社長の100の悩み

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社員に主体性がない。「自分で考えて動け」と言っても動かないのはなぜ? 社長の100の悩み|第17回

「うちの社員は、言われたことしかやらない」

「もう少し、自分で考えて動いてほしい」

「いちいち全部聞かないで、自分で判断してほしい」

社長や管理職から、よく聞く言葉です。

その気持ちは、よく分かります。

会社が大きくなれば、社長一人ですべてを判断することはできません。

社員一人ひとりが考え、必要なことを判断して動いてくれた方が、組織は強くなります。

でも、

「もっと主体的に動いて」

と伝えたのに、何も変わらない。

それどころか、

「どうすればいいですか?」

と、また聞きに来る。

すると、

「結局、考える気がないのかな」

と思ってしまう。

ただ私は、ここで一度、

「主体性がない人なのか」ではなく、「主体的に動ける状態になっているか」

を見た方がいいと思っています。

そして、もう一つ大切なのは、

主体性とは、何でも自分で勝手に決めることではありません。

自分の役割の中で考える。

決めていいことは決める。

判断できないことは整理して相談する。

必要なら周囲の力を使う。

そして、仕事を前へ進める。

私は、これも十分に主体性だと思っています。

「自分で考えて動いて」の何が難しいのか

上司からすると、

「自分で考えて動いて」

は、分かりやすい言葉に感じます。

でも、社員からすると、意外と難しい言葉です。

  • どこまで自分で決めていいのか
  • 何を基準に判断すればいいのか
  • 勝手に進めて失敗したら怒られないか
  • 上司に相談したら「自分で考えろ」と言われないか

迷う。

結果、何もしない方が安全になります。

そして、上司に確認してから動く。

会社側から見ると、

「指示待ち」

に見えます。

でも本人からすると、

「間違った判断をしないように確認している」

だけかもしれません。

つまり、主体性の問題に見えて、実は、役割や権限の問題であることがあります。

社員に主体性がないと感じたとき、社長に確認してほしい5つのこと

まずは、この5つを見てみてください。

社員の主体性を考える5つのチェック

  1. どこまで自分で判断していいのかが明確になっているか
  2. 判断するときの基準を伝えているか
  3. 自分で判断した結果の失敗を、過度に責めていないか
  4. 「相談すること」を主体性がないと決めつけていないか
  5. 上司自身が、部下の考える機会を奪っていないか

① どこまで自分で判断していいのかが明確になっているか

社員に、

「もっと自分で判断して」

と言う。

でも、どこまで判断していいかは伝えていない。

これは、意外とあります。

  • お客様へのちょっとした対応は自分で決めていいのか
  • 価格変更はどうか
  • 納期変更はどうか
  • 業務の進め方は変えていいのか
  • 会社のルールそのものを変えていいのか

全部、判断の重さが違います。

社員からすると、境界線が分からなければ、上司へ聞いた方が安全です。

だから、主体性を求めるなら、先に、

「ここまではあなたが決めていい」

を渡す必要があります。

これは、仕事を丸投げすることとは違います。

役割。

責任。

権限。

この3つをそろえる。

「この仕事はあなたの役割です」

「ここまでの結果には責任を持ってください」

「そのために、ここまでは自分で決めていいです」

とする。

すると、初めて本人が考えやすくなります。

② 判断するときの基準を伝えているか

権限だけ渡しても、判断基準がなければ難しいことがあります。

「あなたに任せるよ」

と言われた。

でも、何を大切に決めればいいか分からない。

  • 売上を優先するのか
  • 利益なのか
  • お客様満足なのか
  • 安全なのか
  • スピードなのか

その会社によって違います。

だから、普段から、

  • 「うちでは、こういうときは安全を最優先する」
  • 「この金額までは現場判断でいい」
  • 「納期を守るためでも、品質を落としてはいけない」

というように、会社の判断基準を伝えておく。

主体性というと、本人の性格のように聞こえます。

でも実際には、

判断するための材料を会社がどれだけ渡しているか

も大きいと思っています。

③ 自分で判断した結果の失敗を、過度に責めていないか

「もっと自分で判断して」

と言った。

社員が考えて動いた。

でも、失敗した。

すると、

「なんで勝手にやったんだ」

と怒る。

次に同じ社員が、上司へ確認してから動いた。

すると、

「それくらい自分で考えてよ」

と言われる。

これでは、かなり難しいですよね。

社員からすれば、どちらに行っても怒られる。

こうなると、一番リスクの低い行動を選びます。

  • できるだけ判断しない
  • 上司に確認する
  • 責任を持たない

これは、本人の性格だけで起きているわけではありません。

会社が、

「判断しない方が安全」

な環境をつくっている場合があります。

もちろん、何でも失敗していいわけではありません。

  • 重大なルール違反
  • 安全に関わること
  • 権限を超えた判断

これは別です。

でも、任せた範囲の中で本人が考え、結果的にうまくいかなかったなら、

「なぜそう考えた?」

を確認する。

判断の過程が悪かったのか。

情報不足だったのか。

結果だけが悪かったのか。

そこを分ける。

失敗そのものではなく、判断の質を振り返る。

これができる会社の方が、社員は少しずつ判断できるようになります。

④ 「相談すること」を主体性がないと決めつけていないか

これは、第12回からずっと大切にしている考え方です。

「すぐ上司に聞く人は、主体性がない」

と言われることがあります。

確かに、何も考えず、

「どうすればいいですか?」

だけなら問題があります。

でも、相談すること自体が悪いわけではありません。

  • 自分の責任範囲を超えている
  • 自分の権限では決められない
  • 会社全体への影響が大きい

こうしたときに、勝手に判断する方が危ない。

大切なのは、相談するか、しないかではなく、

相談する前にどこまで考えているか。

です。

「こういう状況です」

「私はAとBの方法があると思っています」

「私はAがいいと思います。理由はこれです」

「ただ、この部分は私の権限では判断できないので相談しました」

これなら、かなり主体的です。

上司の経験や権限を使って、仕事を前へ進めています。

私は、

主体性の反対は「相談すること」ではなく、「考えることを放棄すること」

だと思っています。

⑤ 上司自身が、部下の考える機会を奪っていないか

部下が、

「どうすればいいですか?」

と聞いてくる。

上司は答えを知っている。

だから、

「こうして」

とすぐ答える。

その方が早い。

でも、これを毎回やっていると、部下は、

「困ったら上司に聞けばいい」

と学びます。

そして半年後、上司は、

「うちの部下は全然自分で考えない」

と言う。

少し皮肉な話ですが、実際に起こります。

第16回でも書きましたが、管理職になると、今日の仕事を早く終わらせることと、部下を育てることが、時々ぶつかります。

だから、時間と内容を見ながら、

  • 「あなたはどう考えた?」
  • 「どこで迷った?」
  • 「選択肢は何がある?」

と聞く。

ただし、何も知らない新人に、毎回質問だけ返せばいいわけではありません。

教えるべきことは教える。

考える材料を渡す。

そのうえで、少しずつ考えさせる。

主体性は、「自分で考えろ」と言って生まれるものではなく、考える経験を積ませて育てるもの。

だと思っています。

主体性のある人は、「何でも一人でやる人」ではない

ここは、少し整理しておきたいと思います。

主体性がある人というと、

  • 何でも自分で考える
  • 何でも自分で決める
  • 誰にも聞かない
  • どんどん行動する

そんな人をイメージすることがあります。

でも、会社の中では、それが良いとは限りません。

  • 自分の権限を超えて、どんどん決める
  • 周囲に共有しない
  • 会社のルールを勝手に変える
  • 重要なことを上司へ報告しない

これは、主体性というより、独断になってしまいます。

だから私は、主体性を、

「自分の役割と責任範囲を理解したうえで、自ら考え、必要な人を使いながら仕事を前へ進めること」

くらいで捉えています。

これなら、自分で考えることも、相談することも、任せられた範囲で決めることも、全部つながります。

「主体性がある人を採れば解決する」とも限らない

採用の場面でも、

「主体性がある人が欲しい」

と言われることがあります。

もちろん、採用基準として考えることは大切です。

ただ、主体性のある人を採れば、すべて解決するわけではありません。

前職では、自分で判断して仕事をしていた。

でも、入社した会社では、

  • 何か決めるたびに上司から否定される
  • 社長が全部上書きする
  • 判断基準も分からない

すると、その人も少しずつ、判断しなくなる可能性があります。

つまり、

主体性は本人の資質だけでなく、環境によって出やすくも、出にくくもなる。

と思っています。

「この社員は主体性がない人だ」

と早く決めすぎると、会社側で変えられるものが見えなくなります。

それでも、本人側の問題であることはある

一方で、何でも会社側の問題にするのも違います。

役割を明確にした。

判断基準も伝えた。

権限も渡した。

失敗したときも一緒に振り返った。

上司も考える機会をつくった。

それでも、

  • 自分では何も考えようとしない
  • 言われたことだけやればいいと思っている
  • 責任を持つことを避け続ける

という人もいます。

その場合は、本人側にも課題があります。

第15回でも書いたように、教育で変えられるものと、採用や配置で考えるべきものは分けた方がいい。

大事なのは、

「社員が悪い」「会社が悪い」の二択にしないこと。

どこに原因があるのかを、一つずつ見ることです。

「任せる」と「丸投げ」も違う

主体性を育てようとして、

「任せる」

ことがあります。

これは大切です。

でも、

「よろしく」

だけで仕事を渡して、あとは放置する。

これは、任せるというより、丸投げになることがあります。

任せるなら、

  • 目的
  • 求める結果
  • 期限
  • 判断していい範囲
  • 途中で相談してほしいポイント

ここをある程度そろえる。

そのうえで、やり方は本人に考えてもらう。

つまり、

ゴールと枠は上司が示し、その中の進め方を本人に考えてもらう。

最初は、このくらいから始める方がいいと思います。

慣れてきたら、少しずつ任せる範囲を広げる。

主体性も、いきなり100点を求めるのではなく、育てていけばいい。

社長自身が、一番答えを持っているから難しい

中小企業では、社長が一番、会社のことを分かっていることが多い。

  • お客様も知っている
  • 取引先も知っている
  • 社員も知っている
  • 過去の失敗も知っている

だから、社員から相談されたら、答えがすぐ分かります。

そして、社長自身が決めた方が、たいてい早い。

ここが、難しいところです。

でも、全部答え続けると、会社はいつまでも、社長の頭の中に答えがある会社のままです。

第3回から何度も出てきた、

「自分でやった方が早い」

にもつながります。

今日だけ見れば、社長が答えた方が早い。

でも、3年後を考えるなら、社員や管理職が判断できることを増やした方がいい。

だから、社長自身も、すぐ答える仕事と、考えさせる仕事を分ける。

これは、社長が楽になる会社をつくるうえで、かなり重要だと思っています。

判断基準を言葉にすると、会社の「考え方」が見えてくる

社員に主体性を持ってほしい。

そのために、判断基準を言葉にする。

これをやっていくと、面白いことがあります。

会社が、何を大切にしているのかが見えてくる。

  • 安全なのか
  • スピードなのか
  • 品質なのか
  • お客様との長期関係なのか
  • 利益なのか
  • 社員の成長なのか

もちろん、全部大切です。

でも、迷ったときに、何を優先する会社なのか。

ここに、その会社の価値観があります。

つまり、主体性の話は、単なる社員教育ではなく、

「うちの会社は、どういう考え方で仕事をするのか」

を言葉にする話でもあります。

ここは、採用基準、育成、管理職、評価制度、全部につながってきます。

評価でも「主体性」を曖昧にしない

評価制度で、

「主体性」

という項目を置く会社があります。

でも、

  • A上司は、積極的に意見を言う人を主体的と評価する
  • B上司は、一人で判断する人を主体的と評価する
  • C上司は、新しい提案をする人を主体的と評価する

これでは、基準がバラバラです。

だから、第13回の採用基準と同じで、

「主体性」

という言葉を、行動まで落とす。

「自分の役割の中でまず考え、判断できることは判断し、判断できないことは情報を整理して必要な相手へ相談する」

とする。

こうすれば、採用でも、育成でも、評価でも、同じ「主体性」を使えるようになります。

採用。

育成。

管理職。

評価。

こうしたものが、少しずつ一本につながっていきます。

「社長を、楽にする。」主体性を育てる

JAPANVISIONのMissionは、

「社長を、楽にする。」

です。

社員が、何かあるたび、

「社長、どうしますか?」

と聞きに来る。

管理職も、

「社長、決めてください」

となる。

全部、社長が答える。

これでは、社員が増えても、社長の仕事は減りません。

一方で、

  • 会社としての判断基準がある
  • 役割が分かっている
  • 権限が分かっている
  • 自分で考える
  • 決められることは決める
  • 決められないことだけ、整理して相談する

こういう人が増えると、社長が直接判断しなくてもいい仕事が増えます。

だから、主体性を育てることは、単に、

「もっと積極的な社員をつくる」

という話ではありません。

社長の頭の中にある判断を、少しずつ組織へ渡していくこと。

でもあります。

それが、社長を楽にする会社につながります。

まとめ|主体性は、「自分で考えろ」と言うだけでは育たない

「うちの社員には主体性がない」

そう感じることはあると思います。

もちろん、本人側の姿勢が原因の場合もあります。

でも、その前に、一度確認してみてください。

  • どこまで自分で決めていいのか
  • 何を基準に判断すればいいのか
  • 失敗したとき、判断したこと自体を責めていないか
  • 相談することを、主体性がないと扱っていないか
  • 上司が、すぐに答えを渡していないか

主体性とは、何でも一人でやることではありません。

自分の役割と責任範囲を理解し、自ら考え、決められることは決め、必要なときには周囲を使いながら仕事を前へ進めること。

私は、そう考えています。

だから、

「自分で考えて動いて」

と伝えるだけではなく、

考えられる材料を渡す。
判断できる範囲を渡す。
考える経験を渡す。

そして、少しずつ任せていく。

社員に主体性がないと感じたとき、

「なぜ自分で考えないんだろう?」

だけではなく、

「この会社は、自分で考えて動きやすい会社になっているだろうか?」

と考えてみる。

そこから、社員の見え方も、会社のつくり方も、少し変わってくるのだと思います。


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