「若い社員が、また辞めることになった」
「結局、給料の高い会社に行ってしまう」
「中小企業では、大手の給料には勝てない」
——若手社員が退職すると、社長からこうした話を聞くことがあります。
確かに、給与は大切です。
生活があります。
同じような仕事なら、少しでも条件の良い会社で働きたいと思うのも自然なことです。
特に、他社と比べて明らかに給与が低いのであれば、
「給料は関係ない」
とは言えません。
ただ一方で、給与を上げても辞める人はいます。
給与がものすごく高いわけではなくても、長く働く人もいます。
では、若手社員が辞める理由は、本当に給料なのでしょうか。
私の答えは、
給料は大切。でも、給料だけではない。
です。
そして、もう一つ大切なのは、
「最近の若者はこうだ」と、若手社員をひとまとめにしないこと。
同じ20代でも、仕事に求めるものは一人ひとり違います。
だからこそ、「若者だから」ではなく、
その社員が、なぜこの会社で働き続ける理由を失ったのか。
そこを見る必要があります。
給料は、間違いなく大切
最初にここを曖昧にすると、話がおかしくなります。
給与は大切です。
- 生活費
- 家賃
- 住宅
- 結婚
- 子育て
- 趣味
- 将来への貯蓄
仕事は生活と切り離せません。
ですから、
「うちはやりがいがあるから、給料は多少低くてもいい」
という話ではありません。
同じ地域。
似た仕事内容。
同じくらいの経験。
そうした会社と比べて明らかに条件が悪ければ、社員が転職を考えるのは自然なことです。
会社としても、給与水準を市場と比べて確認する必要があります。
ただ、
給与だけを直せば、社員が定着するのか。
というと、話はもう少し複雑です。
若手社員が辞めるときに、社長が見直したい5つのこと
若手社員から退職の話が出ると、
「やっぱり給料か」
と考えたくなります。
でも、その前に次の5つを確認してみてください。
若手社員が辞めるときに見直したい5つのこと
- 給与は、本当に地域や職種の相場から離れていないか
- 仕事を覚えている実感を持てているか
- 上司との関係で、小さなストレスが積み重なっていないか
- 何を期待されているのか、本人に伝わっているか
- この会社で働く「この先」が見えているか
① 給与は、本当に地域や職種の相場から離れていないか
まず、ここから逃げないことです。
「最近の若者は給料ばかり気にする」
と思う前に、本当に自社の給与が市場から離れていないかを確認する。
これは必要です。
- 求人サイトを見る
- ハローワークを見る
- 近隣企業の条件を見る
- 同じ職種の求人を見る
すると、自社では当たり前だと思っていた条件が、実は他社とかなり違うこともあります。
逆に、調べてみたら自社の給与はそれほど悪くなかった、ということもあります。
大切なのは、
社長の感覚だけで「うちは十分払っている」と決めないこと。
採用でも定着でも、外からどう見えるのかを確認する必要があります。
② 仕事を覚えている実感を持てているか
若手社員は、仕事ができない状態からスタートします。
分からないことが多い。
失敗する。
先輩より遅い。
自分が役に立っているのかも分からない。
そんな時期があります。
そこで、できていないことだけを指摘され続けると、本人からすると、
「自分はこの仕事に向いていないのではないか」
と思い始めることがあります。
一方で、
- 「ここまでできるようになった」
- 「最初より随分早くなった」
- 「次はこれを任せたい」
と伝えられると、自分の成長が見える。
これは、褒めればいいという話ではありません。
できていないことは、できていないと伝える必要があります。
ただ、
できていないことだけではなく、できるようになったことも言葉にする。
これが大切です。
本人には、自分の成長が意外と見えていないことがあります。
③ 上司との関係で、小さなストレスが積み重なっていないか
退職理由として、
「給料です」
と言われることがあります。
本当に給与が大きな理由の場合もあります。
ただ、それだけではない場合もあります。
- 上司に質問しづらい
- 毎回機嫌を見ながら話しかける
- 教えてもらっていないことで怒られる
- 人によって態度が違う
- 相談しても「そんなこと自分で考えろ」と言われる
一つひとつは、それほど大きな出来事ではないかもしれません。
でも、それが毎日続けばどうでしょうか。
給料が少し上がったとしても、
「ここでは働きたくない」
と思うことがあります。
逆に言えば、離職の問題は、給与制度だけではなく、管理職の問題でもあります。
第4回で書いた管理職育成が、ここでもつながってきます。
④ 何を期待されているのか、本人に伝わっているか
会社側は、
「もっと積極的に動いてほしい」
と思っている。
でも本人は、
「勝手なことをしたら怒られるかもしれない」
と思っている。
社長は、
「そろそろ一人でできるだろう」
と思っている。
本人は、
「まだ何を基準に判断すればいいのか分からない」
と思っている。
こうしたズレは、よく起こります。
本人のやる気の問題に見えて、実は、
会社が何を期待しているのか伝わっていない。
ということがあります。
だから、
「もっと頑張って」
ではなく、
- 「今はここまでできればいい」
- 「次はこれができるようになってほしい」
- 「半年後にはここまで任せたい」
と具体的に伝える。
期待を言葉にすることは、若手を育てることにも、定着にもつながります。
⑤ この会社で働く「この先」が見えているか
若手社員にとって、今の給与だけではなく、
この先どうなるのか
も重要です。
- 3年後、どんな仕事をしているのか
- できる仕事が増えたら、給与はどうなるのか
- どんな人が評価されるのか
- 管理職になる道があるのか
- 技術を極める道があるのか
- 会社はこれからどこへ向かうのか
すべてを制度にする必要はありません。
将来を完全に約束することもできません。
でも、何も見えなければ、社員は自分で未来を想像するしかありません。
そして、
「この会社にいても、5年後も今と同じなのではないか」
と思えば、他の会社を見始めることもあります。
だから、社長が会社の未来を話すこと。
そして、その未来の中で、社員にどうなってほしいのかを話すこと。
これは、給与表をつくることとは別の意味で大切です。
「給料が理由です」は、本当の理由なのか
退職するとき、社員が本当の理由をすべて話してくれるとは限りません。
これは当然だと思います。
もう辞める会社に、上司への不満、社長への不満、会社への不満を、全部細かく説明する必要があるとは本人も思わないでしょう。
だから、
「給与の条件が良いところへ転職します」
という説明が、嘘ではなくても、理由のすべてではないことがあります。
給与。
人間関係。
仕事内容。
成長。
評価。
将来への不安。
いくつかが重なった最後に、他社から今より高い給料を提示された。
そして転職を決めた。
この場合、最後のきっかけは給与です。
でも、もし今の会社で、
- 仕事が楽しい
- 成長している
- 上司にも相談できる
- 自分の未来も見える
という状態だったら、同じ判断をしたでしょうか。
答えは、人によって違います。
だからこそ、
退職理由を一つだけで説明しようとしない。
これが大切です。
給料を上げても解決しない会社がある
離職が続いて、
「給料を上げよう」
と考える。
これは一つの対策です。
必要なら、もちろんやるべきです。
でも、その会社で、
- 上司が毎日のように怒鳴っている
- 仕事のできる人にばかり負担が集中する
- 評価の基準が分からない
- 社長の気分で言うことが変わる
- 若手に誰も仕事を教えない
こんな状態のまま給与だけを上げても、根本的な問題は残ります。
一時的に辞めにくくなる人はいるかもしれません。
でも、
「ここで働きたい会社」になったわけではありません。
給与は大切。
でも給与は、会社のあらゆる問題を消してくれる万能薬ではありません。
だからといって、「お金よりやりがい」でもない
ここも間違えたくないところです。
「若い人はやりがいを求めている」
「成長できれば給与は関係ない」
という話にしてしまうのも違うと思います。
人には生活があります。
社員に、やりがい、成長、理念、仲間を求めるのであれば、会社も働きに見合う条件を考えなければなりません。
良い会社づくりを、低い給与を正当化するために使わない。
これは重要です。
給与も見る。
働く環境も見る。
人間関係も見る。
成長も見る。
将来も見る。
どれか一つではなく、全体で、
「この会社で働き続けたい」
と思える状態をつくる。
それが定着だと思います。
若手は、本当に昔より我慢できなくなったのか
「昔は多少つらくても、みんな我慢した」
「今の若い社員はすぐ辞める」
という話を聞くことがあります。
そう感じる場面もあるでしょう。
ただ、私は、
「最近の若者」という言葉だけで片づけない方がいい
と思っています。
- 転職しやすい環境になった
- 他社の求人情報を簡単に見られるようになった
- SNSなどで、他の会社の働き方も見えるようになった
つまり、以前なら会社の中しか見えなかった人にも、外の選択肢が見えやすくなっています。
会社に不満があるとき、
「ここで我慢するしかない」
ではなく、
「他にも会社はある」
と考えやすい。
だから会社としても、昔と同じ、
「辞めたければ辞めればいい」
だけでは、人材を維持しにくくなっています。
ただし、何でも社員に合わせればいいわけでもありません。
会社には会社の考え方があります。
仕事である以上、求めることもあります。
守ってほしいルールもあります。
大切なのは、
社員に迎合することではなく、会社が大切にするものを明確にしたうえで、社員にも選んでもらうこと。
だと思います。
「辞めない理由」は、一つではない
ここまで給与以外の話をしてきました。
でも、結局一番大切なのは、
人が会社に残る理由も、一つではない
ということです。
- 給料が納得できる
- 仕事が面白い
- 成長できる
- 上司を信頼できる
- 仲間がいる
- 会社の考え方に共感できる
- 休みが取りやすい
- 地域が好き
- お客様から感謝される
- 自分の仕事に誇りを持てる
人によって違います。
すべてを完璧にすることはできません。
でも、働き続ける理由が一つしかない会社より、
「ここにいる理由」がいくつもある会社の方が強い。
私はそう思っています。
「社長を、楽にする。」ためにも、給与だけで人を見ない
JAPANVISIONのMissionは、
「社長を、楽にする。」
です。
若手が辞める。
また採用する。
また教育する。
ようやく仕事を覚えたころに、また辞める。
この繰り返しが続けば、社長も管理職も、ずっと人の問題に追われます。
そこで、
「給料を上げればいい」
だけで終わらせず、
- なぜ辞めるのか
- なぜ働き続けてくれている人がいるのか
両方を見る。
- 条件を整える
- 管理職を育てる
- 成長を伝える
- 会社の未来を話す
- 社員との関係をつくる
そうやって、働き続ける理由を一つずつ増やしていく。
その結果、人が育ち、定着し、社長が毎年同じ採用と教育を繰り返さなくて済む会社になっていく。
社長が楽になれば、会社はもっと良くなる。
若手の定着も、そのための大切な組織づくりの一つです。
まとめ|給料は辞める理由になる。でも、給料だけが「残る理由」ではない
若手社員が辞めたとき、
「やっぱり給料か」
と思うことがあります。
実際、本当に給与が原因なら、会社として見直さなければなりません。
でも、給与だけで結論を出す前に、一度確認してみてください。
- 給与は市場と大きく離れていないか
- 本人は成長を感じられているか
- 上司との関係に問題はないか
- 会社から何を期待されているか分かっているか
- この会社で働く未来が見えているか
その中に、変えられることがあるかもしれません。
そして、
若手だから。
最近の人だから。
という言葉だけで片づけない。
一人ひとり違う人として見る。
給料は、辞める理由になる。
でも、給料だけが、この会社に残る理由ではありません。
社員が、
「ここで働き続けたい」
と思える理由を、一つでも多くつくっていく。
それが、若手が定着する会社をつくる第一歩だと思います。
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「若手がなかなか定着しない」「給料以外に何を見直せばいいのか分からない」という段階からでも、一緒に整理することができます。
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