社長の100の悩み

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事業承継は何年前から準備すればいい?社長が最初にやること 社長の100の悩み|第9回

「まだ自分は元気だから、事業承継はもう少し先でいい」

「息子が継ぐかどうかも、まだ決まっていない」

「後継者が決まってから考えればいいのでは?」

——事業承継という言葉を聞くと、

  • 社長交代
  • 株式の移転
  • 相続
  • 税金

といったことを思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、どれも重要です。

ただ、事業承継にはもう一つ、大きな問題があります。

「その社長がいなくなった後も、会社は回るのか」

という問題です。

取引先との関係。

社員からの相談。

重要な判断。

採用。

銀行との交渉。

技術やノウハウ。

会社の歴史。

何かあれば、全部社長に聞く。

そんな会社で、ある日、代表者の名前だけ変えても、本当に事業承継はできるでしょうか。

私は、

事業承継は、社長の椅子を渡す日から始まるのではない。

社長がいなくても会社が回る状態をつくり始めた日から始まる。

と考えています。

事業承継の準備には、どのくらい時間がかかるのか

結論から言えば、

早いほどいい。

です。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、後継者を選び、経営に必要な能力を身につけてもらい、会社の持つさまざまな資産や関係を引き継いでいくには、5〜10年以上の準備期間が必要とされています。

「そんなにかかるの?」

と思うかもしれません。

でも、

  • 後継者を決める
  • 本人の意思を確認する
  • 経営を経験してもらう
  • 社員との関係をつくる
  • 取引先に認めてもらう
  • 管理職を育てる
  • 社長に集中している仕事を移す
  • 会社の数字を理解してもらう

こう考えると、5年でも決して長くありません。

だから、

「65歳になったら考えよう」

ではなく、

まだ元気で、まだ自分で経営できるうちに始める。

これが事業承継では非常に重要だと思います。

事業承継を考えるとき、社長が最初に確認したい5つのこと

事業承継というと、すぐに、

「誰に株を渡すか」

「税金はいくらかかるか」

から考えたくなります。

もちろん、それも必要です。

でも、人と組織の面から見るなら、その前に一度、次の5つを確認してみてください。

事業承継を考えるときに確認したい5つのこと

  1. 社長しか知らないことが、どれだけあるか
  2. 社長しか決められないことが、どれだけあるか
  3. 後継者候補は「社長になる経験」をしているか
  4. 後継者を支える管理職が育っているか
  5. 社長自身が、本当に任せる準備をできているか

① 社長しか知らないことが、どれだけあるか

中小企業では、社長の頭の中に大量の情報があります。

「あのお客様は、この話を先にした方がいい」

「あの銀行には、この順番で説明した方がいい」

「この仕事は、この職人に任せる」

「この時期になると、この問題が起きる」

長年会社を経営してきたからこそ分かることです。

問題は、

それが社長の頭の中にしかないこと。

です。

マニュアルを作ればすべて解決する、という話ではありません。

人間関係や判断には、文章にしにくいものもあります。

ただ、何が社長に集中しているのかを把握することはできます。

  • 取引先
  • 金融機関
  • 採用
  • 人事
  • 技術
  • 経営判断
  • 重要な情報

まず、

「自分がいなくなったら、何が分からなくなるだろう」

と考えてみる。

これだけでも、事業承継の準備は始まります。

② 社長しか決められないことが、どれだけあるか

第3回でも、

「社長がいないと会社が回らない」

という話を書きました。

事業承継では、この問題がさらに大きくなります。

社員から、

「これはどうしますか?」

管理職から、

「社長、決めてください」

取引先から、

「社長に確認します」

と、すべての判断が社長へ集まる。

今の社長が優秀であればあるほど、この状態でも会社は回ります。

だから、問題に気づきにくい。

でも、後継者に変わった瞬間、

「前の社長ならすぐ決めてくれた」

「前の社長と話したい」

「何を自分で決めていいのか分からない」

となる。

これは後継者の能力だけの問題ではありません。

会社が、前の社長一人で回るようにできていた。

という組織の問題でもあります。

だから承継前から、

  • 「これは部長が決める」
  • 「ここまでは後継者が判断する」
  • 「これは社長が決める」

と、少しずつ判断を移していく。

事業承継は、肩書きを移す前に、意思決定を移すこと。

から始めた方がいいと思います。

③ 後継者候補は「社長になる経験」をしているか

後継者候補が優秀な社員である。

営業ができる。

現場も分かる。

社員からも信頼されている。

それでも、社長になれるとは限りません。

社員として成果を出す仕事と、経営者として会社全体を決める仕事は違うからです。

  • 利益
  • 資金繰り
  • 採用
  • 人事
  • 設備投資
  • 金融機関
  • 取引先
  • トラブル

時には、誰も正解を教えてくれない中で決めなければならない。

だから、社長になる前に、

社長に近い仕事を経験してもらう。

ことが重要です。

  • 会議に参加してもらう
  • 会社の数字を見せる
  • 採用に関わってもらう
  • 管理職の人事を一緒に考える
  • 金融機関との面談に同席してもらう
  • 小さな経営判断を任せてみる
  • そして、失敗もしてもらう

社長になったその日から、突然経営者になることはできません。

役職を渡す前に、経験を渡す。

時間が必要なのは、このためでもあります。

④ 後継者を支える管理職が育っているか

事業承継というと、現社長と後継者の二人だけの話になりがちです。

でも実際には、

後継者一人だけが育っても、会社は承継できません。

社長が交代した後、

  • 営業を支える人
  • 現場をまとめる人
  • 社員を育てる人
  • 会社の数字を見る人
  • 後継者に意見を言える人

そうした人たちが必要です。

特に、

先代社長には何でも言える。
でも、新社長には何も言えない。

という組織では、承継後に問題が起きます。

後継者を育てることと、管理職を育てること。

この二つは、別の話ではありません。

事業承継とは、次の社長を一人つくることではなく、次の経営チームをつくること。

と考えた方がいい。

第4回で書いた管理職育成も、実は事業承継につながっています。

⑤ 社長自身が、本当に任せる準備をできているか

事業承継で一番難しいのは、後継者を決めることでも、株式を移すことでもなく、もしかすると、

今の社長が手を離すこと

なのかもしれません。

後継者に任せた。

でも、判断が違うと口を出す。

やり方が違うと直す。

社員が相談に来ると答えてしまう。

取引先から電話が来ると、自分で対応する。

これでは、会社の中ではずっと、

「本当の社長は先代」

のままです。

もちろん、何十年も育ててきた会社です。

自分ならこうする。

その気持ちは当然だと思います。

後継者が失敗しそうなら、なおさら口を出したくなる。

でも、第3回、第4回でも書いたように、

任せるということは、自分と同じやり方をさせることではありません。

後継者には、後継者の経営があります。

  • どこまでは助言するのか
  • どこからは任せるのか
  • いつ代表権を渡すのか
  • その後、自分はどんな立場になるのか

後継者だけでなく、現社長側にも「承継の準備」が必要です。

後継者が決まっていなくても、準備は始められる

「うちはまだ後継者が決まっていないから、何もできない」

という話も聞きます。

でも、後継者が決まっていなくてもできることは、たくさんあります。

  • 社長しか知らない仕事を減らす
  • 管理職を育てる
  • 会社の数字を整理する
  • 役割を明確にする
  • 業務を見えるようにする
  • 取引先との関係を組織で持つ
  • 社員が自分で考えて動けるようにする

これらは、息子が継いでも、社員が継いでも、第三者へ会社を譲っても、無駄にはなりません。

むしろ、

「誰が継いでも引き継ぎやすい会社」にしておくこと。

これ自体が、事業承継の準備です。

私自身、「人に依存する会社」の難しさを見たことがある

私自身、創業者の存在が非常に大きい組織に関わった経験があります。

その方の人脈。

判断。

信用。

存在そのもの。

それが会社を動かしていました。

そして、その創業者が突然いなくなった後、事業を続けていくことの難しさを目の当たりにしました。

もちろん、会社が続かない理由は一つではありません。

その出来事だけで事業承継を語るつもりもありません。

ただ、その経験から強く感じたことがあります。

会社にとって、優秀な社長がいることは大きな強みです。

でも、その社長がいないと成立しないことは、同時に大きなリスクでもある。

ということです。

社長が元気なときほど、そのリスクは見えません。

だからこそ、元気なうちに、少しずつ自分がいなくても回る会社をつくっていく。

それが大切なのだと思います。

「息子に継がせる」と決めれば、事業承継は進むのか

親族内承継では、

「長男に継がせるつもりです」

というケースがあります。

でも、

「社長がそう思っている」

ことと、

「本人が経営したいと思っている」

ことは別です。

本人には本人の人生があります。

経営者になりたいとは限りません。

また、本人が継ぎたいと思っていても、社員が、

「息子だから社長になっただけ」

と思っていることもあります。

だから、誰に継がせるかだけではなく、

  • その人が、なぜ経営するのか
  • どんな会社にしたいのか
  • 社員から信頼される経験を積んでいるか

という部分も必要になります。

血縁は、経営者としての信頼まで自動的に引き継いではくれません。

ここにも時間が必要です。

事業承継は「先代のコピー」を作ることではない

現社長が、30年間会社を経営してきた。

それを、後継者にも同じようにやってほしい。

そう思うことがあります。

でも、

  • 時代が違います
  • 社員も違います
  • お客様も違います
  • 市場も違います
  • 後継者の得意なことも違います

だから、全部を同じにする必要はありません。

大切なのは、

変えてはいけないものと、変えていいものを分けること。

会社として大切にしてきた考え方。

お客様との約束。

社員への姿勢。

技術。

信用。

こうしたものは受け継ぐ。

一方で、

  • 組織
  • 商品
  • 働き方
  • 営業方法
  • IT
  • 評価制度

変えた方がいいものは変える。

事業承継は、過去をそのまま保存することではありません。

その会社らしさを残しながら、次の時代に合わせて変えること。

でもあると思います。

社長交代の日が「事業承継の完成」ではない

代表取締役を変更した。

登記も終わった。

株式も移した。

だから、事業承継が終わった。

とは限りません。

  • 社員がまだ先代に判断を求めている
  • 取引先が先代にしか連絡しない
  • 新社長が何か決めるたび、先代が修正する
  • 管理職が新社長を支えない

これでは、書類上の社長は変わっても、会社の中は変わっていません。

むしろ、社長交代後の数年間こそ重要です。

  • 新しい社長が、自分で決める
  • 失敗する
  • 修正する
  • 社員から信頼される
  • 会社を少しずつ自分のものにしていく

そこまで含めて、事業承継だと思います。

「社長を、楽にする。」ことは、事業承継にもつながる

JAPANVISIONのMissionは、

「社長を、楽にする。」

です。

一見すると、事業承継とは別の話に見えるかもしれません。

でも私は、かなり近いと思っています。

  • 社長しか決められない
  • 社長しか知らない
  • 社長しか取引先と話せない
  • 社長しか社員を動かせない

この状態を少しずつ減らしていく。

管理職が育つ。

社員が考える。

役割が明確になる。

会社の考え方が言葉になる。

社長がいなくても、会社が回る時間が増える。

すると、今の社長も楽になります。

そして同時に、

次の人へ渡せる会社になっていく。

つまり、社長を楽にする組織づくりは、そのまま事業承継の準備にもなります。

社長が楽になれば、会社はもっと良くなる。

そして、社長が変わっても良い会社であり続けられる。

そこまでつくれたら、本当の意味で強い会社だと思います。

まとめ|事業承継は「誰に渡すか」だけではなく、「渡せる会社か」を考える

事業承継を考えると、どうしても、

「誰が次の社長になるのか」

に目が向きます。

もちろん重要です。

でも、その前に確認してみてください。

  • 社長しか知らないことが多すぎないか
  • 社長しか決められないことが多すぎないか
  • 後継者候補に経営の経験を渡しているか
  • 後継者を支える管理職が育っているか
  • 社長自身が任せる準備をしているか

後継者がまだ決まっていなくても、始められることはあります。

むしろ、

誰が継ぐか分からない今だからこそ、「誰でも引き継ぎやすい会社」にしておく。

それが大切です。

事業承継は、ある日突然行うイベントではありません。

5年。

10年。

時間をかけて、社長の頭の中にあるものを会社へ移していく。

判断を移す。

経験を渡す。

人を育てる。

組織をつくる。

そして最後に、社長という役割を渡す。

事業承継は、社長の椅子を渡す日から始まるのではない。

社長がいなくても会社が回る状態をつくり始めた日から始まる。

事業承継を考える最初の一歩は、

「誰に会社を渡そう」

よりも、

「今、自分がいなくなったら、この会社は何に困るだろう?」

と考えてみることなのかもしれません。


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「後継者はまだ決まっていない」「何から準備すればいいのか分からない」という段階からでも、人と組織の面から一緒に整理することができます。

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