくなる
社員が以前より動かなくなった。
そこで、
「あいつはモチベーションが低い」
と考える。
でも、少し掘ってみると、いろいろな理由があります。
- 頑張っても評価されないと思っている
- 何を期待されているのか分からない
- 仕事ができるようになっている実感がない
- 何をやっても上司に直される
- 仕事を任せてもらえない
- 逆に、仕事を丸投げされている
- 給与や待遇に不満がある
- 会社の将来が見えない
- 今の仕事が自分に合っていない
- 単純に、仕事そのものへの関心が高くない
全部、同じ「モチベーションが低い」に見えます。
でも、対処は全然違います。
だから、
「やる気がない人」と決める前に、「何がやる気を失わせているのか」を見る。
ここから始めた方がいいと思います。
社員のモチベーションが低いと感じたとき、社長に確認してほしい5つのこと
私はまず、次の5つを見ます。
社員のモチベーションを考える5つのチェック
- 何を期待されているのか、本人が分かっているか
- 仕事ができるようになっている実感があるか
- 頑張りと評価・待遇のつながりに納得感があるか
- 上司が、社員のやる気を下げる関わり方をしていないか
- そもそも本人と仕事・役割が合っているか
① 何を期待されているのか、本人が分かっているか
人は、何をすればいいのか分からない仕事では、なかなか頑張りにくいものです。
上司から、
「もっと頑張って」
と言われる。
でも、何を頑張ればいいのか分からない。
- 売上を上げればいいのか
- お客様対応を良くするのか
- 後輩を育てるのか
- ミスを減らすのか
- 新しい提案をするのか
曖昧なままです。
そして半年後、評価面談で、
「もう少し主体性が欲しかったね」
と言われる。
これでは、社員からすると難しい。
第17回で書いた主体性の話ともつながります。
社員に動いてほしいなら、まず、
「あなたには、何を期待しているのか」
を伝える。
- 役割が分かる
- 求められる結果が分かる
- 自分で判断していい範囲が分かる
すると、仕事に力を使いやすくなります。
逆に、ゴールが分からない状態で、モチベーションだけ求めるのは、少し酷だと思います。
② 仕事ができるようになっている実感があるか
人は、昨日より今日、少しできるようになった。
前はできなかった仕事を、一人でできるようになった。
こういうとき、仕事が面白くなることがあります。
第15回では、育成を、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
と整理しました。
この「できるようになった」が、本人にも見えているか。
これは、モチベーションにも関係します。
でも、会社では、
できなかったことは指摘する。
できるようになったことは、当たり前になる。
ということがよくあります。
本人は、成長している。
でも、誰も言わない。
すると、自分が前に進んでいる感覚が薄くなります。
大げさに褒める必要はありません。
- 「前はここまで一緒にやっていたけど、今は一人でできるね」
- 「前回より報告が早くなった」
- 「この仕事はもう任せられるね」
と、事実を伝える。
人は、成長していることが分かると、次の仕事へ向かいやすくなります。
③ 頑張りと評価・待遇のつながりに納得感があるか
モチベーションの話になると、
「結局、給料でしょ」
という話もあります。
給与は、当然大切です。
第6回でも書きましたが、
給料は辞める理由になる。
でも、給料だけが会社に残る理由ではない。
これは、モチベーションでも同じだと思っています。
給与が明らかに低い。
頑張っても上がらない。
成果を出しても扱いが変わらない。
その状態で、
「仕事のやりがいを感じよう」
と言っても、難しい。
会社側も、給与や待遇の問題から逃げてはいけません。
一方で、給与だけ上げれば、ずっとやる気が上がり続けるわけでもない。
大事なのは、
「何をすれば評価されるのか」「なぜこの評価なのか」が分かること。
です。
第7回、第8回で扱った評価制度にもつながります。
制度があるかどうかより、頑張ったことが、どのように見られているのか。
本人が分かる。
ここに納得感があるか。
モチベーションを考えるとき、かなり重要なポイントだと思います。
④ 上司が、社員のやる気を下げる関わり方をしていないか
社員のモチベーションを上げよう、という話になると、社員側に何かをする発想になりがちです。
でも、その前に、上司の関わり方を見る必要があります。
- 社員が考えて提案したら、「それ前にもやったから」とすぐ否定する
- 社員が仕事を任されたのに、途中で全部やり方を変える
- 社員が失敗したら、結果だけ見て怒る
- うまくできても、何も言わない
- 何か決めようとすると、「勝手に決めるな」と言う
- 何も決めないと、「もっと主体的にやれ」と言う
これが続くと、動かなくなるのは、それほど不思議ではありません。
もちろん、上司が全部悪い、という話でもありません。
でも、
社員のモチベーションを考えるなら、上司のマネジメントも一緒に見る。
必要があります。
⑤ そもそも本人と仕事・役割が合っているか
会社が環境を整えれば、全員が、ものすごく仕事に燃える。
私は、そうは思っていません。
人によって、仕事に求めるものは違います。
- 成長したい人
- 安定して働きたい人
- 専門性を高めたい人
- 人と関わりたい人
- 一人で集中したい人
- 責任ある仕事をしたい人
- そこまで仕事に多くを求めない人
いろいろです。
だから、全員を同じモチベーションにしようとすると、無理があります。
また、今の仕事との相性が悪い場合もあります。
営業では成果が出ない。
でも、管理業務に異動したら力を発揮する。
人をまとめるのは苦手。
でも、技術を極めると強い。
こういうこともあります。
だから、モチベーションが低い社員を見たとき、
「もっとやる気を出させる」だけでなく、「この人は、この仕事で力を出しやすいのか」
も考えた方がいいと思います。
「褒めればモチベーションが上がる」とも限らない
社員のやる気を上げる方法として、
「もっと褒めましょう」
と言われることがあります。
もちろん、良い行動を認めることは大切です。
でも、何でも褒めればいい、とは思いません。
本人も、明らかにできていないと思っている。
それなのに、
「すごいね!」
と言われる。
かえって、不自然です。
大切なのは、褒めることではなく、
何が良かったのかを具体的に伝えること。
です。
- 「今回、早めに相談したから問題が大きくならなかった」
- 「お客様の話を最後まで聞いてから提案したのが良かった」
- 「前回の失敗を受けて、今回は先に確認できていた」
こういうフィードバックなら、本人も、何を続ければいいか分かります。
つまり、モチベーションを上げるために褒めるのではなく、
正しい行動が本人にも解るようにする。
第15回の「分かった・解った・できた」にもつながります。
「楽しい会社」にすれば解決するわけでもない
社員のモチベーションを上げたい。
そこで、
- イベントを増やす
- 飲み会をする
- 社員旅行をする
- ゲームをする
それが好きな社員もいます。
良いこともあります。
でも、それだけで仕事そのものの問題は解決しません。
- 役割が分からない
- 上司との関係が悪い
- 評価に納得できない
- 仕事が回らない
- 成長できない
そういう状態で、イベントだけ増やしても、根本は変わらない。
私は、会社を楽しくすること自体を否定しません。
むしろ、仕事は楽しい方がいいと思っています。
ただ、
「楽しい職場」と「仕事が楽しい」は少し違う。
仕事そのものに、
- できるようになる面白さ
- 任される面白さ
- 成果が出る面白さ
- 人の役に立つ面白さ
がある方が、長く続きやすいと思います。
「やる気のある社員だけ採ればいい」では解決しない
採用でも、
「やる気のある人が欲しい」
と言われます。
でも、面接のときに、ものすごくやる気があった人でも、半年後に、静かになっていることがあります。
入社前は、期待していた。
でも、入社したら、
- 仕事を任せてもらえない
- 質問しても、忙しそうで聞けない
- 評価基準も分からない
- 提案しても採用されない
すると、最初のやる気も、少しずつ下がります。
逆に、面接ではそこまで強く見えなかった人が、仕事を覚え、任される範囲が広がり、活躍することもあります。
つまり、
モチベーションは、採用時点で固定されているものではありません。
会社との関わりの中で、変わっていきます。
モチベーションが高くなくても、良い社員はいる
ここも、少し大事な話だと思います。
会社には、いつも前向きで、何でも挑戦して、会社を大きくしたい社員ばかりが必要でしょうか。
私は、そうは思いません。
決められた仕事を、安定して、丁寧に、毎日続ける。
大きな野心はない。
でも、約束は守る。
仕事はきちんとする。
こういう人も、会社にとって非常に大切です。
だから、
「モチベーションが高いか」だけで、良い社員かどうかを判断しない方がいい。
会社が求めているのは、本当は、テンションの高さではなく、
必要な役割を、安定して果たしてくれること
かもしれません。
「モチベーション」と「責任」は分けた方がいい
これも、会社では混ざりやすいと思います。
「今日はやる気が出ないので、仕事をやりません」
では、困ります。
誰にでも、気分の波はあります。
毎日、仕事に燃えている必要はありません。
それでも、
- 約束した仕事はする
- 期限を守る
- 必要な報告をする
- 自分の役割を果たす
これは、モチベーションとは別です。
私は、会社では、
高いモチベーションを求めることより、モチベーションに左右されすぎず役割を果たせる状態をつくること
も大切だと思っています。
やる気がある日は100点。
ない日は30点。
ではなく、どんな日でも、ある程度安定して仕事ができる。
会社としては、こちらの方が強い場合があります。
だから、評価を「やる気」でつけない
「あいつは、やる気がある」
「あの社員は、やる気がない」
こういう評価も、少し危ないと思っています。
やる気は、見えにくいからです。
- 声が大きい
- 会議でよく発言する
- 残業している
- 早く来ている
これが、必ずしも成果につながるとは限りません。
逆に、静かだけれど、
- 期限を守る
- 問題を早めに報告する
- お客様対応が丁寧
- ミスが少ない
そういう人もいます。
だから、評価するなら、モチベーションそのものではなく、
行動を見る。
ここは、第13回の採用基準や、第17回の主体性と同じです。
抽象的な言葉を、具体的な行動へ落とす。
シリーズ全体で、何度も出てくる考え方です。
社長自身のモチベーションと、社員のモチベーションは違う
社長は、会社のことを考えています。
- 売上
- 利益
- 採用
- 将来
- 取引先
- 社員
全部、自分の問題です。
だから、仕事に対する熱量も高くなりやすい。
でも、社員に、社長と同じ熱量を求めると、苦しくなることがあります。
これは、社員が悪いのではありません。
立場が違うからです。
社長にとって、会社は人生そのものに近いかもしれない。
社員にとっては、人生の大切な一部ではあっても、すべてではないこともあります。
だから、社員に求めるのは、
「社長と同じ熱量」ではなく、「その役割を果たすために必要な姿勢と行動」
でいいと思っています。
ここを分けると、社員の見え方も少し変わります。
モチベーションが低い社員に、まず何を聞けばいいのか
では、社員の様子が変わったとき、何を聞けばいいのか。
いきなり、
「最近やる気ないよね?」
では、話しにくいと思います。
それより、
- 「最近、仕事で困っていることある?」
- 「今の仕事で、やりにくいところはある?」
- 「もっとできるようになりたい仕事はある?」
- 「今の役割で、分かりにくいところはある?」
- 「上司として、何か変えた方がいいことある?」
と聞く。
すると、モチベーションではなく、その下にある問題が見えることがあります。
本人の気持ちを、無理に変えるのではなく、
仕事をしにくくしているものを一緒に探す。
私は、このくらいからでいいと思っています。
「社長を、楽にする。」モチベーションの考え方
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
社員のやる気が気になる。
社長が、毎朝声をかける。
励ます。
褒める。
飲みに連れていく。
また下がったら、もう一度励ます。
これを、社長がずっとやり続けるのは大変です。
一方で、
- 役割が分かる
- 成長が見える
- 評価に納得感がある
- 上司との関わりがある
- 仕事を任せてもらえる
- 必要なときに相談できる
そういう環境ができると、社員の仕事への向き合い方は、社長の気合だけに依存しにくくなります。
つまり、モチベーションの問題も、突き詰めると、
人の気持ちを操作する話ではなく、働きやすい組織を設計する話
だと思っています。
それが、社員にとっても、管理職にとっても、社長にとっても、健やかな状態につながります。
まとめ|モチベーションは、「上げる」より「下がる理由を見る」
社員のモチベーションが低い。
そんなとき、
「もっとやる気を出させたい」
と思うことがあります。
でも、人の気持ちは、スイッチのようには変えられません。
だから、まず見る。
- 何を期待されているか分かっているか
- 成長を感じられているか
- 評価に納得感があるか
- 上司との関係はどうか
- 仕事や役割は合っているか
- やる気を失わせているものがないか
モチベーションは、無理に上げるものというより、下がる理由を一つずつ減らしていくもの。
私は、そう考えています。
もちろん、会社がどれだけ環境を整えても、全員が同じ熱量で働くわけではありません。
それでいいと思います。
大切なのは、全員を、
「やる気満々の社員」
にすることではありません。
それぞれが、自分の役割を理解し、必要な責任を果たし、できれば、仕事の中に少しでも面白さや成長を感じられる。
そんな状態を増やすこと。
社員のモチベーションが気になったとき、
「どうすれば、もっとやる気を出してくれるだろう?」
だけではなく、
「この会社には、社員のやる気を削っているものがないだろうか?」
と考えてみる。
そこに、組織を良くするヒントがあるのだと思います。
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