「そろそろ評価制度を作った方がいいですか?」
「社員から、何を基準に評価しているのか分からないと言われた」
「頑張っている社員を、ちゃんと評価したい」
——会社が少しずつ大きくなってくると、こんな悩みが出てきます。
一方で、評価制度を作った会社から、
「作ったけれど、結局ほとんど使っていない」
「評価シートを書くことが目的になってしまった」
「むしろ社員から不満が出るようになった」
という話を聞くこともあります。
では、
中小企業に評価制度は、本当に必要なのでしょうか。
私の答えは、
すべての会社に必要なわけではない。
です。
5人の会社にも必要とは限りません。
50人だから必ず必要、というわけでもありません。
大切なのは社員数ではなく、
社長の頭の中にある「うちの会社で大切にしていること」が、社員に伝わっているかどうか。
だと思っています。
評価制度がなくても、うまくいく会社はある
社員がまだ少ない会社では、社長が社員一人ひとりをよく見ています。
- 誰が頑張っているか
- 誰が成長したか
- 誰がお客様から信頼されているか
- 誰が周囲を助けているか
社長自身が把握できる。
そして、
「最近よく頑張っているな」
「次はこの仕事を任せたい」
「ここを直せばもっと良くなる」
と直接話せる。
給与を上げる理由も、本人に説明できる。
こうした会社なら、立派な評価シートがなくても、十分に機能することがあります。
むしろ、社員が数人しかいない会社で、何十項目もの評価表を作る。
点数をつける。
面談シートを作る。
複雑な計算式で賞与を決める。
そこまでやる必要があるのか。
私は疑問です。
制度を作ることが、目的になってはいけません。
評価制度は、会社を良くするための手段だからです。
では、いつ評価制度が必要になるのか
会社が大きくなってくると、少しずつ状況が変わります。
- 社長が全員を見られなくなる
- 管理職が社員を評価するようになる
- 部署によって仕事が違ってくる
- 昇給を決めるたびに、社長が悩む
社員から、
「なぜあの人が自分より評価されるんですか?」
という声が出てくる。
そして、
社長の頭の中にしかなかった基準では、会社が回らなくなってくる。
このあたりから、評価制度を考える意味が出てきます。
つまり、
評価制度が必要になるのは、社員に点数をつけたくなったときではありません。
社長の頭の中だけでは、会社の基準が伝わらなくなったときです。
評価制度を作る前に、社長が確認したい5つのこと
「そろそろ評価制度を作ろうか」
と思ったら、いきなり評価シートを作る前に、次の5つを確認してみてください。
評価制度を作る前に確認したい5つのこと
- 「どんな社員を評価したいか」を言葉にできるか
- 上司によって、評価の基準が変わっていないか
- 昇給や賞与の理由を、社員に説明できるか
- 社員から見て「次に何を頑張ればいいか」が分かるか
- 評価した後に、きちんと話す時間をつくれるか
① 「どんな社員を評価したいか」を言葉にできるか
評価制度を作ろうとすると、最初に、
「評価項目を何にするか」
を考えたくなります。
- 責任感
- 積極性
- 協調性
- コミュニケーション力
- 目標達成力
よく見る言葉です。
もちろん、悪いわけではありません。
でも、ここで一度考えてほしいことがあります。
それは、本当に「自社が評価したい人」でしょうか。
会社によって、大切にすることは違います。
- お客様との約束を何より大切にする会社
- 安全を最優先する会社
- 新しいことへ挑戦する人を評価したい会社
- 周囲を助ける人を評価したい会社
- 技術力を高めることを重視する会社
- 数字を出すことを強く求める会社
どれが正しい、ではありません。
大切なのは、
「うちの会社では、何を大切にするのか」
が決まっていることです。
評価制度は、それを社員へ伝える一つの方法です。
② 上司によって、評価の基準が変わっていないか
社員が増えると、社長一人では全員を評価できなくなります。
そこで、課長、部長、施設長、店長、現場責任者といった管理職が評価するようになります。
ここで起こりやすいのが、
上司によって評価が違う
という問題です。
A課長は、
「結果を出した人」を高く評価する。
B課長は、
「一生懸命取り組んだ人」を評価する。
C課長は、
「自分の指示に素直な人」を評価する。
すると社員から見れば、どの上司の下にいるかによって評価が変わることになります。
もちろん、人が人を評価する以上、完全に同じにはなりません。
評価制度を作っても、主観をゼロにはできません。
でも、会社として、
「少なくとも、ここは共通して見る」
という基準を作ることはできます。
評価制度は、人の主観をなくすためのものではありません。
バラバラになりすぎないための共通言語をつくるものです。
③ 昇給や賞与の理由を、社員に説明できるか
社長の頭の中では、
「この人は今年かなり頑張った」
「この社員はまだもう少しだ」
という判断がある。
だから、給与や賞与に差をつける。
社長には理由があります。
でも、その理由が社員には見えないことがあります。
すると、
「なぜ自分はこの金額なんですか?」
「なぜあの人の方が上なんですか?」
という疑問が生まれます。
ここで、
「総合的に判断した」
だけでは、社員はなかなか納得できません。
評価制度があれば必ず納得する、という話でもありません。
でも、
- 何を見ているのか
- どこが評価されたのか
- 何がまだ足りないのか
それを説明するための基準は作れます。
納得とは、自分が高く評価されることではありません。
自分の評価が低かったとしても、
「なぜそうなったのか」が分かる。
そして、
「では次に何をすればいいか」が分かる。
そこまで説明できることの方が大切です。
④ 社員から見て「次に何を頑張ればいいか」が分かるか
私は、評価制度の大きな役割の一つは、
過去に点数をつけることではなく、次に何を頑張るかを見えるようにすること
だと思っています。
評価という言葉から、どうしても、
「今年は何点だったか」
に意識が向きます。
でも、
70点だった。
80点だった。
B評価だった。
それだけでは、人は育ちません。
大切なのは、
- 「ここはできるようになった」
- 「次はここまで任せたい」
- 「ここを伸ばせば、次の役割に進める」
という話につながること。
社員は、
「この会社にいたら、自分はこれからどうなるのか」
を見ています。
評価制度が、社員を査定するためだけの仕組みではなく、
成長の道しるべ
になれば、育成や定着にもつながってきます。
⑤ 評価した後に、きちんと話す時間をつくれるか
ここは、評価制度を作る前にかなり重要です。
立派な評価シートを作る。
上司が点数をつける。
人事が集計する。
給与を決める。
そして、本人には結果だけ伝える。
これでは、評価制度の価値はかなり小さくなります。
社員からすると、
「誰かがどこかで自分に点数をつけた」
だけです。
評価で本当に大切なのは、その後の会話です。
- 「ここは良かった」
- 「ここは期待している」
- 「本人はどう思っている?」
- 「次は何を目指そうか」
と話す。
評価制度は、社員との会話を減らすための仕組みではありません。
大切なことを話すためのきっかけをつくる仕組みです。
ですから、評価シートを書く時間はあるけれど、社員と話す時間はない。
という状態なら、制度を作る前に考え直した方がいいかもしれません。
評価制度を作れば、社員の不満はなくなるのか
残念ながら、なくなりません。
むしろ、評価制度を作ったことで不満が増えることもあります。
「この項目はどういう意味ですか?」
「AとBの違いは何ですか?」
「私はできていると思います」
「上司によって点数が違います」
制度ができると、今まで曖昧だったことが見えるようになります。
だから、不満が出ることがあります。
でも、それ自体が悪いとは限りません。
今まで言葉になっていなかったズレが、表に出てきたとも考えられます。
問題なのは、
制度を作れば社員が自動的に納得する
と思ってしまうことです。
評価制度は、社員を黙らせるための仕組みではありません。
社長、管理職、社員、それぞれが、
「会社は何を大切にしているのか」
を話すための共通言語です。
細かい評価制度ほど、良い制度なのか
これも、中小企業では注意したいところです。
- 評価項目が50個ある
- 5段階評価になっている
- 職種別に細かく分かれている
- 給与テーブルも複雑
一見すると、とても公平で、立派な制度に見えます。
でも、
- 管理職が理解できない
- 社員も理解できない
- 評価するのに毎回何時間もかかる
- 結局、形だけになる
それなら意味がありません。
私は、中小企業の評価制度は、
「できるだけ精密にする」より、「実際に使えるところまでシンプルにする」
方が大切だと思っています。
人を完全に数値化することはできません。
同じ「5点」でも、人によって意味が違うことがあります。
だから、制度ですべてを解決しようとしない。
制度で決める部分。
人が話して考える部分。
両方を残しておく。
そのくらいの方が、中小企業には合うことがあります。
評価制度は「公平」にするためのものなのか
評価制度を作る目的として、
「公平な評価をしたい」
という言葉もよく聞きます。
もちろん、恣意的な評価は避けるべきです。
好き嫌いだけで評価が決まる会社は、良くありません。
ただ、
全員が完全に同じ条件で評価されることが、本当の公平なのか
は考える必要があります。
- 営業職
- 技術職
- 事務職
- 管理職
- 新人
- ベテラン
求められていることは違います。
仕事も違います。
役割も違います。
だから、全員をまったく同じ物差しで測ることが公平とは限りません。
大切なのは、
「何を求められているかが本人に分かり、その基準に沿って評価されること」
だと思います。
評価制度は、社員をコントロールする道具ではない
評価制度を作ると、
「評価項目に入れれば、社員がその行動をするようになる」
と考えたくなることがあります。
- 挨拶を評価する
- 報告を評価する
- 整理整頓を評価する
- 数字を評価する
もちろん、評価項目に入れることで、会社が何を大切にしているのかは伝わります。
ただ、評価で人を完全に動かそうとすると、今度は、
「評価されるからやる」
になってしまうことがあります。
本当に目指したいのは、社員が会社の考え方を理解し、なぜそれが必要なのかを考え、自分で行動できる状態です。
評価制度は、そのための補助線。
主役ではありません。
制度より先に、社長が決めなければならないこと
評価制度を作るとき、最初にExcelを開く必要はありません。
評価シートを探す必要もありません。
他社の制度を真似する必要もありません。
最初に考えたいのは、
「うちの会社では、どんな人に活躍してほしいのか」
です。
- どんな仕事をしてほしいのか
- どんな考え方を大切にしてほしいのか
- 何ができるようになったら成長なのか
- 管理職には何を求めるのか
- 会社として何を絶対に大切にするのか
これが決まらないまま評価項目を作ると、どこかで見た、
「積極性」
「協調性」
「責任感」
が並ぶだけの制度になってしまいます。
評価制度づくりは、評価表を作る仕事というより、会社が大切にしているものを言葉にする仕事。
私は、そう考えています。
評価制度を作らない、という選択もある
ここまで読むと、
「やっぱり評価制度を作った方がいいのかな」
と思うかもしれません。
でも、今の会社で、
- 社長が社員一人ひとりを見られている
- 社員と定期的に話せている
- 給与を決める理由も説明できる
- 求める役割も伝わっている
- 社員も、自分が次に何を目指すか分かっている
それなら、今すぐ大きな評価制度を作らなくてもいいかもしれません。
必要になってから作ればいい。
あるいは、
- 簡単な役割表
- 面談
- 目標設定
- 給与基準
その一部だけ整える方法もあります。
制度を作ることより、今の会社に何が足りないかを見る。
これを先にした方がいいと思います。
「社長を、楽にする。」ための評価制度
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
評価の時期になるたび、
「この社員はいくら昇給させよう」
「この人とあの人はどちらを高く評価すべきか」
「何を言えば本人が納得するだろう」
と、すべて社長一人で悩む。
社員から、
「社長は何を見て評価しているんですか?」
と聞かれる。
管理職も、
「どう評価すればいいか分からない」
と言う。
この状態では、評価のたびに社長の仕事が増えていきます。
そこで、
- 会社が大切にすることを決める
- 役割を整理する
- 管理職と評価基準を共有する
- 社員にも期待を伝える
- 評価の後に、本人と話す
少しずつ、
評価を「社長の頭の中だけにあるもの」から、「会社の共通言語」に変えていく。
そうなれば、社長一人が全社員を評価し続けなくても、会社が回るようになります。
そして社員も、何を頑張ればいいのかが分かる。
管理職も、何を見て部下を育てればいいのかが分かる。
社長が楽になれば、会社はもっと良くなる。
評価制度も、そのために使うものだと思っています。
まとめ|評価制度は、人に点数をつけるためのものではない
中小企業に評価制度が必要か。
答えは、
会社によります。
社員が少なく、社長の考えが直接伝わっている会社なら、まだ必要ないかもしれません。
でも、
- 社長が全員を見られなくなった
- 上司によって評価が違う
- 給与を決める理由を説明しにくい
- 社員が何を頑張ればいいか分からない
そんな状態になってきたら、評価制度を考えるタイミングかもしれません。
そのときに大切なのは、いきなり立派な仕組みを作ることではありません。
まず、
「この会社では、何を大切にするのか」
を言葉にする。
そして、社員に伝える。
管理職と共有する。
話す。
運用する。
必要なら直す。
評価制度は、一度作ったら終わりではありません。
会社と一緒に変わっていくものです。
そして何より、
評価制度が必要になるのは、社員に点数をつけたくなったときではない。
社長の頭の中だけでは、会社の基準が伝わらなくなったときです。
そこから、評価制度を考えてみてはいかがでしょうか。
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「そもそも評価制度が必要なのか分からない」「作った制度がうまく機能していない」という段階からでも、一緒に整理することができます。
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