「いい人がいたら採りたい」
採用の相談をしていると、よく聞く言葉です。
気持ちはよく分かります。
でも、
「いい人って、どんな人ですか?」
と聞くと、少し答えに詰まることがあります。
- 明るい人
- 素直な人
- 真面目な人
- コミュニケーション力がある人
- やる気がある人
どれも悪くありません。
ただ、これだけでは、採用基準としてはかなり曖昧です。
なぜなら、
「いい人」は、会社によっても、仕事によっても違うからです。
営業で活躍する人と、経理で活躍する人。
現場職で活躍する人と、管理職で活躍する人。
同じ会社でも、必要なものは違います。
だから私は、採用基準を考えるとき、
「どんな人が欲しいか」より先に、「この会社で活躍している人は、実際にどんな行動をしているか」を見る。
ことが大切だと思っています。
採用基準が曖昧だと、面接は「好み」で決まりやすい
第12回でも書きましたが、面接官も人間です。
- 話しやすい
- 雰囲気がいい
- 自分と考え方が近い
- 受け答えが上手い
そういう人を、高く評価しやすい。
一人で採用している会社なら、社長の感覚だけで採ることもあります。
もちろん、長年の経験からくる感覚には価値があります。
ただ、感覚だけに頼ると、
「なぜこの人を採ったのか」
を後から説明できません。
そして、
- 採用担当者が変わる
- 社長以外も面接する
- 拠点が増える
となると、人によって採用基準が変わります。
社長は欲しい。
部長はいらない。
現場は欲しい。
そんなことが起きる。
だから、採用基準をつくるというのは、人を点数化するためではなく、
「この会社では、何を大切にして採用するのか」を言葉にすること。
だと思っています。
採用基準をつくるとき、社長に確認してほしい5つのこと
採用基準をつくるとき、いきなり評価表を作る必要はありません。
まずは、次の5つを整理してみてください。
採用基準をつくるときの5つのチェック
- 今、実際に活躍している社員は誰か
- その人は、具体的にどんな行動をしているか
- 入社時に必要なものと、入社後に育てられるものを分けているか
- 「あったらいい」と「絶対必要」を混ぜていないか
- その基準は、本当にその仕事で必要なものか
① 今、実際に活躍している社員は誰か
採用基準を考えると、理想の人物像をゼロから作ろうとすることがあります。
- 「主体性があって」
- 「コミュニケーション力が高く」
- 「責任感があって」
- 「成長意欲があって」
と条件を並べていく。
すると、ものすごい人が出来上がります。
でも、その人は本当に必要でしょうか。
私は、最初に社内を見る方がいいと思っています。
「今、御社で活躍している人は誰ですか?」
と考えてみる。
一人でもいい。
二人でもいい。
社長が、
「あいつは本当に助かっている」
と思う人を思い浮かべる。
そして、なぜその人を評価しているのかを見る。
そこには、採用基準のヒントがかなりあります。
② その人は、具体的にどんな行動をしているか
ここが一番大切です。
たとえば、
「Aさんは真面目だから活躍している」
と言う。
でも、真面目とは何でしょうか。
- 遅刻しない?
- 報告を忘れない?
- 決めた期限を守る?
- 分からないことを放置しない?
- ミスを隠さない?
同じ「真面目」でも、意味が違います。
だから、
性格を表す言葉を、実際の行動まで下げる。
必要があります。
たとえば、
「責任感がある人」
ではなく、
「問題が起きたとき、自分の担当だからと放置せず、必要な人へ報告して最後まで対応する人」
とする。
「主体性がある人」ではなく、
「自分の役割の中でまず考え、判断できない範囲は必要な情報を整理したうえで上司に相談できる人」
とする。
こうなると、面接でも確認しやすくなります。
第12回で話した、
役割・責任範囲・権限を理解して行動できるか。
という話もここにつながります。
採用基準は、抽象的な言葉を並べるより、
「実際にどんな行動をする人なのか」まで言葉にする。
その方が使える基準になります。
③ 入社時に必要なものと、入社後に育てられるものを分けているか
採用条件を聞くと、どんどん増えていくことがあります。
- 経験がある
- 資格がある
- コミュニケーション力がある
- リーダーシップがある
- PCも使える
- 若い
- 長く働いてくれる
- 素直
- 主体的
全部欲しい。
でも、そのすべてが入社時に必要でしょうか。
たとえば、
- 資格は入社後に取れる
- 技術も教えられる
- 業界知識も覚えられる
でも、
- 安全ルールを守れないのは難しい
- 報告をしないのは困る
という会社もあります。
逆に、入社初日から特定の資格がなければ仕事ができない職種もあります。
だから、採用基準を、
「入社するときに絶対必要なもの」と「入社後に育てられるもの」に分ける。
これだけでも、採用の幅はかなり変わります。
人が採れない会社ほど、知らないうちに、
「完成した人」
を採ろうとしていることがあります。
でも、完成した人を採るのが難しいなら、
育てられる会社になる。
という選択肢もあります。
④ 「あったらいい」と「絶対必要」を混ぜていないか
これは③と似ていますが、もう一段重要です。
求人を出すときに、
- 「普通自動車免許必須」
- 「経験3年以上」
- 「○○資格必須」
と書いている。
でも聞いてみると、
「まあ、なくても何とかなるんですけどね」
ということがあります。
それなら、必須ではありません。
採用基準で条件を増やすほど、応募できる人は減ります。
だから、
Must(絶対必要)と、Want(あれば望ましい)を分ける。
たとえば、
- 安全意識はMust
- 資格はWant
- 経験はWant
- 報告できることはMust
というように整理する。
これだけで、
「条件に合う人がいない」
という状況が変わることがあります。
⑤ その基準は、本当にその仕事で必要なものか
採用基準には、会社側の思い込みが入ることがあります。
- 営業だから、明るくなければいけない
- 若い人の方が覚えが早い
- 転職回数が多い人は続かない
- 学歴が高い方が仕事もできる
こうした考えです。
もちろん、仕事によっては関係する場合もあります。
でも、それは本当に、御社のその仕事で成果を出す条件でしょうか。
たとえば、営業でも、話すことより、お客様の話をよく聞ける人の方が成果を出しているかもしれない。
現場職でも、体力より、安全ルールを正確に守れることの方が重要かもしれない。
だから、採用基準をつくるときは、
「昔からそう思っている」ではなく、「実際に活躍している人を見る」。
ここに戻る。
採用は、思い込みを確認する作業でもあると思います。
「明るい人」「素直な人」「コミュニケーション力がある人」をそのまま使わない
採用基準で、よく使われる言葉があります。
- 明るい
- 素直
- コミュニケーション力
- 主体性
- 責任感
- 協調性
どれも悪い言葉ではありません。
ただ、このままだと、面接官によって意味が変わります。
たとえば、コミュニケーション力。
- 社長は「元気に話せること」だと思っている
- 部長は「報告・相談ができること」だと思っている
- 現場は「相手の話をきちんと聞けること」だと思っている
それでは、同じ言葉を使っているのに、違う人を見ています。
だから、
抽象語を使ったら、その会社ではどういう行動を指すのかまで決める。
これが大切です。
自社の「活躍している人」と「活躍できなかった人」を両方見る
採用基準をつくるとき、活躍している社員だけを見る方法があります。
これは大切です。
でも、もう一つ参考になるのが、
- 過去に残念ながら活躍できなかった人
- 早期退職した人
- 会社と合わなかった人
を見ることです。
もちろん、その人を悪く言うためではありません。
なぜ合わなかったのかを考える。
たとえば、能力が低かったのではなく、会社が細かく指示を出さない文化だった。
本人は、明確な指示がある環境を求めていた。
だから合わなかった。
ということもあります。
それなら、
「主体性がなかった」
で終わらせるより、
自社では、ある程度曖昧な状況でも、自分の役割の中で考えて動くことが求められる。
と採用基準にできる。
つまり、不採用者を増やすための基準ではなく、
入社後のミスマッチを減らすための基準。
にすることが大切です。
採用基準は「会社の価値観」ともつながっている
採用基準を考えていくと、だんだん、その会社が大切にしているものが見えてきます。
- 約束を守る
- お客様に誠実に対応する
- 安全を最優先する
- 仲間を助ける
- 自分の役割を果たす
- 変化を楽しむ
こうしたものです。
だから、採用基準をつくる仕事は、単なる人事の仕事ではありません。
「うちの会社は、どんな人と一緒に働きたい会社なのか」を考える仕事。
でもあります。
これは、評価制度にもつながります。
採用では、
「こんな人に入ってほしい」
と言っている。
でも、入社後の評価では、まったく違うことを評価している。
では、社員は混乱します。
採用。
育成。
評価。
全部つながっている方が、組織として分かりやすい。
「うちに合う人」だけで採用するのも危ない
一方で、注意したいこともあります。
「うちに合う人を採ろう」
と言いすぎると、
- 社長と似た人
- 今いる社員と似た人
- 考え方が同じ人
ばかり採ることがあります。
それも、会社によっては問題になります。
- 今の会社にない考え方
- 違う経験
- 新しい視点
を持つ人が必要なこともあります。
だから、
「会社に合う」と「全員同じ」は違う。
と思っています。
守ってほしい価値観は共通でも、
- 性格
- 経験
- 考え方
- 得意なこと
まで同じである必要はありません。
むしろ、違う人がいた方が強い組織もあります。
採用基準は、人を同じ型にはめるためのものではなく、
一緒に働くうえで、最低限どこを共有したいかを決めるもの。
くらいがいいと思います。
100点満点の採用基準を作らない
採用基準を作り始めると、細かくなりすぎることがあります。
20項目。
30項目。
全部点数化。
合計80点以上なら採用。
一見、客観的に見えます。
でも、人はそんなにきれいに数字では分けられません。
評価項目が増えるほど、面接官も使えなくなります。
私は、最初は、
本当に重要な3〜5項目くらいから始めればいい。
と思っています。
たとえば、この会社で新人を採るなら、
- 自分の役割を理解して行動できる
- 分からないことを放置せず相談できる
- 安全や約束を守れる
- 失敗したあとに次を考えられる
など。
会社によって違います。
そして、実際に採用してみる。
入社後を見てみる。
「この基準は合っていた」
「これはあまり関係なかった」
と修正する。
採用基準も、一度作ったら完成ではありません。
面接官には「採用基準」だけでなく「質問」まで渡す
採用基準を作っても、
「責任感を見る」
とだけ書いてあったら、面接官は困ります。
だから、基準と一緒に、確認する質問まで決めておくと使いやすくなります。
見たいこと
責任範囲を理解して行動できる
質問
「自分だけでは判断できない仕事を任された経験はありますか?」
深掘り
「どこまで自分で考えましたか?」
「どの段階で上司へ相談しましたか?」
「相談するとき、何を整理しましたか?」
というようにする。
すると、面接官による差が少し減ります。
第12回で書いた、
質問そのものではなく、何を確認する質問なのか。
が、ここでつながります。
採用基準をつくると、求人の伝え方も変わる
採用基準が明確になると、面接だけでなく、求人広告も変わります。
たとえば、
「主体性のある人募集」
と書くより、
「任された仕事について、まず自分で考え、判断に迷ったときは周囲に相談しながら進められる方」
と書いた方が、仕事のイメージが伝わります。
「コミュニケーション力のある人」より、
「一人で抱え込まず、分からないことを周囲へ相談できる方」
の方が分かりやすい。
つまり、採用基準を具体化すると、
会社が求める人を、応募者にも伝えやすくなる。
結果として、応募の段階からミスマッチを減らすことにもつながります。
私自身、採用では「人を見る前に、会社を見る」ことが多い
採用の相談を受けると、
「どうすればいい人を見抜けますか?」
と聞かれることがあります。
もちろん、面接方法も大切です。
でも私は、その前に、会社側の話を聞くことが多いです。
- どんな仕事なのか
- 誰が活躍しているのか
- どんな人が辞めたのか
- 上司はどういう人なのか
- 入社後どう育てるのか
- 会社は何を大切にしているのか
ここが分からなければ、
「どんな人を採ればいいか」
も決まりません。
だから、
採用基準づくりは、人を見る仕事であると同時に、自社を見る仕事でもある。
と思っています。
採用できない原因が「基準の高すぎ」だったこともある
「良い人がいない」
と言う会社で、採用条件を聞いてみると、かなり高いことがあります。
- 経験者
- 資格あり
- 30代まで
- 管理職経験あり
- 営業もできる
- 現場もできる
- 年収はこの範囲
- 転勤なし
- そして、自社に長くいてほしい
条件を全部満たす人は、かなり少ない。
でも社長からすると、一つ一つは、
「普通の条件」
だと思っています。
これを並べると、ものすごく狭くなっている。
だから、採用基準を作ることは、条件を増やすためではありません。
むしろ、
本当に必要なものだけを残すため。
でもあります。
第3回の記事で触れた、
「いい人がいない」
という話にも、ここはつながっています。
「社長を、楽にする。」採用基準をつくる
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
採用するたび、
- 社長が全部面接する
- 毎回感覚で決める
- 入社してから「やっぱり違った」となる
- そしてまた採用する
これでは、社長はずっと採用から離れられません。
一方で、
- 自社で活躍する人を整理する
- 採用基準を言葉にする
- 面接で何を確認するかを決める
- 管理職とも共有する
- 採用後の育成にもつなげる
そうすると、採用が、少しずつ社長の頭の中だけの仕事ではなくなります。
これは、評価制度と同じです。
社長の頭の中にある「良い人」を、会社で共有できる言葉に変えていく。
それが、採用基準をつくる意味だと思います。
まとめ|採用基準は「いい人」を探すためではなく、「自社で活躍する人」を考えるためにある
採用基準を考えるとき、
「どんな人が欲しいですか?」
から始めると、理想像がどんどん膨らみます。
だから、一度社内を見てみてください。
- 今、活躍しているのは誰か
- その人は、具体的に何をしているのか
- 何は入社時に必要で、何なら入社後に育てられるのか
- 「あればいい」と「絶対必要」が混ざっていないか
- その条件は、本当にその仕事で必要なのか
採用基準は、人をふるい落とすためのものではありません。
会社と応募者のミスマッチを減らすためのものです。
そして、採用基準を作るときに大切なのは、
- 「明るい」
- 「素直」
- 「主体性」
といった言葉で終わらせず、
「それは、実際にどんな行動をする人なのか」まで言葉にすること。
面接の前に、まず会社側が、
「うちで活躍する人とは、どんな人なんだろう?」
を考える。
そこが決まれば、
- 求人
- 面接
- 育成
- 評価
も、少しずつ一本につながってきます。
採用基準をつくることは、人を選ぶ基準をつくることではなく、会社が大切にするものを言葉にすること。
私は、そう考えています。
採用基準づくりでお悩みですか?
JAPANVISIONでは、中小企業の採用基準づくり・面接設計・面接官トレーニング・入社後の育成まで、採用全体を一緒に整理しています。
「いい人の基準が曖昧」「面接官によって評価が変わる」「自社で活躍する人を言葉にできない」という段階からでもご相談いただけます。
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