「うちの社員は、言われたことしかやらない」
「もう少し、自分で考えて動いてほしい」
「いちいち全部聞かないで、自分で判断してほしい」
社長や管理職から、よく聞く言葉です。
その気持ちは、よく分かります。
会社が大きくなれば、社長一人ですべてを判断することはできません。
社員一人ひとりが考え、必要なことを判断して動いてくれた方が、組織は強くなります。
でも、
「もっと主体的に動いて」
と伝えたのに、何も変わらない。
それどころか、
「どうすればいいですか?」
と、また聞きに来る。
すると、
「結局、考える気がないのかな」
と思ってしまう。
ただ私は、ここで一度、
「主体性がない人なのか」ではなく、「主体的に動ける状態になっているか」
を見た方がいいと思っています。
そして、もう一つ大切なのは、
主体性とは、何でも自分で勝手に決めることではありません。
自分の役割の中で考える。
決めていいことは決める。
判断できないことは整理して相談する。
必要なら周囲の力を使う。
そして、仕事を前へ進める。
私は、これも十分に主体性だと思っています。
「自分で考えて動いて」の何が難しいのか
上司からすると、
「自分で考えて動いて」
は、分かりやすい言葉に感じます。
でも、社員からすると、意外と難しい言葉です。
- どこまで自分で決めていいのか
- 何を基準に判断すればいいのか
- 勝手に進めて失敗したら怒られないか
- 上司に相談したら「自分で考えろ」と言われないか
迷う。
結果、何もしない方が安全になります。
そして、上司に確認してから動く。
会社側から見ると、
「指示待ち」
に見えます。
でも本人からすると、
「間違った判断をしないように確認している」
だけかもしれません。
つまり、主体性の問題に見えて、実は、役割や権限の問題であることがあります。
社員に主体性がないと感じたとき、社長に確認してほしい5つのこと
まずは、この5つを見てみてください。
社員の主体性を考える5つのチェック
- どこまで自分で判断していいのかが明確になっているか
- 判断するときの基準を伝えているか
- 自分で判断した結果の失敗を、過度に責めていないか
- 「相談すること」を主体性がないと決めつけていないか
- 上司自身が、部下の考える機会を奪っていないか
① どこまで自分で判断していいのかが明確になっているか
社員に、
「もっと自分で判断して」
と言う。
でも、どこまで判断していいかは伝えていない。
これは、意外とあります。
- お客様へのちょっとした対応は自分で決めていいのか
- 価格変更はどうか
- 納期変更はどうか
- 業務の進め方は変えていいのか
- 会社のルールそのものを変えていいのか
全部、判断の重さが違います。
社員からすると、境界線が分からなければ、上司へ聞いた方が安全です。
だから、主体性を求めるなら、先に、
「ここまではあなたが決めていい」
を渡す必要があります。
これは、仕事を丸投げすることとは違います。
役割。
責任。
権限。
この3つをそろえる。
「この仕事はあなたの役割です」
「ここまでの結果には責任を持ってください」
「そのために、ここまでは自分で決めていいです」
とする。
すると、初めて本人が考えやすくなります。
② 判断するときの基準を伝えているか
権限だけ渡しても、判断基準がなければ難しいことがあります。
「あなたに任せるよ」
と言われた。
でも、何を大切に決めればいいか分からない。
- 売上を優先するのか
- 利益なのか
- お客様満足なのか
- 安全なのか
- スピードなのか
その会社によって違います。
だから、普段から、
- 「うちでは、こういうときは安全を最優先する」
- 「この金額までは現場判断でいい」
- 「納期を守るためでも、品質を落としてはいけない」
というように、会社の判断基準を伝えておく。
主体性というと、本人の性格のように聞こえます。
でも実際には、
判断するための材料を会社がどれだけ渡しているか
も大きいと思っています。
③ 自分で判断した結果の失敗を、過度に責めていないか
「もっと自分で判断して」
と言った。
社員が考えて動いた。
でも、失敗した。
すると、
「なんで勝手にやったんだ」
と怒る。
次に同じ社員が、上司へ確認してから動いた。
すると、
「それくらい自分で考えてよ」
と言われる。
これでは、かなり難しいですよね。
社員からすれば、どちらに行っても怒られる。
こうなると、一番リスクの低い行動を選びます。
- できるだけ判断しない
- 上司に確認する
- 責任を持たない
これは、本人の性格だけで起きているわけではありません。
会社が、
「判断しない方が安全」
な環境をつくっている場合があります。
もちろん、何でも失敗していいわけではありません。
- 重大なルール違反
- 安全に関わること
- 権限を超えた判断
これは別です。
でも、任せた範囲の中で本人が考え、結果的にうまくいかなかったなら、
「なぜそう考えた?」
を確認する。
判断の過程が悪かったのか。
情報不足だったのか。
結果だけが悪かったのか。
そこを分ける。
失敗そのものではなく、判断の質を振り返る。
これができる会社の方が、社員は少しずつ判断できるようになります。
④ 「相談すること」を主体性がないと決めつけていないか
これは、第12回からずっと大切にしている考え方です。
「すぐ上司に聞く人は、主体性がない」
と言われることがあります。
確かに、何も考えず、
「どうすればいいですか?」
だけなら問題があります。
でも、相談すること自体が悪いわけではありません。
- 自分の責任範囲を超えている
- 自分の権限では決められない
- 会社全体への影響が大きい
こうしたときに、勝手に判断する方が危ない。
大切なのは、相談するか、しないかではなく、
相談する前にどこまで考えているか。
です。
「こういう状況です」
「私はAとBの方法があると思っています」
「私はAがいいと思います。理由はこれです」
「ただ、この部分は私の権限では判断できないので相談しました」
これなら、かなり主体的です。
上司の経験や権限を使って、仕事を前へ進めています。
私は、
主体性の反対は「相談すること」ではなく、「考えることを放棄すること」
だと思っています。
⑤ 上司自身が、部下の考える機会を奪っていないか
部下が、
「どうすればいいですか?」
と聞いてくる。
上司は答えを知っている。
だから、
「こうして」
とすぐ答える。
その方が早い。
でも、これを毎回やっていると、部下は、
「困ったら上司に聞けばいい」
と学びます。
そして半年後、上司は、
「うちの部下は全然自分で考えない」
と言う。
少し皮肉な話ですが、実際に起こります。
第16回でも書きましたが、管理職になると、今日の仕事を早く終わらせることと、部下を育てることが、時々ぶつかります。
だから、時間と内容を見ながら、
- 「あなたはどう考えた?」
- 「どこで迷った?」
- 「選択肢は何がある?」
と聞く。
ただし、何も知らない新人に、毎回質問だけ返せばいいわけではありません。
教えるべきことは教える。
考える材料を渡す。
そのうえで、少しずつ考えさせる。
主体性は、「自分で考えろ」と言って生まれるものではなく、考える経験を積ませて育てるもの。
だと思っています。
主体性のある人は、「何でも一人でやる人」ではない
ここは、少し整理しておきたいと思います。
主体性がある人というと、
- 何でも自分で考える
- 何でも自分で決める
- 誰にも聞かない
- どんどん行動する
そんな人をイメージすることがあります。
でも、会社の中では、それが良いとは限りません。
- 自分の権限を超えて、どんどん決める
- 周囲に共有しない
- 会社のルールを勝手に変える
- 重要なことを上司へ報告しない
これは、主体性というより、独断になってしまいます。
だから私は、主体性を、
「自分の役割と責任範囲を理解したうえで、自ら考え、必要な人を使いながら仕事を前へ進めること」
くらいで捉えています。
これなら、自分で考えることも、相談することも、任せられた範囲で決めることも、全部つながります。
「主体性がある人を採れば解決する」とも限らない
採用の場面でも、
「主体性がある人が欲しい」
と言われることがあります。
もちろん、採用基準として考えることは大切です。
ただ、主体性のある人を採れば、すべて解決するわけではありません。
前職では、自分で判断して仕事をしていた。
でも、入社した会社では、
- 何か決めるたびに上司から否定される
- 社長が全部上書きする
- 判断基準も分からない
すると、その人も少しずつ、判断しなくなる可能性があります。
つまり、
主体性は本人の資質だけでなく、環境によって出やすくも、出にくくもなる。
と思っています。
「この社員は主体性がない人だ」
と早く決めすぎると、会社側で変えられるものが見えなくなります。
それでも、本人側の問題であることはある
一方で、何でも会社側の問題にするのも違います。
役割を明確にした。
判断基準も伝えた。
権限も渡した。
失敗したときも一緒に振り返った。
上司も考える機会をつくった。
それでも、
- 自分では何も考えようとしない
- 言われたことだけやればいいと思っている
- 責任を持つことを避け続ける
という人もいます。
その場合は、本人側にも課題があります。
第15回でも書いたように、教育で変えられるものと、採用や配置で考えるべきものは分けた方がいい。
大事なのは、
「社員が悪い」「会社が悪い」の二択にしないこと。
どこに原因があるのかを、一つずつ見ることです。
「任せる」と「丸投げ」も違う
主体性を育てようとして、
「任せる」
ことがあります。
これは大切です。
でも、
「よろしく」
だけで仕事を渡して、あとは放置する。
これは、任せるというより、丸投げになることがあります。
任せるなら、
- 目的
- 求める結果
- 期限
- 判断していい範囲
- 途中で相談してほしいポイント
ここをある程度そろえる。
そのうえで、やり方は本人に考えてもらう。
つまり、
ゴールと枠は上司が示し、その中の進め方を本人に考えてもらう。
最初は、このくらいから始める方がいいと思います。
慣れてきたら、少しずつ任せる範囲を広げる。
主体性も、いきなり100点を求めるのではなく、育てていけばいい。
社長自身が、一番答えを持っているから難しい
中小企業では、社長が一番、会社のことを分かっていることが多い。
- お客様も知っている
- 取引先も知っている
- 社員も知っている
- 過去の失敗も知っている
だから、社員から相談されたら、答えがすぐ分かります。
そして、社長自身が決めた方が、たいてい早い。
ここが、難しいところです。
でも、全部答え続けると、会社はいつまでも、社長の頭の中に答えがある会社のままです。
第3回から何度も出てきた、
「自分でやった方が早い」
にもつながります。
今日だけ見れば、社長が答えた方が早い。
でも、3年後を考えるなら、社員や管理職が判断できることを増やした方がいい。
だから、社長自身も、すぐ答える仕事と、考えさせる仕事を分ける。
これは、社長が楽になる会社をつくるうえで、かなり重要だと思っています。
判断基準を言葉にすると、会社の「考え方」が見えてくる
社員に主体性を持ってほしい。
そのために、判断基準を言葉にする。
これをやっていくと、面白いことがあります。
会社が、何を大切にしているのかが見えてくる。
- 安全なのか
- スピードなのか
- 品質なのか
- お客様との長期関係なのか
- 利益なのか
- 社員の成長なのか
もちろん、全部大切です。
でも、迷ったときに、何を優先する会社なのか。
ここに、その会社の価値観があります。
つまり、主体性の話は、単なる社員教育ではなく、
「うちの会社は、どういう考え方で仕事をするのか」
を言葉にする話でもあります。
ここは、採用基準、育成、管理職、評価制度、全部につながってきます。
評価でも「主体性」を曖昧にしない
評価制度で、
「主体性」
という項目を置く会社があります。
でも、
- A上司は、積極的に意見を言う人を主体的と評価する
- B上司は、一人で判断する人を主体的と評価する
- C上司は、新しい提案をする人を主体的と評価する
これでは、基準がバラバラです。
だから、第13回の採用基準と同じで、
「主体性」
という言葉を、行動まで落とす。
「自分の役割の中でまず考え、判断できることは判断し、判断できないことは情報を整理して必要な相手へ相談する」
とする。
こうすれば、採用でも、育成でも、評価でも、同じ「主体性」を使えるようになります。
採用。
育成。
管理職。
評価。
こうしたものが、少しずつ一本につながっていきます。
「社長を、楽にする。」主体性を育てる
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
社員が、何かあるたび、
「社長、どうしますか?」
と聞きに来る。
管理職も、
「社長、決めてください」
となる。
全部、社長が答える。
これでは、社員が増えても、社長の仕事は減りません。
一方で、
- 会社としての判断基準がある
- 役割が分かっている
- 権限が分かっている
- 自分で考える
- 決められることは決める
- 決められないことだけ、整理して相談する
こういう人が増えると、社長が直接判断しなくてもいい仕事が増えます。
だから、主体性を育てることは、単に、
「もっと積極的な社員をつくる」
という話ではありません。
社長の頭の中にある判断を、少しずつ組織へ渡していくこと。
でもあります。
それが、社長を楽にする会社につながります。
まとめ|主体性は、「自分で考えろ」と言うだけでは育たない
「うちの社員には主体性がない」
そう感じることはあると思います。
もちろん、本人側の姿勢が原因の場合もあります。
でも、その前に、一度確認してみてください。
- どこまで自分で決めていいのか
- 何を基準に判断すればいいのか
- 失敗したとき、判断したこと自体を責めていないか
- 相談することを、主体性がないと扱っていないか
- 上司が、すぐに答えを渡していないか
主体性とは、何でも一人でやることではありません。
自分の役割と責任範囲を理解し、自ら考え、決められることは決め、必要なときには周囲を使いながら仕事を前へ進めること。
私は、そう考えています。
だから、
「自分で考えて動いて」
と伝えるだけではなく、
考えられる材料を渡す。
判断できる範囲を渡す。
考える経験を渡す。
そして、少しずつ任せていく。
社員に主体性がないと感じたとき、
「なぜ自分で考えないんだろう?」
だけではなく、
「この会社は、自分で考えて動きやすい会社になっているだろうか?」
と考えてみる。
そこから、社員の見え方も、会社のつくり方も、少し変わってくるのだと思います。
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「社員が指示待ちになっている」「何でも社長に判断が戻ってくる」「どこまで任せればいいか分からない」という段階からでもご相談いただけます。
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