「この前も言ったんだけどな」
「何回教えれば分かるんだろう」
「本人も“分かりました”って言っていたんだけど……」
社員教育の話になると、こんな言葉をよく聞きます。
社長や上司からすると、
- ちゃんと説明した
- 注意もした
- マニュアルも渡した
- 本人も「分かりました」と言った
それなのに、また同じミスをする。
そうなると、
「やる気がないのかな」
「覚える気がないのかな」
と思いたくなる気持ちも分かります。
もちろん、本当に本人の姿勢に問題があることもあります。
でも、その前に一つ考えてみたいことがあります。
「分かった」と「解った」と「できた」は、同じではありません。
私は、社員教育ではこの違いがとても大切だと思っています。
「分かった」「解った」「できた」は全部違う
少し言葉を分けて考えてみます。
たとえば上司が、
「この作業の前には、必ずこの確認をしてね」
と説明する。
新人が、
「分かりました」
と答える。
ここでの「分かった」は、
言われた内容を理解した
という段階です。
でも、
- なぜその確認が必要なのか
- やらなかったら何が起きるのか
- どんな場面でも同じように確認する必要があるのか
まで本人の中でつながっているかは別です。
そこまで理解して、
「なるほど、だからやるのか」
と腑に落ちた状態を、この記事ではあえて、
「解った」
と表現したいと思います。
でも、解ったからといって、仕事で実際にできるとは限りません。
さらに、一度できたからといって、毎回、一人でできるとも限らない。
聞いた
↓
分かった
↓
解った
↓
できた
↓
一人でできる
会社側は、
「教えた」
と思っている。
本人は、
「分かった」
と思っている。
でも、まだ「できる」まで行っていない。
このズレが、
「何度言ってもできない」
を生んでいることがあります。
「教えた」で教育を終わらせない
教育では、教えた側が主語になりやすいです。
- 「説明しました」
- 「教えました」
- 「注意しました」
- 「マニュアルを渡しました」
でも、教育の目的は、教えることではありません。
相手ができるようになることです。
だから、
- 「教えたか」
- 「分かったか」
- 「解ったか」
- 「できたか」
- 「一人でもできるか」
を見る必要があります。
ここを変えるだけでも、教育の見方はかなり変わります。
「何度言っても分からない」の中身を分けてみる
同じミスを繰り返す社員がいると、つい、
「分かっていない」
と一括りにしてしまいます。
でも実際には、いくつか種類があります。
- そもそも説明の意味が分かっていない
- 言われたことは分かったけれど、理由までは解っていない
- 理由は解っているけれど、実際にやるとできない
- 一人ならできるけれど、忙しくなると抜ける
- 何を優先すればいいか分からない
- 自分で判断していい範囲が分からない
- 困ったときに誰へ相談すればいいか分からない
- 分かっていても守ろうとしていない
全部、対処が違います。
だから、
「この人は、どの段階で止まっているんだろう?」
と考える。
ここから始めた方がいいと思っています。
社員が育たないとき、社長に確認してほしい5つのこと
何度教えても同じミスが起きるときは、次の5つを確認してみてください。
社員が育たないときの5つのチェック
- 「何をできれば合格か」が具体的になっているか
- 「分かった」で終わらず、「解った」「できた」まで確認しているか
- できなかった理由を、本人と一緒に確認しているか
- 教える人によって、言っていることが違っていないか
- 教育で解決できる問題と、採用・配置の問題を分けているか
① 「何をできれば合格か」が具体的になっているか
「もっとちゃんとやって」
「気をつけて」
「周りを見て動いて」
「主体的にやって」
よく使う言葉です。
でも、これでは何をすればいいのか、相手には分からないことがあります。
たとえば、
「報告をちゃんとして」
ではなく、
「作業が予定より30分以上遅れそうなら、その時点で上司へ連絡する」
とする。
「お客様に丁寧に対応して」ではなく、
- 最初に名前を名乗る
- 相手の話を途中で遮らない
- 分からないことは、その場で勝手に答えず確認する
とする。
こうすると、できたか、できなかったかが分かります。
教育では、「ちゃんとやる」を、具体的な行動まで下げる。
これがかなり大切です。
② 「分かった」で終わらず、「解った」「できた」まで確認しているか
上司が説明する。
新人が聞く。
「分かった?」
「はい、分かりました」
そして終わる。
これはよくあります。
でも、「分かりました」は、その時点では本当かもしれません。
本人も、言葉の意味は理解している。
でも、なぜそうするのかまで解っているか。
実際にできるか。
そこは別です。
だから、説明したあとに、実際にやってもらう。
そして、
「なぜ今そうしたの?」
と聞いてみる。
ここが大事です。
正しいやり方ができていても、理由を聞くと、意外と違う考え方をしていることがあります。
逆に、まだうまくできなくても、考え方は合っていることもあります。
そうすると、教え方も変わります。
「分かった?」だけではなく、
「なぜそうするの?」
「じゃあ、やってみて」まで確認する。
これで、「分かった」「解った」「できた」を少しずつ確認できます。
③ できなかった理由を、本人と一緒に確認しているか
ミスが起きたとき、
「なんでこんなことしたの?」
と聞くことがあります。
この質問が悪いわけではありません。
ただ、聞き方によっては、本人は、
「怒られない答え」
を探します。
- 「すみません、確認不足でした」
- 「注意が足りませんでした」
- 「次から気をつけます」
そして終わる。
でも、「気をつけます」で改善するなら、たぶん最初から直っています。
大事なのは、責めることではなく、
どこで判断がズレたのかを解くこと。
です。
- 「そのとき、何を見てそう判断した?」
- 「どの段階で迷った?」
- 「誰かに確認しようとは思った?」
- 「次に同じ状況が来たら、どうする?」
と聞く。
すると、本人の頭の中が見えてきます。
私は、ミスの振り返りでは、
「誰が悪いか」より、「次に同じ状況でどう行動するか」
まで決めることが大事だと思っています。
④ 教える人によって、言っていることが違っていないか
新人からすると、かなり困るのがこれです。
A先輩は、
「こうやれ」
と言う。
B先輩は、
「そんなやり方しないよ」
と言う。
上司は、
「どっちでもいい」
と言う。
そして、何かあったときだけ怒られる。
これでは、新人は育ちにくいです。
中小企業では、教育担当が一人に決まっておらず、その場にいる人が教えることも多い。
それ自体は悪くありません。
でも、最低限、
「会社として、この仕事はこうやる」
という共通の基準は必要です。
全部をマニュアル化する必要はありません。
- 安全
- お客様対応
- 報告
- 相談
- 判断基準
こうした、会社としてブレてほしくないところだけでもそろえる。
これだけで、教育の混乱はかなり減ります。
⑤ 教育で解決できる問題と、採用・配置の問題を分けているか
ここは、かなり大事だと思っています。
私は、教育すれば、誰でも何でもできるようになる、とは考えていません。
人には、
- 得意不得意がある
- 覚える速度も違う
- 仕事との相性もある
- 会社が求める最低限の姿勢と合わない場合もある
たとえば、何度伝えても、
- 安全ルールを守ろうとしない
- ミスを隠す
- 約束を守ろうとしない
- 人のせいにし続ける
こうした場合、教え方だけの問題ではないかもしれません。
一方で、
- 覚えるのが少し遅い
- 経験が足りない
- 教え方が合っていない
- 説明だけで実践する機会がなかった
というだけなら、育つ可能性はあります。
だから、何でも、
「教育が足りない」
にしない。
逆に、何でも、
「本人がダメ」
にもしない。
教育で変えられるものと、採用・配置で考えるべきものを分ける。
この視点が必要です。
「一回教えた」は、会社側の都合かもしれない
社長やベテラン社員からすると、簡単に見える仕事があります。
何年もやっているからです。
でも、新人にとっては、初めてです。
- 電話対応
- 報告書
- 現場での段取り
- お客様への声掛け
- 上司への相談
ベテランには、
「普通にやれば分かる」
ことでも、新人には、その普通が分かりません。
そして、仕事ができる人ほど、
自分がなぜそう判断しているのかを、うまく説明できないことがあります。
何となく分かる。
経験で分かる。
見れば分かる。
これを私は、ある意味、ベテラン自身は仕事を「解っている」状態だと思います。
でも、解っていることと、それを他人に教えられることは別です。
だから、ベテランの頭の中にある判断を、少しずつ言葉にしていく。
何を見て、どう考えて、何を判断しているのか。
ここまで言葉にできると、教育に使えるようになります。
マニュアルを作れば、教育がうまくいくわけでもない
社員が育たない。
なら、マニュアルを作ろう。
という話になることがあります。
私は、マニュアルは有効だと思っています。
ただ、マニュアルがあれば育つ、とは思いません。
マニュアルは、
「何をするか」
を分かるためには便利です。
でも、
「なぜそうするのか」を解るためには、それだけでは足りないことがあります。
たとえば、
「このチェックを必ず行う」
だけではなく、
「ここを抜かすと、こういう事故につながる可能性がある」
まで伝える。
理由が解ると、書いていない状況でも、考えやすくなります。
だから、手順と一緒に、理由も教える。
私は、原理原則は大切だと思っています。
でも、原理原則を話しただけでも現場では使えません。
原理原則を、その会社、その仕事で使える行動まで翻訳する。
教育も同じです。
「考えさせる教育」と「放置」は違う
「自分で考えさせた方がいい」
という話もよく聞きます。
これは大切です。
でも、何も教えず、
「自分で考えて」
は、教育ではなく放置になることがあります。
新人には、まだ判断するための材料がありません。
だから、最初は材料を渡す。
判断基準を教える。
そのうえで、
「あなたならどう考える?」
と聞く。
そして、自分の責任範囲を超えることは、上司へ相談させる。
主体性とは、何でも自分一人で決めることではありません。
自分の役割の中で考え、必要なときには周囲や上司を使いながら、仕事を前へ進めること。
これは、採用でも、教育でも、管理職育成でも、かなり重要だと思っています。
できないときだけ声をかけていないか
教育していると、ミスしたときは声をかけます。
「ここ違うよ」
「次から気をつけて」
でも、できたときは、何も言わない。
ということがあります。
すると、本人は、
「これで合っている」
ということを理解しないまま仕事を続けます。
褒めることそのものが目的ではありません。
大事なのは、
「今の行動で合っている」と解るフィードバック。
です。
- 「今、迷った段階で相談したのは良かった」
- 「報告のタイミングがちょうど良かった」
- 「前回より先に準備できたね」
と具体的に伝える。
そうすると、本人の中に、
「こうすればいいんだ」
という基準ができます。
人は、間違いを直すだけでなく、正しい行動を繰り返すことで仕事を覚えていきます。
新人教育を「新人だけの問題」にしない
新人が入る。
なかなか育たない。
すると、
「今年の新人はちょっと弱いな」
という話になりがちです。
でも、毎年新人が育たないなら、本当に新人だけの問題でしょうか。
- 毎年、同じところでつまずく
- 毎年、同じ先輩と合わない
- 毎年、半年以内に辞める
なら、会社側の仕組みにも、何か共通点がある可能性があります。
教育は、新人を直す仕事ではありません。
新人が育ちやすい環境をつくる仕事でもあります。
「育つまでの時間」を見積もっているか
採用すると、会社は早く戦力になってほしいと思います。
当然です。
でも、入社1か月の社員と、5年いる社員を比べて、
「まだこんなこともできない」
となることがあります。
仕事によって、一人前になるまでの期間は違います。
だから、
- 3か月後
- 半年後
- 1年後
それぞれ、どこまでできればいいのかを考える。
- 3か月後には、基本作業を先輩と一緒にできる
- 半年後には、一人でできる作業が増える
- 1年後には、判断に迷ったときに適切に相談できる
とする。
すると、本人も、上司も、成長が分かりやすくなります。
「分かった」から「一人でできる」までを、一気に飛ばさない。
ことが大切です。
育成は、途中の段階を見る仕事でもあります。
管理職の仕事は「答えを教えること」だけではない
部下から、
「どうすればいいですか?」
と聞かれる。
忙しい管理職は、答えを教えた方が早いです。
「こうして」
と言えば、その仕事は終わります。
でも、毎回それを続けると、部下は、困ったら答えを聞く人になります。
だから、時間があるときは、
「あなたはどう思う?」
「なぜそう思う?」
と聞く。
考え方を確認する。
ただし、何でも質問で返せばいいわけではありません。
何も分かっていない新人に、毎回、
「あなたはどう思う?」
では疲れます。
教えるべきことは教える。
理由を解らせる。
やらせる。
考えさせる。
任せる。
教育は、「教える・解らせる・やらせる・考えさせる・任せる」の使い分け。
なのだと思います。
研修をやれば、人が育つわけでもない
社員が育たない。
なら、研修をしよう。
という話になることがあります。
研修は必要なこともあります。
でも、研修を受けて、
「よく分かりました」
となったから、仕事が変わるとは限りません。
研修で分かった。
あるいは、腑に落ちて解った。
でも、職場に戻ったら、
- 上司は何も知らない
- 仕事のやり方も変わらない
- 評価も変わらない
- 実践する機会もない
これでは、「できた」につながりません。
だから、研修をするなら、
「分かった」で終わらせず、職場で「できる」までつなげる。
必要があります。
- 上司が何を見るのか
- 本人が何を実践するのか
- いつ振り返るのか
ここまで考える。
研修は、学ぶ場所。
育つのは、日常の仕事の中です。
私自身、教育だけでは人は変わらないと思っている
人事や組織の仕事に長く関わっていると、
「良い教育をすれば、みんな育つ」
とは、なかなか言えなくなります。
- 育つ人もいる
- 時間がかかる人もいる
- 環境を変えると伸びる人もいる
- 上司が変わると変わる人もいる
- 残念ながら、その会社や仕事とは合わない人もいる
だからこそ、
- 採用も大事
- 配置も大事
- 上司も大事
- 評価も大事
教育だけを切り離しても、なかなかうまくいきません。
人が育たない問題は、教育だけの問題ではなく、採用・配置・上司・仕事の設計までつながっている。
私は、そう考えています。
「社長を、楽にする。」育成に変える
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
社員が育たない。
何度も社長が注意する。
また同じことが起きる。
結局、社長が仕事を取り上げる。
そして、
「自分でやった方が早い」
となる。
これでは、いつまでも仕事が社長へ戻ってきます。
逆に、
- 何をできればいいかを言葉にする
- まず分かってもらう
- なぜそうするのかまで解ってもらう
- 実際にやってもらう
- できたか確認する
- できるようになったことも伝える
- 少しずつ任せる
そうやって、
「教えた」から「一人でできる」までを会社としてつなげていく。
すると、社長や上司が、毎回答えを出さなくてもいい仕事が少しずつ増えていきます。
育成の目的は、立派な研修制度を作ることではありません。
社員が、自分の役割を自分で果たせる状態を増やすこと。
それが、結果として、社長を楽にします。
まとめ|「教えた」ではなく、「どこまでできるようになったか」を見る
何度言っても、同じミスをする。
教えても、なかなか覚えない。
そんなとき、本人のやる気や能力を疑いたくなることがあります。
もちろん、本人側の問題であることもあります。
でも、その前に、一度確認してみてください。
- 何をできれば合格なのか、具体的になっているか
- 「分かった」で終わっていないか
- なぜそうするのかまで解っているか
- 実際にやらせているか
- できなかった理由を確認しているか
- 教える人によって、基準が違っていないか
- 教育で変えられることと、採用や配置で考えることを分けているか
そして、
「教えたか」ではなく、「どこまでできるようになったか」を見る。
育成は、
聞いた
→ 分かった
→ 解った
→ できた
→ 一人でできる
という階段を上っていくことだと思います。
この途中を飛ばして、
「教えたんだから、できるよね」
としてしまうと、教える側も、教わる側も、苦しくなります。
人が育つ方法に、一つの正解はありません。
原理原則はある。
でも、その人がどこで止まるか、その会社でどう育てるかは、一人ひとり違う。
だからこそ、本人だけを責めるのでもなく、会社だけを責めるのでもなく、
「今、この人はどこまで分かっていて、どこから解っていないんだろう?」
と見る。
そこから、本当の育成が始まるのだと思います。
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「何度教えても同じミスが起きる」「教育が人によってバラバラ」「研修をしても現場が変わらない」という段階からでもご相談いただけます。
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